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編集部員がアートを巡る連載エッセイです。編集部員A
■外国語学部を卒業し、写真専門学校へ。某新聞社系出版社の写真部を経て、フリーランスのカメラマン兼ライターに。現在、弊紙編集部で書いて撮って編集を担当。趣味は映画と犬の散歩。食べること、飲むことが大好き。
ロシアのウクライナ侵攻が続く中、双方のプロパガンダ合戦が横行している。ロシア側は国営テレビを通じ「空爆はでっち上げだ」「ウクライナで生物兵器が開発されている」などと報じ、ウクライナでは大統領をはじめ、国民一人一人がSNSで情報を拡散している。現場の声を瞬時に届けられるが、全ての投稿が信頼できるかについては、その特性を踏まえると慎重になるべきだろう。
ポスターを専門に扱う美術館、ポスターハウスでは1920年代に制作されたロシアアバンギャルドの映画ポスターが展示されている。ロシアアバンギャルドとは1910年代から30年代にかけてロシア帝国・ソ連で起こった前衛運動のことで、ロシア革命以降はプロパガンダアートとして利用された。当時のソ連における識字率は低く、プロパガンダ映画が数多く制作され、宣伝用のポスターはとても重要な役割を担ったという。
ポスターを見ると赤や黒を中心に原色が多用され、視覚に強く訴えかけてくるものばかりだ。神妙な面持ちの女性が極端に大きく描かれたり、真上や真横、異なる角度から切り取られた男女が同じ絵に共存したり、画面が斜線でバッサリと切られていたり。どれも現代に通用するかっこよさがあるのだ。これらが描かれてから約100年が経った今、隣り合う国が形を変えてプロパガンダ合戦を繰り広げている。ロシアによる侵攻が許されないのは言わずもがなだが、あらゆるメディアから流れる情報を精査せず、全てをうのみにしないように注意しなければならない。
ポスターハウス
119 W. 23rd St. (bet. 6th & 7th Aves.)
TEL: 917-722-2439
posterhouse.org
【会期】8月21日(日)まで