プロスポーツから見る経営学

第83回 メッシ、圧巻の活躍が止まらない

世界が注目する新・メッシ時代到来

リオネル・メッシ(以下、メッシ)のインテル・マイアミCF(以下、インテル・マイアミ)への移籍は、サッカー界における歴史的な出来事として大きな波紋を広げました。前回のコラムで紹介したような背後にある経済的側面が今回の移籍をより興味深いものにしています。

過去4年間で勝率が41%を僅かに超えるインテル・マイアミでしたが、バルセロナ時代のメッシの同僚達と再会する中、彼の活躍は「メッシマニア」とも呼べる状態を生んでいます。サッカー界の伝説、メッシが新たな挑戦の場として選んだ米国。その決断は、米国サッカー界にとって、新しい「メッシ時代」の幕開けと言えるでしょう。

インテル・マイアミの共同オーナー、デビッド・ベッカムは「メッシをインテル・マイアミに、そしてMLS、さらには米国に迎えることは、米国のサッカーの未来を明るく照らしています。彼の存在は、インテル・マイアミだけでなく、全世界の目を米国に向けさせています」と語りました。彼自身もMLSのLAギャラクシーに2007年に移籍をしてきたとき、同様にMLSの価値を高めた貢献者の一人であるだけに、今回のメッシ獲得には人一倍熱心だったと言われています。

記録的な数字を生み続けるメッシ

メッシがインテル・マイアミへの移籍を発表すると、グーグル検索におけるクラブの人気は1200%以上も増加。また、彼の関連グッズの検索が、翌日にはeBayで75%以上も増えました。初戦のチケット価格は、二次市場では1000%以上も高騰。彼の移籍発表後、クラブのグッズ販売は、2023年の前半を上回る勢いで増え続け、インテル・マイアミは最も売れているMLSクラブとなりました。メッシのジャージの初日の販売は、他のスポーツ選手の移籍時の24時間の売上を上回り、記録を更新しました。

MLSのオフィシャルオンラインストアでは、メッシのユニフォームの配送が10月まで遅延する可能性があると警告しています。オンライン小売業者Soccer.comも、1日で半年分の「Messi10」とプリントされたインテル・マイアミのレプリカが売れたとCNNに伝えています。

インテル・マイアミの共同オーナー、ホルヘ・マス氏は、メッシの加入により、クラブの収入と価値が2倍になることを期待しています。実際、彼のデビューまでに、AppleTVのMLSシーズンパスの加入者が約70万人から約100万人に増加しました。

巨額の投資

デビッド・ベッカムは、過去数年でMLSの大きな変化を振り返りながら、メッシが「完璧な状況」に来たと述べました。

彼はすでにサッカー界で数々の栄誉を手にしてきましたが、新たな成功と利益を追求するフロンティアがまだあるようです。しかし、ここで重要なのは、メッシの移籍が単なるスポーツの出来事で終わらないところです。経済的背景にも目を向けると、大手投資会社アレス・マネージメントが約75億円を追加でインテル・マイアミに提供したことを発表しました。参入の背後には、メッシの存在が大きく影響しているのは明らかです。

アレス・マネージメントは、チームの日常運営には直接関与せず、新施設やスタジアムの建設に関するアドバイスとして参加しています。そして、これまでのインテル・マイアミへの投資総額は225億円にのぼります。この巨額の投資は、新たなスタジアムの建設やメッシとの契約、そしてクラブのブランディング強化のために使用されるとされています。あくまでも投資なので、クラブの価値を高めることを目的としている点が重要です。

アレス・マネージメントは最近、スポーツやエンターテインメント関連のビジネスに特化した資金プールを設立。彼らはスペインのアトレティコ・マドリードや、イングランドのクリスタルパレスなど、他のクラブにも投資を行っており、スポーツ業界での影響力を増しています。

一方、メッシのインテル・マイアミでのパフォーマンスは、すでに彼の高い実力を証明しています。4試合で7ゴールという成績は、彼が新天地でも変わらないプレーを見せてくれることを示唆しています。

最終的に、メッシの移籍はサッカーのフィールドだけでなく、ビジネス界にも大きな変化をもたらしており、その影響はこれからも続くことでしょう。彼の存在は、スポーツとビジネスの融合を体現していると言えるでしょう。

 

 

中村武彦

青山学院大学法学部卒業後、NECに 入社。 マサチューセッツ州立大学アマースト校スポーツマネジメント修士課程修了。メジャーリーグサッカー(MLS)、FCバルセロナなどの国際部を経て、スペインISDE法科学院修了。FIFAマッチエージェント資格取得。2015年にBLUE UNITED CORPORATIONを設立。東京大学社会戦略工学部共同研究員や、青山学院大学地球社会共生学部非常勤講師なども務める。

               

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