ハートに刺さるニュース解説

米国の自由とは

言論の自由が危機に

トランプ再選するか

十数年続いたこのコラムは、これが最終回となる。10年間で、米国はかなり不安な方向に舵を切った。きっかけは2017年、トランプ氏が大統領になったことであるのは間違いない。彼とその支持者らは、差別を助長し、自由の範囲を狭めてきた。2024年大統領選に出馬する彼が、再び当選したら米国は、ニューヨークは、どうなるのだろう。自由にものが言えない米国になっていくのではないか。

イ・パ戦争関連のデモを警戒する警官(筆者撮影)

トランプ発言は過激化

敵を「人間のクズ」と

激戦州で集会を続けるトランプ氏の発言は、大統領時代に比べてさらに過激で、独裁的で、悪辣になっている。バイデン大統領を含め、ライバルを「害虫、人間のクズ」と呼ぶ。

政策面でも歯止めが効かない状態だ。

ニューヨーク・タイムズによると、海外でしか展開できない米軍隊を国内で使おうとしている。リベラ

ル派が多い民主党州知事の州に「秩序を取り戻すため」軍隊を仕向ける可能性があるという。

ニューヨーク市は、リベラルの牙城である。トランプ氏が「レイプ犯罪者」呼ばわりする移民数万人を市の予算で、就労許可が出るまでホテルやシェルターに保護している。「移民狩り」に燃えるトランプ氏がニューヨーク市に軍隊を差し向けた際、市は、市民はどう迎え討つのだろうか。州兵や市民が対抗するのだろうか。想像するに恐ろしい。

司法権独立も危機

誰でも捜査できる

最も恐れているのは、トランプ氏のライバルを司法省や捜査当局に捜査をさせるという考えだ。法にのっとって悪きを裁く「司法」「捜査」の独立がなくなり、憎き政敵は訴追対象になる。こうなれば、まさに魔女狩り、そして言論封殺である。

同時に今は、イスラエルとハマスの軍事衝突が続き、米国で親イスラエル派と親パレスチナ派の対立が表面化している。これも米国らしくない「言論封殺」ではないかと思う。

女優スーザン・サランドンが11月21日、長年の所属事務所ユナイテッド・タレント・エージェンシー( U T A )から解雇された。先立つ17日、ニューヨーク市内のパレスチナ支持者による反戦集会で彼女はこう発言した。

 「今多くのユダヤ人がユダヤ人であることを恐れている。この国でイスラム教徒であることがどのようなものかを味わい、暴力にさらされている」

これに対し、SNSで「反ユダヤ主義的」だと猛批判が起きる。その直後の解雇だった。UTAは理由を明らかにしていない。

また、昨年公開された映画『スクリーム』に出演していたメリッサ・バレラは同シリーズの最新作『スクリーム7』から外された。米メディアによると、彼女はインスタグラムのストーリーにこう書き込んだ。「私はここ2週間ほどパレスチナ側のビデオや情報を積極的に探し、アカウントをフォローしている。なぜか? 西側メディアは反対側しか映さないから。なぜそうするのかは自分で推理してほしい。ガザは今強制収容所のような扱いを受けている」

映画を制作しているスタジオは、「反ユダヤ主義や憎悪の扇動はいかなる形であれ認めない」と声明を出した。

大学キャンパスも規制

言論自由が調査対象

一方、米教育省は大学キャンパスでの集会などに規制を強めている。当局は、ハーバード大やコロンビア大を含む大学、K12スクール(幼稚園から高校)での「反ユダヤ主義」「イスラム差別」「反アラブ主義」に関連するイベントを複数調査すると発表。教育省は、調査を踏まえて「提言」をまとめる。捜査に協力しなかった学校は、連邦からの予算を取り上げるという(CNNによる)。

反戦や人権運動の旗振りとなってきたニューヨークや大学キャンパスが、「言論封殺」の対象になっている。

言論の自由、集会の自由が当たり前だった米国が、そうではなくなる兆しがある。自由主義の旗手である米国ではあってはならない。イスラエルとハマスの戦争をきっかけに、トランプ氏が再選されれば、さらに政治的発言の自由も弾圧されていく可能性がある。米国が、そうならないことを願いたい。

長い間のご愛読、ありがとうございました。

津山恵子

ジャーナリスト。「アエラ」などにニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOなどにインタビュー。近書に「現代アメリカ政治とメディア」(東洋経済新報社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

 

 

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