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全米脚本家組合(WGA、組合員1万1500人)が今年5月から、米映画俳優組合(SAG─AFTRA、16万人)は7月からストライキを始めた。両組合が同時にストを展開するのは、1963年以来だ。WGAは9月27日、148日ぶりにストを終結したが、SAGは連日のピケを続けている。60年ぶりの共同ストの焦点は、映画・ドラマの制作者側が活用している人工知能(AI)による「AI俳優」や「AI脚本家」などだ。
ネットフリックス社屋前で抗議するアジア系の俳優ら(筆者撮影)
自分のコピーが出演
撮影に憶えなく
WGAとSAGのピケを最初に取材したのは8月9日だ。WGAのストが100日になり、ニューヨーク・マンハッタン区のネットフリックス社屋前は、1000人以上の脚本家と俳優らが集結。「企業の拝金主義は許せない」などと組合特有のシュプレヒコールをあげた。
「出てもいないCMに、あなたが映っている、と友人が連絡をくれた」と、俳優のジージー・カサノバさん。
「私の顔はちょっと調整してあって、服も変えているけど、間違いなく私だった。でも撮影した記憶がない」
「さらに怖いのは、誰が私をスキャンして、そのCMに入れたのかも分からない。でも私に報酬があるべきでしょう」
彼女はまた、1シーンだけ撮影した映画の完成作を見たら、4、5シーンに出演していたこともあるという。
特に、俳優のほとんどを占めるエキストラやスタントは、AIの打撃をすでに受け始めている。通行人やレストラン客、群衆のほか、主演俳優に代わって危険な演技をするスタントが次々にコンピューター・グラフィックス(CG)やAIで作成され始めているためだ。
病欠の際に使うと
実際は使い放題
エキストラ歴が長いジョゼフ・アダム氏はこう証言する。
「僕の場合は2年前、ネットフリックスなどに知らないうちにスキャンされていたのが最近になって分かった。病欠の際に使うと言われたけど、実際には同意なしにAIの僕が使われていて、つまり、僕たちはもうAIに取って代わられてしまっている」
幼児2人と妻を連れて連日ピケに来るアダム氏は、俳優以外の仕事を探している。
同じくエキストラのサマンサ・エヴェレットさんは、SAG組合員の7割以上はエキストラという。
「例えばカフェのシーンで主演俳優の周りで、声を出さずに会話をしているかのように演技するなど、エキストラはスターらが演技しやすい環境を作っている。エキストラが演技していない人工的に作られた背景は、素人が見ても『おかしい』と感じるはず」と、エキストラの重要性を強調する。現在は、ハリウッドなどで撮影する3つの映画製作が延期になったままだという。
AI俳優はすでに定着
公開映画に多数
しかし、状況は悪化している。「ジョン・ウィック コンセクエンス」を見た。シリーズ4作目で、伝説の殺し屋が2時間に渡り、無数の刺客を殺しまくる。刺客が全て人間のスタントだったとは到底思えない。SAGがストに入る前に制作された映画がこの状況で、俳優らがいかにAI俳優を脅威に思うか、痛感させられる作品だった。
両組合が要求する焦点にはもちろん、賃上げだ。しかし、生成AIなどを使った映画・テレビ番組制作に対する権利の保護と報酬は、極めて今日的な問題だ。俳優組合側と製作会社側の交渉はこう着状態で、関係者は「来年までストが続く」と悲観的だ。
2回目にピケ取材したのは、9月28日だ。アジア系と非白人の俳優が集結し、彼らの採用を訴えた。従来に比べて改善したとはいえ、白人に比べると採用が少なく、主役級になるとさらに機会がなくなる。それだけにAI俳優への危機感は、さらに増す。
ハリウッドのベテラン女優サマンサ・マティスさんは、製作会社側の全米映画テレビ製作者連盟(AMPTP)と交渉する委員会の一員だ。AMPTPは、AI俳優を使用する場合、日当の半分を支払う提案をしており、再使用料についてはふれていない。しかし、組合側は「AI俳優」使用の際、①俳優の同意を得る②作品契約ごとではなく、使用回数で「再使用料」を支払う─ことを要求しているという。再使用料の金額は、この2点で合意した上で検討するという。
津山恵子
ジャーナリスト。「アエラ」などにニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOなどにインタビュー。近書に「現代アメリカ政治とメディア」(東洋経済新報社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。
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今週からプロリーグの新シーズンが始まったアイスホッケー。スピーディーな試合展開とフィジカルテンションが最大の魅力だが、TVで観るのと実戦をナマで観るのがこれほど違うスポーツもない。今年こそ、アリーナに足を運んでアイスホッケーを観戦してみよう。
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