レトロ作品 まったりレビュー

今週の1本 トラック野郎男一匹桃次郎

映画監督・鈴木やすさんが、思い出の映画作品を、鑑賞当時の思い出を絡めてゆったり紹介します。


ネットフリックスで「深夜食堂」にハマってしまっている。小林薫や不破万作などの懐かしい俳優の活躍が見られるのが嬉しい。なんといってもあの昭和の雰囲気がたまらなく子供時代の郷愁をかき立てる。以前にも書いたが実家が名古屋の喫茶店だったので昼間からヤクザやパチプロや出勤前のホステスなどのカタギじゃない人たちが入り浸って賑やかでうるさかった。子供だった僕はそんな人間味のある昭和の大人たちに可愛がってもらいながら育った。1991年、平成3年にニューヨークに渡ったきりなのでそんな昭和の日本しか知らない。昭和という時代は、ガチャガチャとうるさく、人はおせっかいで、プライバシーもなくて、人に迷惑をかけまくる大人たちがいっぱいいて、でもそれを最後は許してしまう温かさがあって、全くしょうがない時代だった。でもそんな昭和の日本が大好きだった。昭和の時代のガチャガチャしたうるささ、アナーキーな俗っぽさ、当時のお笑い芸人たちのしょうもないギャグがいっぱいに詰まった映画がトラック野郎シリーズだ。1975年から80年まで続いたシリーズ十作品の中から、僕の大好きな鹿児島が舞台で27歳という若さでこの世を去った夏目雅子が初々しいマドンナを演じているこのシリーズ第六作目を今回は選んだ。ストーリーを細かく説明してもあまり意味はない。シリーズものなのでストーリー展開は毎回同じ。喧嘩っぱやく人情に厚い長距離トラック運転手の一番星こと星桃次郎と相棒で恐妻家で子だくさんのやもめのジョナサンの二人がわけあって大喧嘩に巻き込まれ、ライバルのトラック運転手(この回は若山富三郎が演じる「子連れ狼」)と競い合い、桃次郎は美しいマドンナに出会い一目惚れ、マドンナの登場シーンでは毎回バックにキラキラと星が輝くのでわかりやすい。桃次郎のマドンナとの恋は毎回必ず成就しないが、いつもマドンナの人生を桃次郎は後押しする。そして最後はとても無理と思われる時間で積み荷や人を運ぶために警察に追われながらも、仲間のトラック野郎たちの支援を受けながら目的地まで暴走する。

ドル箱シリーズ

最近は日本映画でもシリーズものは作られなくなった。昭和の日本映画界ではこのシリーズものが映画会社の重要な収益源、文字通りドル箱だった。観客は毎回同じストーリー展開を「水戸黄門」を見て安心するように映画館に足を運んで楽しんだ。寅さんシリーズと同じく、お盆とお正月休み向けに毎年2本ずつ制作されるので、作り方も制作スケジュールも東映映画らしく荒っぽかったと聞く。僕はトラック野郎のプラモデルに夢中になり、新しいデコトラの一番星号が発売されるたびに勉強もそっちのけでパーツをひとつずつ色着けし、接着剤で組み立てるのに没頭した。子供時代に経験したその細かい手作業が今日の僕の制作意欲の原点になっているかもしれない。当時の日本歌謡界のゴールデンコンビ、ダウンタウン・ブギウギバンドの宇崎竜童と阿木燿子が作り、菅原文太と愛川欽也が歌う主題歌「一番星ブルース」は日本のブルースの名曲だと思う。その文太さんも欽也さんも、渥美清さんも高倉健さんも昭和の映画スターたちはみんな逝ってしまった。僕たちを心の底から楽しませてくれた文太さんはこの映画の主人公のように大きく空に輝く一番星になった。文太さんありがとう。🙏

 

 

 

 

今週の1本

トラック野郎 男一匹桃次郎

公開: 1977年
監督: 鈴木則文
音楽: 津島利章
出演: 菅原文太、愛川欽也、夏目雅子
配信: なし(DVDを購入可能)

喧嘩っぱやく人情に厚い長距離トラック運転手の一番星桃次郎と相棒で恐妻家で子だくさんのやもめのジョナサンが道中で繰り広げる大騒動。

 

 

 

 

鈴木やす

映画監督、俳優。
1991年来米。ダンサーとして活動後、「ニューヨーク・ジャパン・シネフェスト」設立。
短編映画「Radius Squared Times Heart」(2009年)で、マンハッタン映画祭の最優秀コメディー短編賞を受賞。
短編映画「The Apologizers」(19年)は、クイーンズ国際映画祭の最優秀短編脚本賞を受賞。
俳優としての出演作に、ドラマ「Daredevil」(15〜18年)、「The Blacklist」(13年〜)、映画「プッチーニ・フォー・ビギナーズ」(08年)など。
現在は初の長編監督作品「The Apologizers」に向けて準備中。
facebook.com/theapologizers

 

 

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