アートを見に行こう

Photoville ②

編集部員がアートを巡る連載エッセイです。編集部員A

■外国語学部を卒業し、写真専門学校へ。某新聞社系出版社の写真部を経て、フリーランスのカメラマン兼ライターに。現在、弊紙編集部で書いて撮って編集を担当。趣味は映画と犬の散歩。食べること、飲むことが大好き。


写真と対峙した瞬間、思わず涙があふれた。こういう時は変な人だと思われないように、いったんその場を離れることにしている。この日は目の前がイーストリバーでよかった。

 

デビン・アレンの写真展「Beautiful Ghetto」は「ゲットー」というレッテルを貼られた地元、ボルチモアの街を写している。レンズ越しに向けられる真っ直ぐな眼差し、街の人々への情愛。写真に収めないといけないという切実さに、心動かされたのかもしれない。

ボルチモアでは2015年に大規模な暴動が起こった。ナイフ所持を理由に逮捕されたアフリカ系アメリカ人男性のフレディー・グレイさんが、勾留中に警官から暴行を受け、1週間後に死亡した。この事件を巡り抗議デモや暴動が勃発。現場にこの作者もいたという。

背景を知らなくても、心を動かすことができるのが写真だ。文字なんかよりもはるかに雄弁で、頭より先に、感情に訴える力強さを持つ。こんなことを考えさせられる展示を見たのは久しぶりかもしれない。インスタばかり見てちゃダメだなあ。日々精進しようと、改めて。

 

フォトビル

20 Jay St. #207, Brooklyn, NY 11201
ブルックリン・ブリッジ・パークをメイン会場に、ニューヨーク全5地区、75カ所で開催。
TEL: 718-801-8099/photoville.com
【会期】〜12月1日(水)
【入場料】無料

 

 

               

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