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困難に立ち向かい、今を全力で生きる日本人ビジネスパーソン。名刺交換しただけでは見えてこない、彼らの「仕事の流儀」を取材します。
オフ・ブロードウェイ劇場の「Playwrights Horizons」で、今月30日まで公開中のトラジック・コメディー『Regretfully, So the Birds Are』が、ミレニアル世代を中心に注目を集めている。脚本を手がけるのは、ロサンゼルスで生まれて7歳の時にニューヨークへ引っ越してきたという米国育ちの日本人である泉樹里亜さん。
物語は、白人の両親とアジア系アメリカ人の養子縁組であるウィスラー3兄弟が、自分のルーツとアイデンティティーを求めて旅をする。放火、近親相姦、殺人事件、さまざまな問題が起き…。同作を通して米国で生きるアジア人としての人種概念、偏見、自分は一体何者なのかを考えさせられる内容に仕上がっている。
子供の頃から抱く演劇への憧れ
「気がついたら子供の頃から演劇を見るのも、演じるのも好きで夢中になっていました」と話す樹里亜さん。演劇の世界に興味を持ち始めたのは4歳の頃、母親に連れられて見た「ウエストサイドストーリー」。舞台上を真剣に見つめる彼女に、隣りの席の人が「あなたのお嬢さん演劇にすごく興味ありそうよ。お芝居させてみたら?」と声をかけたのがきっかけで、母親が樹里亜さんを演劇クラスへ通わすようになったそう。
すっかり演劇の魅力にハマり、次第に演じる側から作る側へ興味を抱くようになり、脚本を書くようになったのは大学に入ってからだという。好きな劇作家はピューリッツァー賞ドラマ部門を受賞したDavid Lindsay-Abaireや、風変わりで時に不条理な戯曲で知られるChristopher Durang。「二人とも独特で複雑な人間関係を描く作品が多く、ユーモアがあってとても面白いんです。私自身、脚本を書く時に自分が面白いと思えるかがとても重要です。時々、日本のお笑いからもインスピレーションを受けます」と語る樹里亜さんは大のお笑い好き。子供の頃から日本の漫才やお笑い、バラエティ番組を見ているんだとか。
若い世代に演劇を身近に感じてほしい
パンデミックを機に、ニューヨークだけでなくシカゴやシアトルなどで劇場に足を運んでくれるオーディエンスが激変したという演劇業界。「エンターテインメントがスクリーンへ移行するようになり、劇場側は、どうしたらもっと多くの人に足を運んでもらえるか試行錯誤しています。チケットの値段も決して安いとは言えませんが、映画やドラマにはない、素晴らしいものが舞台にはあります。間近で役者さんたちのエネルギーを感じてほしいです。特に私と同世代の人たちに、もっと演劇の魅力を伝えることができたらいいなと思います」。
次はどんな作品を脚本してみたいかという問いに「米国の陪審裁判の有罪か無罪かという判断に違和感を感じていて、本当にそれが正しいのか、それを判断するものって他にはないのか、正義ってなんなのか、模索しています。いつか、このテーマを追求した作品を手がけてみたいです」と真っ直ぐな眼差しで話してくれた。
時事問題、人種問題、日常で起こるさまざま出来事を広い視点で捉え、独特のユーモアをスパイスとして加える樹里亜さんの演劇にぜひ足を運んでみてほしい。
泉樹里亜さん
脚本家
来米年:なし(米国生まれ)
出身地:ロサンゼルス
好きなもの・こと:お笑い鑑賞、食べ歩き
特技:マラソン
2019年にブラウン大学でPlaywritingの修士号(MFA)を獲得。作品「miku, and the gods.」が昨年シアトルで上演された。
先月は「Sometimes the Rain, Sometimes the Sea」がワシントンDCで上演され、さまざまなメディアに取り上げられ話題を呼んだ。
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