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1年の中で2月は
イスラエルと、パレスチナ自治区を実効支配するイスラム組織「ハマス」の軍事衝突が1カ月以上続いている。ハマスは10月7日、イスラエルを奇襲し、200人以上の民間人を人質にした。この直後、米バイデン政権を始め各国が、イスラエルへの全面的支援を打ち出した。しかし、1カ月後の今、イスラエルの報復攻撃でガザ地区では死者が1万人以上に上り、人道支援を求める世論が急速に強まっている。
ハマスによる10月7日の攻撃が、非人道的な「残虐行為」だったのは間違いない。このため、イスラエルはガザ地区を空爆し、欧米諸国が即座にイスラエルへの支援を表明した。しかし、気をつけなくてはならないのは、ガザ地区のパレスチナ人、イコール、ハマスではない。ハマスは軍事組織である。なぜ、ハマスではない民間人が犠牲となっているのか。しかも、死者の半数が子供だ。
歴史的憎悪が生んだ
イ・パ市民の憎しみ
ハマスが奇襲した背景も、把握するべきだ。今回の衝突は、いきなり起きたことではない。50年以上ものイスラエルによるパレスチナ自治区の封鎖、差別、抑圧が今回の奇襲を呼んだ。イスラエル人がパレスチナ人を蛇蝎の如く嫌い、自治区に閉じ込めてきた。物資や水、エネルギーの調達もイスラエルのなすがままで、現在は完全に絶たれている。
このため、パレスチナ人の父母は生きている子供の手足に名前を書いて、空爆で命を落とした際に識別できるようにしている。病院の発電機には限界があり、新生児集中治療室(NICU)の生命維持装置がいつまで保つのかは、危機的な状況だ。
私は、イスラエル人の重鎮が国連で「パレスチナ人は、ノーボディーだ」と発言したのを聞いたことがある。この憎悪を受けて、パレスチナ人もイスラエル人を徹底的に憎んでいる。軍事組織であるハマスは、こうしたパレスチナ人の憎悪を利用して支持を得るため、イスラエルを攻撃し続けてきた。
ガザの死者の半数は子供
イスラエルの空爆で
しかし、11月6日現在、イスラエル軍による攻撃でガザ地区でこれまでに子供4104人を含む少なくとも1万22人が死亡した(ロイター通信による)。国連の独立専門家グループは、ガザ地区の人々が「ジェノサイド(大量虐殺)の重大なリスク」にさらされているとして、人道的な停戦を訴える声明を発表した。第2次世界大戦中のユダヤ人虐殺(ホロコースト)などに使われる「ジェノサイド」という言葉で、その非人道性を訴えている。
一方、ハマスが放つミサイルのほとんどは、イスラエルの防空システム「アイアンドーム」から発射される地対空ミサイルが撃ち落としている。まるでイスラエル上空を鉄のドームで覆っているかのように、ミサイルは昼間の花火のように上空で煙として消える。イスラエル側の死亡者がガザ地区よりかなり少ない理由だ。
つまり、イスラエルとパレスチナの「体力」は明白で、今後もどちらの民間人がより多く命を落とすのかも自明だ。ところが、軍事衝突が起きた当初、欧米諸国はこぞってイスラエルを熱狂的と思えるほど支持した。これは、軍事大国ロシアがウクライナに侵攻した際、「国際法違反」「残虐行為」と一斉にロシアを非難したのと異なる。欧米諸国がしていることは「ダブルスタンダード」ではないか。ニューヨーク・タイムズもこれを指摘している。
米国内をも分断
大統領選に影響
ニューヨーカーは、「反ハマス」「反イスラエル」双方が立ち上がり、連日のデモで対立し逮捕者が出ている。
グテーレス国連事務総長はこう断じた。
「我々がガザで目にしているのは明白な国際人道法違反であり、私は深く懸念している。いかなる当事者であっても、国際人道法の上に立つものはいない」
ダブルスタンダードと言われても仕方がないイスラエル支援をいち早く打ち出したバイデン大統領の支持率は、低下した。2024年の大統領選挙で、対立するトランプ前大統領が有利とのデータも浮上している。遠く中東で起きている軍事衝突は、米国の将来をも変貌させかねない。
津山恵子
ジャーナリスト。「アエラ」などにニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOなどにインタビュー。近書に「現代アメリカ政治とメディア」(東洋経済新報社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。
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