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トランプ前大統領の2024年大統領選挙の運動は、1カ月前の起訴後、活発化している。支持率も大幅に上昇し、裁判で被告となっているにもかかわらず、「トランプ劇場」は好調だ。米史上初めての異常事態で、社会不安につながっている。
裁判で有罪は困難?
起訴後に運動活発化
「(起訴について)驚きはないに等しい。(ニューヨーク・マンハッタン地区検察の)ブラッグ検事の法的論拠が、思ったよりも弱いという驚愕を除いては」
トランプ氏起訴後の4月4日、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)社説は、こう始まる。報道機関なのに「トランプを擁護する味方なのか?」と話題になった。
しかし、WSJは、トランプ氏を有罪にするための裁判がいかに厳しいものかを示している。
トランプ氏は今年3月30日、34もの「重罪」に問われて起訴された。同氏が4月4日、裁判所で罪状認否をした際、公開された起訴状で明らかになった。34件とも、16年大統領選の最中、不倫関係にあった人気ポルノ女優に口止め料を支払い、それを事業費として計上したことに関係している。英BBCは、事業記録の改ざんだけでは軽罪だが、ほかの犯罪の隠蔽に利用したことが重罪の扱いになったと解説する。
WSJの社説は、記録の改ざんが他の犯罪につながったとする根拠が弱いとして、ブラッグ検事を批判した。
しかし、起訴の立役者であるアルビン・ブラッグ検事は、こう説明する。
「この事件は、多くのホワイトカラー事件と同様に疑惑に満ちている」
「誰かが自分の利益を守るために何度も何度も嘘をつき、私たちの誰にも適用される法律から逃れようとしており、疑惑に満ちている」
同検事は一貫して、トランプ氏の嘘の上塗りを違法として有罪に持ち込みたい意向だ。BBCは「有罪となれば、刑務所で服役する可能性がある」という。
罪状は全て否認
魔女狩りと批判
トランプ氏は裁判所で、34の罪状を全て否認。「違法なことは何もしていない!」と、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で主張した。彼が1日に数通発信する支持者向けメールも常に攻撃的だ。
「ブラッグ検事は急進左派で、起訴は魔女狩り」
「起訴は最初から死んだも同然だ。終わっている」
実はこのメールの送信元は「第45代大統領ドナルド・トランプ」あるいは「トランプ・フォー・プレジデント(トランプを大統領に)」となっている。彼は今も現職で、再選を狙っているかのような印象を与えている。
さらに、彼の選挙陣営は起訴された後、「焼け太り」状態だ。まず、3月下旬に起訴近しとメディアが報道した際、「来週火曜日(3月21日)に逮捕される」とSNSに投稿し、3日間でおよそ150万ドルを集めた。起訴発表の24時間以内には、400万ドルもの寄付金が転がりこんだ。
トランプ氏と彼の陣営は、支持者に対し、起訴が違法を問うのではなく、「司法制度が不正」で、トランプ氏は「不当な扱いの被害者」というイメージを植え付けることに成功している。
バイデンに勝つ?
支持率で共和党有利
支持率も上昇中だ。米紙ワシントン・ポストとABCテレビが行った世論調査によると、24年大統領選で支持する候補者として、トランプ氏(共和党)が49%で、バイデン氏(民主党)の42%に差をつけた。なお、共和党候補がデサンティス・フロリダ州知事だった場合も48%を獲得、バイデン氏の41%に水をあけており、共和党候補に根強い支持があることが分かった。
なお、アメリカ合衆国憲法は、起訴された人物や有罪となった人物が、大統領選挙を戦ってはいけないとは定めていない。憲法の制定時は、トランプ氏のような人物が出馬することは「想定外」だったとみられる。
大統領選挙戦は今後1年半続くが、経済の先行き見通しは芳しくない。バイデン政権にとっては良くないニュースだ。銃撃事件の増加など社会問題も山積みで、バイデン氏の選挙戦は苦闘が強いられそうだ。
津山恵子
ジャーナリスト。
「アエラ」などにニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。
フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOなどにインタビュー。
近書に「現代アメリカ政治とメディア」(東洋経済新報社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。
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