街がクリスマスイルミネーションで彩られ、ホリデーシーズンを実感するこの頃。本号ではニューヨークで美味しく食べられるクリスマスケーキにフォーカス。日本人ならクリスマスの食卓にケーキは欠かせないはず !
映画監督・鈴木やすさんが、思い出の映画作品を、鑑賞当時の思い出を絡めてゆったり紹介します。 コロナの
映画監督・鈴木やすさんが、思い出の映画作品を、鑑賞当時の思い出を絡めてゆったり紹介します。
日本に住む友人と話をしていて、彼女からこんな話題が出た。家庭を持つ女性同士の集まりで、自分たちがいかに旦那さまとラブラブかの話題に花が咲いていたそうだ。フリーランスの彼女は、「でもね、旦那以外の男もさあ、働いている男はかっこよく見える時があるのよねえ。時々、ちょい惚れしちゃうことない?」と正直に口に出したらその場が一瞬凍りついたようになったそうだ。「それからさあ、あんなにお誘いがあったのにピタッと来なくなったのよね。村八分にされちゃったわよ。私に旦那を取られるとでも思ってんのかしらね。まあ、あの人たちと合わないなあって思ってたから別にいいけどさ」。なんだか日本に限らず最近の社会の同調圧力を感じさせる話だ。
最近話題になった、夫婦別姓を認めない日本の最高裁判所の決定にしても、システムや法律や政府の目的は人間の幸せや暮らしやすさの向上であって、時代や価値観が変わっていくのに合わせてマイナーチェンジを繰り返すべきもので、人間は不便で不合理なシステムや法律、時の政府を継続させるための手段に使われるべきではない。
人間には性的趣向やジェンダーや家族の在り方に多様性があって当然のように、愛の形もいろいろと人と違ってしかるべきではないか。もちろん不倫を奨励しているわけではないけれども、結婚したから他の人に惚れちゃいけないと言われて止められるものでもないでしょう。問題になるまで好きになってしまっても、それはその夫婦の間の問題であって、記者会見を開いて公に謝罪しなければいけないようなものとは僕には思えない。
フランスのマクロン大統領は15歳の時に25歳年上のフランス語教師で、同級生の母親でもあったブリジット夫人と恋に落ち、周囲の猛反対を押し切って大恋愛の末に、彼女も離婚して一緒になった。ブリジット夫人と前夫との間にできた、マクロン少年と同級生だった長女ローランスも次女のティファニーも、大統領選挙ではマクロン氏を熱心に支持したそうだ。美しい話だ。う〜ん、どうしてもポルノ女優と浮気して口止め料で封じ込めたが結局、後でバラされた大統領の話と比較してしまう。
愛の形
バレンタインデーが近いのでこの映画を紹介したい。1968年パリ、アメリカからの交換留学生マシューは映画狂で毛沢東思想に傾倒する双子の姉弟、イザベラとテオと出会いひかれ合う。姉弟は旅行に出掛ける両親を説得してパリの中心街でマシューとの3人の生活を始める。裸で同じベッドに眠る姉弟に驚くマシューだが、次第にイザベラにひかれていき、お互いに性への目覚めを経験し、3人のパリでの生活は危なっかしい三角関係を迎える。そしてパリは伝統的で古いしきたりからの脱却と市民生活の向上、そしてドゴール大統領の辞任を求めて大勢の若者や市民を巻き込みながら五月革命へと突入していく。
左翼思想に映画への思い、性の目覚めにパリ五月革命、この学生映画のような題材をイタリアの大ベテラン監督、ベルナルド・ベルトルッチが胸に刺さる強烈な感性で描いた。「ラストエンペラー」で監督賞、作品賞を含めたノミネート9部門全てのアカデミー賞を獲得した大監督が2018年に亡くなるまでの晩年は、「シェルタリングスカイ」、「魅せられて」などでさまざまな愛の形を描き続けた。歳を重ねて円熟するほどに監督の感性は若返りみずみずしくなりつつも、血を見るような生々しい辛辣(しんらつ)さが薄れることは決してなかった。監督ありがとう。
今週の1本
The Dreamers
(邦題: ドリーマーズ)
公開: 2003年
監督: ベルナルド・ベルトルッチ
音楽: ハビブ・シェハーデ・ハンナ
出演: マイケル・ピット、エバ・グリーン、ルイ・ガレル
配信: なし(Blu-ray&DVDがオンラインで発売中)
1968年のパリ。
アメリカ人の留学生マシューは、毛沢東思想に傾倒する双子の姉弟、イザベルとテオに出会い急速に親密な仲になっていく……。
鈴木やす
映画監督、俳優。1991年来米。
ダンサーとして活動後、「ニューヨーク・ジャパン・シネフェスト」設立。
短編映画「Radius Squared Times Heart」(2009年)で、マンハッタン映画祭の最優秀コメディー短編賞を受賞。
短編映画「The Apologizers」(19年)は、クイーンズ国際映画祭の最優秀短編脚本賞を受賞。
俳優としての出演作に、ドラマ「Daredevil」(15〜18年)、「The Blacklist」(13年〜)、映画「プッチーニ・フォー・ビギナーズ」(08年)など。
現在は初の長編監督作品「The Apologizers」に向けて準備中。
facebook.com/theapologizers
あなたの思い出の
映画はなんですか?
レビューの感想や、紹介してほしい作品などの情報をお待ちしています。
editor@nyjapion.comまでお寄せください。
映画監督・鈴木やすさんが、思い出の映画作品を、鑑賞当時の思い出を絡めてゆったり紹介します。 コロナの
【映画】 8日(金)公開 Poor Things 【出演者】エマ・ストーン/マーク・ラファロ 【ジ
12月1日~12月14日、2週間の運勢をチェックしよう! 詳細は画像をクリックして拡大! 12月1日
街がクリスマスイルミネーションで彩られ、ホリデーシーズンを実感するこの頃。本号ではニューヨークで美味しく食べられるクリスマスケーキにフォーカス。日本人ならクリスマスの食卓にケーキは欠かせないはず !
ホリデーシーズンの定番といえば、『くるみ割り人形』。なぜ全米で、この作品が定着しているのか? 経済効果、出演者インタビューを交え、さまざまな角度から掘り下げて紹介していく。
寒くて長いニューヨークの冬は温かいスープと麺でも啜りたくなる季節だ。しかし寒い時の外食は避けたいもの。そんな時は自宅で手頃に食べられて身体を温められるインスタントラーメンはいかが? 今回は知られざるインスタント麺の誕生秘話からアレンジレシピまで紹介。
この秋ニューヨークの最大の話題といえば、先月オープンした「ウェグマンズ」のアスタープレース店をおいて他にない。人気全米一の栄誉に輝く地元密着型スーパーだが、今までネイビーヤードに店舗があっただけで、その実態がよく知られていなかった。ところが、ここにきて売り場総面積8万7000平方フィートのフルサイズ店上陸である。抜群に鮮度のよい青果類と最高級の精肉。デリカも充実。しかも店内には日本の「魚屋さん」もあるとか。徹底解剖してみる。