国内旅行で人気再燃 ハワイを満喫しよう ─ハワイ最新情報・前編─
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映画監督・鈴木やすさんが、思い出の映画作品を、鑑賞当時の思い出を絡めてゆったり紹介します。
毎年クリスマスが近づいてくると、クリスマスをテーマにした映画が次々と公開される。だいたい家族で一緒に見るために作られたファミリーコメディーや、心温まる感動物語が多く「素晴らしき哉、人生!」や「三十四丁目の奇蹟」などの名作もある。
そして最近クリスマスの時期に、ケーブルチャンネルでよく放映されるのが、今回のアクション映画の傑作「ダイ・ハード」だ。公開時は夏のアクションブロックバスターとして7月に公開されていて、もちろん制作側もクリスマス映画として作ったわけではない。しかし、舞台がロサンゼルスのクリスマスイブ、音楽にもベートーベンの交響曲第九番や「レット・イット・スノー」が効果的に使われているので、最近ではすっかりクリスマス映画として定着した感がある。また「大晦日の午後9時57分10秒きっかりにこの映画を見始めると、クライマックスの一番いいシーンでちょうど年が明ける」などの情報も出回っていて、いい映画を作るとファンが勝手に面白い鑑賞の仕方を見つけてくれるので笑える。
以前にも書いたが1980年代も後半になると、僕はシュワルツェネッガーやスタローンの筋肉モリモリアクション映画に食傷気味になっていた。しかし、そんなまたかと思うアクション映画に一番食傷気味になっていたのは、演じていた映画スター本人たちで、この頃になるとシュワちゃんもロッキーも、コメディー映画に主演してイメージを変えたがっていた。なのでこの映画への主演のオファーも、そんなアクションスターたちに次々と断られた。クリント・イーストウッド、リチャード・ギア、ハリソン・フォード、ポール・ニューマン、アル・パチーノ。この映画の主演を断った映画スターをリストすると、大スター名鑑が出来上がる。
この当時のアメリカは、テレビ俳優と映画俳優がはっきりと分かれていて、テレビ番組「こちらブルームーン探偵社」で活躍していたブルース・ウィリスにこの役が回ってきたのは、ウィリス本人にとっても奇跡みたいなことだったろう。このキャスティングが当たった。
筋肉モリモリで一人で軍隊に向かって勝ち進む超人的なアクションキャラクターではなく、主人公のニューヨークの警官、ジョン・マクレーンは、奥さんには出て行かれ、仕事でも出世できず、筋肉モリモリでもない。そんなダメ男が運の悪いことにテロリストが人質を取っているビル内に閉じ込められ、そこでテロリストと闘いながら肉体の痛みにあえぎ、死への恐怖を告白したり、時には涙ぐんだりしながらも決して諦めずに立ち向かっていく。そんなブルーカラーの普通の男が一晩で経験する奇跡的なヒロイズム。そのキャラクターに、本人もニュージャージーの労働者の環境で育ったウィリスがぴったりだったのだ。
ダイ・ハードを基準に
この当時、僕は名古屋のテレビ業界でレポーターとして働き始めていた。バラエティー番組の放送作家やディレクターの間では、こんな会話が飛び交っていたのを記憶している。「昨日見た映画面白かったよ。君も見た方がいいよ」「どれぐらい面白かったの?」「うん、『ダイ・ハード』が10として8・5ぐらいかな」。映画の面白さの新たな基準になるぐらい、この映画は娯楽映画として完成されているのだ。またかとうんざりするオミクロン株の嫌な話題をいっときでも忘れるためにも、今年のクリスマスは家族で一緒に手に汗握りながら「ダイ・ハード」を見てはいかがでしょう。メリークリスマス。
今週の1本
Die Hard
(邦題: ダイ・ハード)
公開: 1988年
監督: ジョン・マクティアナン
音楽: マイケル・ケイメン
出演: ブルース・ウィリス、アラン・リックマン、ボニー・べデリア
配信: Amazon Prime、Apple TV他
クリスマスのロサンゼルスで、立てこもり事件が勃発。現場のビルに偶然居合わせたNY市警のジョン・マクレーンが、武装テロリストにたった一人で立ち向かう。
鈴木やす
映画監督、俳優。1991年来米。
ダンサーとして活動後、「ニューヨーク・ジャパン・シネフェスト」設立。
短編映画「Radius Squared Times Heart」(2009年)で、マンハッタン映画祭の最優秀コメディー短編賞を受賞。
短編映画「The Apologizers」(19年)は、クイーンズ国際映画祭の最優秀短編脚本賞を受賞。
俳優としての出演作に、ドラマ「Daredevil」(15〜18年)、「The Blacklist」(13年〜)、映画「プッチーニ・フォー・ビギナーズ」(08年)など。
現在は初の長編監督作品「The Apologizers」に向けて準備中。
facebook.com/theapologizers
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