アートを見に行こう

In America: A Lexicon of Fashion ②

編集部員がアートを巡る連載エッセイです。

編集部員A

■外国語学部を卒業し、写真専門学校へ。某新聞社系出版社の写真部を経て、フリーランスのカメラマン兼ライターに。現在、弊紙編集部で書いて撮って編集を担当。趣味は映画と犬の散歩。食べること、飲むことが大好き。


アメリカのファッションと聞いて何を思い出すだろう。筆者がニューヨークに来てまず感じたのが、過ごしやすさを重視し、ラフな格好で歩いている人が多いということだった。日本のファッションはストリート系、コンサバ系、カジュアル系などと分類されるが、多様性を包括するこの国ではそんな概念は存在しない。

また流行が明確な日本と異なり、広過ぎる国土では、流行りとされる特定のスタイルが根付かないらしい。日本人にとってファッションは、人にどう見られるかを気にする「みんなと一緒」を良しとする社会で、自分らしさを表現する一つの手段となっている。

ファッション展「In America: A Lexicon of American Fashion」では、アメリカのファッションを、感情を表現する一つの手段だと提示する。会場に華美な装飾はなく、1940年代から現代の幅広い作品が、シンプルな白い壁で区切られて展示される。「Nostalgia」「Belonging」「Delight」といった感情を表す単語ごとに12セクションに分けられ、約100の洋服それぞれにも単語とその意味が添えられる。

BLM、パンデミック、アジアンヘイトなど、感情の荒波にもまれたこの時代ならではのテーマであることは間違いない。辞典のように並べられた千差万別の洋服の如く、多様性を象徴するこの国の感情もさまざまだ。来年5月に始まる同展の続編「In America: An Anthology of Fashion」では、人種やジェンダーなどの課題について、ファッションの歴史と共に検証するという。理解を深めるためにも、第二部に期待したい。

 

メトロポリタン美術館 

1000 5th Ave.
TEL: 212-535-7710
metmuseum.org
【会期】9月18日(土)〜2022年9月5日(月)

 

関連記事

NYジャピオン 最新号

Vol. 1244

オーェックしよ

コロナ禍で飲食店の入れ替わりが激しかったニューヨーク。パン屋においても新店が続々とオープンしている最近、こだわりのサワードウ生地のパンや個性的なクロワッサン、日本スタイルのサンドイッチなどが話題だ。今号では、2022年から今年にかけてオープンした注目のベーカリーを一挙紹介。

Vol. 1243

お引越し

新年度スタートの今頃から初夏にかけては帰国や転勤、子供の独立などさまざまな引越しが街中で繰り広げられる。一方で、米国での引越しには、遅延、破損などトラブルがつきもの、とも言われる。話題の米系業者への独占取材をはじめ、安心して引越しするための「すぐに役立つ」アドバイスや心得をまとめた。