ニューヨーク仕事人名鑑

ニューヨーク仕事人名鑑 #54 北原真紀 さん

困難に立ち向かい、今を全力で生きる日本人ビジネスパーソン。名刺交換しただけでは見えてこない、彼らの「仕事の流儀」を取材します。


コンテンポラリーダンサーとして活躍する北原真紀さんは、環境問題に取り組む非営利ダンスカンパニー「タイム・ラプス・ダンス」に所属する側、ニューヨークの街にダンサーやコメディアンなどの登場を交えて観光するアトラクション型バス「ザ・ライド」のダンサー役を務めるなどしている。また、バレエスクールでの指導や障がいのある人へのダンス指導など、その活躍は多岐にわたる。

「私」という人間を反映できるダンス

幼少期よりクラシックバレエを習っていた北原さんがコンテンポラリーダンスに出会ったのは大学を卒業してからだという。「バレエとしての経験や実績があっても、初めてコンテンポラリーダンサーとして踊ることになった時、コンセプトを身体で『表現する』という新しいやり方がすごく難しく感じました。一番最初の舞台で、振付の先生から『正座して玉ねぎを齧れるかな?』と言われて一瞬頭の中で『えっ?』となりましたが(笑)、新しいことに挑戦したかったので、とにかく必死で齧って口から吐き捨てるを繰り返しました。齧るという行為を人に見せる、そして齧ることから次の踊りに繋げていくという流れは斬新かつ新鮮でした。その舞台がきっかけで、自分という人間について、そして表現者として自己探求が始まりました」

超絶技巧が求められるバレエの世界とは違い、コンセプトと表現者次第で、または観客次第でいろいろな解釈ができるコンテンポラリーダンス。「例えば、ティッシュを一枚をつまむ動作一つにしても、コーヒーを一口飲んで苦いと感じる表情一つにしても、私の全ての動作や感情を『表現する』ことができると気づいてから、毎日の生活が全て愛おしくなりました。新しい仕事のオファーがくると、コンセプトの解釈とともに自分の記憶や感性を呼び覚まして、それを身体で表現して皆さんにお届けしているので、自分は一種の『媒体』なんです」と北原さんは笑顔で語った。

ボーダレスな表現者

ダンスを社会の中の一つの要素として捉え、その果たすべき役割を理解することも大切だと考える北原さんは、表現するだけでなく指導する側として、ニューヨークでバレエの指導や障がいのある人たちへダンスの指導を行っている。

「ニューヨークは気軽に芸術に触れられる機会がある場所だと思うので、その恩恵を生かし、ダンスを通して多くの人に貢献できたらいいなと思っています。身体を使って表現するということに、国境や言葉、性別は関係ありません。皆さんに自分の身体の偉大さを感じてほしいです。指導する時は、私も皆さんからいろいろなことを学びます」

他にも北原さんは、ニューヨーク発祥の筋膜を癒していく「メルトメソッド」というセルフケア・テクニックのインストラクターとしても活動してる。身体が本来もつ治癒能力を最大限に生かせるケアで、これまで自身が身体を痛めた時には、テーピングやマッサージで乗り切っていたそうだが今では全く使用しなくなったという。高度な芸術と極限の動き、そしてセルフケアの追求、と身体表現の新たな可能性を探る北原さんの旅はまだ始まったばかりなのかもしれない。

 

北原真紀さん

コンテンポラリーダンサー、バレエダンサー、メルトメソッド公認インストラクター

来米年: 2016年
出身地: 福島県

好きなもの・こと: ビール、歩くこと、五感を使うこと

特技: ダンス

近畿大学(生物理工学部・生物工学科)卒業。幼少期よりバレエを学ぶ。コンテンポラリーダンスでは文化庁芸術祭新人賞候補にノミネートされる。ニューヨークのギブニー・ダンスで1年間振付を専攻後、アーティストビザを取得し、現在はダンサー、バレエの指導や障がいのある人へのダンス指導に励む。

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