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映画監督・鈴木やすさんが、思い出の映画作品を、鑑賞当時の思い出を絡めてゆったり紹介します。 サンクス
映画監督・鈴木やすさんが、思い出の映画作品を、鑑賞当時の思い出を絡めてゆったり紹介します。
最近のハリウッド映画はご存知のようにアメリカン・コミック(以下:アメコミ)を原作にしたスーパーヒーローもので溢れている。中には映画として素晴らしい作品もある。クリストファー・ノーランのバットマン三部作は次のシークエンスを心待ちにしていたほどワクワクさせてくれたし、昨年公開されたマット・リーヴス監督のバットマンも素晴らしかった。特にマイケル・ジアッキーノの音楽にハマってしまい、久しぶりに映画のサウンドトラックをダウンロードした。しかし、アメコミのスーパーヒーロー映画の予告編を映画館で見るたびに「またかよ…」と食傷気味であることも正直なところだ。
今回の映画も原作はアメコミなのだがスーパーヒーローは一人も登場しない。同名の原作はアンダーグラウンド・コミックの世界で1976年から2008年まで続きカルト的な人気があった。
ラストベルトと呼ばれる重工業が衰退してしまった街の一つ、オハイオ州クリーブランドに生まれ住み、病院の事務員として働く作者で主人公のハーベイ・ピーカー。この冴えない街の冴えない男の冴えない仕事での冴えない日常のフラストレーションやシニシズムを描いたストーリーが米国の若者の共感を呼んだ。
映画はドキュメンタリーを多く手掛けていた監督夫婦コンビの初めてのフィクション作品らしく、ハーベイ・ピーカーを演じているポール・ジアマッティと作者のハーベイ・ピーカー本人が入れ替わったり、実写とコミック、実写とアニメーションが行ったり来たりと冴えない男の日常や人生を観客にまったく飽きさせない。
1960年代、中古ジャズレコード収集が趣味の若いハーベイは近所のガレージセールで同じ趣味を持つコミック・アーティスト、ロバート・クラムと出会って意気投合。しかしロバートのコミックはアンダーグラウンドで人気に火がつき彼はサンフランシスコに移ってしまう。友人ロバートの成功でさらにフラストレーションを募らせるハーベイは久しぶりにオハイオに戻ったロバートに自身が書いたコミックの原作を見せる。ファンタジー・アドベンチャーが主流の当時のアメコミだが、ハーベイの原作は米国の実情をシビアにシニカルな視点で描いていてロバートはこの原作を気に入り、絵が全く描けないハーベイに替わってその原作をイラストしてみると引き受けた。こうしてハーベイが自主出版した『American Splendor』はカルト的な人気を少しずつ獲得していくが、ハーベイは病院の冴えない仕事を辞められるほどの収入にはならない。そんな時、ハーベイの元に熱烈なファンだというデラウェア州に住む女性から手紙が届く。
本当の米国
妻がイリノイ州の出身で毎年二回は里帰りで訪れる。車で一日半かけていくのでミッドウエストを横断する形になる。ミュージカルの全国ツアーではこのミッドウエストがドル箱と言っていいほど客が入った。特に寒くて閉塞的な冬の季節はどっと観客が押し寄せた。寒くて決して食べものも美味しいとは言えないミッドウエストがしばらく好きになれなかったが、毎年訪れるうちに少しずつ好きになっていった。米国をニューヨークやロサンゼルスの視点からしか見ていないと決してわからない米国の現実の姿がそこにはある。スーパーモデルやスーパーリッチではない現実の米国の経済を下支えしている働き者で温かく実直なこの国の人々の姿がそこにはあるからだ。
今週の1本
American Splendor
(邦題:アメリカン・スプレンダー)
公開:2003年
監督:シャリ・スプリンガー・バーマン、ロバート・プルチーニ
音楽:マーク・スオッゾ
出演:ポール・ジアマッティ、ホープ・デイヴィス
配信:Max、Amazonプライム、YouTube 他
オハイオ州クリーブランドで病院の事務員として働くハーベイは自分の日常を題材にコミックの原作を書き始める。
(予告はこちらから)
鈴木やす
映画監督、俳優。1991年来米。ダンサーとして活動後、「ニューヨーク・ジャパン・シネフェスト」設立。短編映画「Radius Squared Times Heart」(2009年)で、マンハッタン映画祭の最優秀コメディー短編賞を受賞。短編映画「The Apologizers」(19年)は、クイーンズ国際映画祭の最優秀短編脚本賞を受賞。俳優としての出演作に、ドラマ「Daredevil」(15〜18年)、「The Blacklist」(13年〜)、映画「プッチーニ・フォー・ビギナーズ」(08年)など。現在は初の長編監督作品「The Apologizers」に向けて準備中。facebook.com/theapologizers
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