イースターと最初のニューヨーク市の日本人クリスチャン

3月31日(日)はイースターの日、つまりイエス・キリストの復活を記念する日のこと。キリスト教徒でなくてもエッグハントは子供たちが大好きな春の行事。日本人に馴染みのない祝日だと思う人もいるでしょう。しかし、イースターはニューヨークにおける日本人クリスチャンの歴史を通して深い関わりがあるのです。今回、特別に日米合同教会牧師のスタンレー・ウェインさんに解説していただきました。※“合同”の意味は、「アメリカ改革派教会」と「メソディスト教会」の2つに正式に所属しているため命名したものです。

※エホバの証人、統一教会、モルモン教、及びその他一切のカルト教団とは関係ありません。


ニューヨークにおける日本人クリスチャンの最初の足跡は、1890年代に遡ります。1890年の米国国勢調査によれば、米国本土には2039人の日本人がいました。今からおよそ130年も前に、岡島金弥氏という人物がオレゴン州から徒歩でニューヨーク州に渡り、後に日系人社会に貢献する高見豊彦氏と出会い、ニューヨーク日本人クリスチャンの礎を築きました。 岡島氏はオレゴン州で、イエスが人々の罪のために死んで3日後に死者の中から復活したというメッセージをイースター礼拝で聞き、最初はその信じがたい内容のために疑いましたが、後に信じてクリスチャンになりました。それからほどなくして、彼はニューヨークのブルックリン海軍工廠の日本人水夫たちのことをニュースで知ることになります。当時、ニューヨーク在住の多くの日本人が海軍工廠で料理人、給仕、台所労働者として働いていました。彼らは海上にいないときは酔っ払ったり、けんかをしたりして荒んだ暮らしを送っていました。

1964年のイースターの時に撮影された写真

ニューヨーク初の日本クリスチャン青年会が誕生

岡島氏は彼らが苦しんでいると感じ、自分がイエスによって救われたように彼らにもイエスについて伝えようとニューヨークに向かうことを決意しました。しかし、岡島氏にはニューヨークに行くためのお金がありませんでした。当時は馬車で荷物が運ばれる時代であり、鉄道は存在していたものの大変高額でした。そんな中、岡島氏は次のような夢を見ました。「お金はないが、足の強さはどうだ?」という夢です。この夢により、岡島氏は1893年に東方に向かって歩き始めました。長く険しい旅の末、ついにニューヨークに到着しました。彼は日本人学生センターを見つけ、すぐに海軍工廠の米戦艦で日本人男性たちにイエスについて話し始めました。ここで岡島は前述の米軍艦バーモント号で働く高見青年と面会しました。高見青年は岡島氏の熱心な姿を見て、中国人宣教に携わっていたキャンベル女史を岡島氏に紹介しました。その後、キャンベル女史とブルックリン洗礼教会のディクソン牧師の援助のもと、ニューヨークで初めての日本クリスチャン青年会を設立し、サンズストリートで伝道をしました。これがニューヨークの日本人メソジスト教会の基礎となりました。

日本人クリスチャンの活動の原点と日米合同教会の統合

時間の経過とともにマンハッタン区からは幾つかの日本人教会や団体が生まれましたが、この日米教会に統合されました。第2次世界大戦が始まる1940年頃にはニューヨークでは3つの日本人教会が存在していました。その頃、米国では日系人や永住権者を保持する日本人に対する差別が激化し、西海岸の日本人は収容所に収容され、エリス島には4000人もの日本人が収容されました。このような厳しい状況の中でも日本人牧師が(後に日米合同教会の牧師となる)エリス島の日本人を訪問し、永住者を雇用、資金、カウンセリングを施すなどして支援しました。戦後に西海岸の収容所が廃止されると、多くの日本人がニューヨークに移住したためそれに伴って日本人クリスチャンの規模も拡大しました。

2024年の現在、マンハッタン区の日米合同教会は今も存続しています。すべては岡島氏の1893年のイースターのメッセージで得た信仰から始まりました。イースターのメッセージは、イエス・キリストがこの世に生まれ、人間と同じように成長し、その後十字架にかけられて死に、3日目に死者の中から蘇り、弟子たちの前に現れ、500人以上の弟子たちに新しい命を伝えましたというものです。イエスはあらゆる人々にイエスの教えを伝えるようにと言い残し、世の終わりまでいつもともに居てくださると約束しました。岡島氏はこのメッセージを世界の果てまでもたらした数多くのクリスチャンの1人であり、日本からオレゴン、そしてニューヨークへと日本人クリスチャンの活動の原点を作り出しました。

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