大学進学を考える 日本と米国、二つの国で学び暮らす選択
コロナ禍を経験して社会は大きく変わった。日本社会も例外ではない。未来を見据えて、グローバルな大学進学の選択肢の一つとして、米国と日本で自分たちのルーツを生かす学びについて掘り下げる。
映画監督・鈴木やすさんが、思い出の映画作品を、鑑賞当時の思い出を絡めてゆったり紹介します。
アメリカは学校が夏休みに入った。もう学校を卒業して4半世紀以上経つのにいまだに7月21日が来るとワクワクしてしまう。待ち遠しい夏休みがようやくやって来たあの感じが心に焼き付いているのだろう。
思い返すに夏休みの宿題を初日に一気に終わらせて休みを気楽に遊ぶタイプの子どもと、ダラダラと最後まで宿題を残してしまうタイプの子どもがいたように思う。僕は後者のタイプで、8月も終わりに入り9月が近づいてくるといつも「まだ宿題がたくさん残っとる」と憂鬱な気持ちになった。9月1日の新学期の登校日の朝に、「そういえばまだ工作の宿題があったかな?」と爆弾発言をして両親を慌てさせるような、ボ~ッとした子どもだったのです。
夏休みの映画の思い出といえば「東映まんがまつり」とか「東宝チャンピオンまつり」というのがあった。ゴジラなんかの怪獣映画を短く編集したメイン映画と、もうすでに放送された仮面ライダーや天才バカボンなんかのテレビ番組を数本集めたプログラムだった。今の若い読者は「なんでもう放送されたテレビのコンテンツをわざわざ入場料を払って映画館に見に行くんだ」と思ったかもしれないが、ビデオデッキもインターネットもYouTubeもなかった僕の子ども時代には一回放送を見たら同じ番組を見る機会がいつやってくるかわからなかったので、もう一度人気番組が見られるのはとてもうれしかった。
そう思えば僕の世代の子どもたちはものすごい集中力で一度しか見られないテレビ番組を見ていたのだ。今の子どもたちはゲームやフェイスタイムをしながら画面の片隅でコンテンツを2倍速で見て物語の情報だけを脳の片隅に詰め込んでいる。僕の映画作品を他のことをしながら画面の片隅で倍速で見られるぐらいなら見てもらわないほうがいい。制作する側は誰でもそう思うだろう。
悲しくすがすがしい涙
夏休みの子ども向けのファンタジー映画を紹介しようと大好きなこの映画を紹介したいと思い立ったが、久しぶりにこの映画を見て「あかんがや、子どもに見せれえへんて」と名古屋弁でつぶやいてしまった。暴力の描写がリアルなのだ。「大人の不思議な国のアリス」と言われるゆえんだ。僕も小学生の娘と一緒に見ようとレンタルしたけども、子どもに見せるのを諦めた。しかし、13歳以下の子どもを持つ読者は子どもにこっそり隠れてでも見てほしい作品だ。
1944年のスペイン、激しい内戦の末に独裁政治を治めたフランコ率いる国民戦線軍の将校、ビダルは各地でくすぶっていた人民戦線軍のゲリラ兵の掃討作戦のため山奥の作戦本部に身を寄せていた。ビダルと再婚し妊娠中のカルメンと10歳になるカルメンの娘オフェリアは危険な体にも関わらず山奥への移住を強いられた。オフェリアは不思議な妖精に導かれて作戦本部の近くに古くから横たわる石造りの迷宮に導かれ、ファウンという人間とヤギの姿をした不思議な生き物に出会う。ファウンはオフェリアが地底の王国から地上に憧れて記憶を失った王妃モアナの魂の生まれ変わりだと告げる。そして姫として王国に戻りたければ3つの課題を乗り越えろと伝える。
「シェイプ・オブ・ウォーター」でアカデミー賞を受賞したデル・トロ監督の作品の中で僕が一番好きな作品です。不思議な迷宮にオフェリアを導く妖精たちの世界が暴力に満ちた現実の世界との対比でより悲しく美しく輝いて描かれている。輪廻(りんね)転生を素直に受け入れられる僕たち日本人を悲しくもすがすがしい涙に導いてくれます。絶対に倍速で見るんじゃねえぞ。
今週の1本
Pan’s Labyrinth
(邦題: パンズ・ラビリンス)
公開: 2006年
監督: ロバート・エプスタイン
音楽: ハビエル・ナバレテ
出演: イバナ・バケーロ、セルジ・ロペス、ダグ・ジョーンズ
配信: Hulu、Amazon Prime他
1944年のスペイン、独裁政治を強いる国民戦線軍と激しい抵抗を繰り返すゲリラ軍との闘争の中、10歳のオフェリアは不思議な妖精に導かれ迷宮に迷い込む。
鈴木やす
映画監督、俳優。
1991年来米。ダンサーとして活動後、「ニューヨーク・ジャパン・シネフェスト」設立。
短編映画「Radius Squared Times Heart」(2009年)で、マンハッタン映画祭の最優秀コメディー短編賞を受賞。
短編映画「The Apologizers」(19年)は、クイーンズ国際映画祭の最優秀短編脚本賞を受賞。
俳優としての出演作に、ドラマ「Daredevil」(15〜18年)、「The Blacklist」(13年〜)、映画「プッチーニ・フォー・ビギナーズ」(08年)など。
現在は初の長編監督作品「The Apologizers」に向けて準備中。
facebook.com/theapolo gizers
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