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編集部員がアートを巡る連載エッセイです。編集部員A
■外国語学部を卒業し、写真専門学校へ。某新聞社系出版社の写真部を経て、フリーランスのカメラマン兼ライターに。現在、弊紙編集部で書いて撮って編集を担当。趣味は映画と犬の散歩。食べること、飲むことが大好き。
「千利休が器に美の世界を吹き込んだように、草履にも日用品としての役割だけでなく、鑑賞物としての視点があっても良いのではないか」。
履物を通して新しいアイデアを提案するのは、明治初期創業の老舗履物店である「祇園ない藤」。現在、同ブランドがギャラリー兼レストランの「ザ・ギャラリー」で海外初の展覧会を開催している。
同展では、昨年他界された、おかみの内藤鶴子さんが愛用した草履をそれらにまつわる物語と共に展示。結婚式で履かれた華やかなものや、柿渋の塗られた酒袋を再利用して作られたもの、布団の生地を使用し、刺し子を施したものなどが並べられ、履物から一人の女性の人生を垣間見ることができる。
その他にも、一点ものの草履や、コンテンポラリーコレクションにあたるサンダル「Kodori」「JOJO」などを展示し販売も行う。同シリーズは現代のライフスタイルになじみのあるサンダルを、伝統的な草履の形に再構築したもの。リラックスすることを目的とした従来のサンダルは、長時間履くと疲れてしまうが、指股に力を入れ、重心を下げて体を使うデザインの「Kappo」はインナーマッスルを鍛え、日常生活を送りながら体をケアすることができるそう。
長年受け継がれてきた伝統を内から変革させるのは難しい。しかし、5代目店主の内藤誠治さんは「知恵と経験があるからこそ、伝統的な裏付けをもって新しいものを生み出すことができる」と話す。「ない藤」が表現する、新しいアイデアや哲学に触れてみては。
The Gallery
17 W. 20th St.
TEL: 917-454-8095
info@odogallery.nyc
odogallery.nyc
【会期】〜5月28日(土)