気になる二人のNY対談

【対談】作曲家・宅見将典さん x マスタリングエンジニア・畑亮次さん 「第65回グラミー賞の最優賞」

第65回グラミー賞の最優秀グローバル。ミュージック・アルバムに自身が手がけた『SAKURA』がノミネートされた作曲家の宅見将典さんと、マスタリングエンジニアの畑亮次さん。五年の道のりをかけ、 チームとして共に歩んできた二人が語り合 っ た。


―― ノミネートが決ま っ た時のお気持ちは。宅見

 「あの時あれをしていなかったら、 ここには行き着いていないな」 と歩いてきた道のりを再確認す時間と言いましょうか、感慨深いものがあります。

 率直に言うと夢をみているような気持ちでした。私の場合はアーテ ィ ストさんあっ てのポジシ ョンなので、 宅見さんに出会い、 一 緒に目指すべ くところに辿り着けて本当に良か っ たなと感じて います。

――お二人が出会われたきっかけは?

宅見 僕がXJAPANのYOSHIKIさんの大フ ァンであり弟子でもあり、 2015年にマディソンスク エアガーデンでライブがあり、 そのためだけに日本からニ ュ ーヨークに行った際、 会場にきていた共通の友人が畑さんを紹介してくれたのがきっかけです。当初は飲み仲間っ て感じでしたが、 僕がLAへ移住した頃から、 彼にマスタリングという工程のお仕事を依頼するようになりました。 5枚目のアルバムで今回ノミネートが決まりましたが、 2枚目から一緒にお仕事して います。

――この作品に対する想いを教えてください。 

宅見 海外の人にも日本人にも馴染みのある名前にしたくSAKURAと付けました。桜を見ると心が洗われ、その咲き誇る力が我々の心にも届く音楽を作りたいと思いました。世界では民族の争いや戦争、人種問題、疫病などがあります。世界中に私の音楽が届いて、平和な気持ちになってくれたらいいなと願っています。

テクニカルの面では、日本の伝統的なサウンドと、洋楽のサウンドの融合を目指し、音響の周波数やアメリカで現在受け入れられている周波数を意識しました。 メロディや楽器は日本の要素を意識しました。 映画のサウンドトラ ックであれば、 映像と音楽がシンクロして人に伝わりますが、僕の場合は音だけでその世界観を表現するので、 色々と試行錯誤しました。

それが今回、ノミネートとして受け入れられた要因だっ たのではないかと思っ ています。 日本の楽器を使うことで耳馴染みがいいので、 日本で求められる心地よいメロデ ィーが作り出せ、 そしてアメリカで求められるベ ースやリズムのサウンドのほしい帯域、 周波数を得ることができてよかっ たです。

 僕は2枚目から一緒にお仕事させてもらっ ていますが、 毎回、 宅見さんから 「も っ とこうしたい」 と明確に共有してもらえるので、 方向性をシ ェアすることで共に歩むことができたんだと思います。 作品の制作に入る時点で、 どこにマスタリングの着地点を持っていくかを明確に共有していただけていたのは、 すごく大きか っ たですね。

マスタリングの仕事において、 正直事前にそこまでの詳細情報をいただけることはそれほど多い ことではありません。 技術的なのことを理解していないとそこまで話し合えることも難しいことが多々あります。しかし、 宅見さんは技術的な面においてもし っ かり研究されているので、 同じ言語を話せるというか、 通じ合えて、 それは作業する上でも大きく影響したと思います。

――今年の抱負は?

宅見 2023年はニ ュ ーヨークでライブをしてみたいです。

 One project at a time. 初心忘るべ からずですね!

 

諦めずにここまでや っ てきて本当に良か っ た―宅見

マ ス タリ ン グまで見据えたプリプ ロ ダクシ ョ ン は極め て稀―畑

 

 

Masa Takumi(宅見将典)

2000年ロックバンド”siren”でBMGよりドラマーとしてメジャーデビュー。その後、作編曲家として国内外の数々のプロデュースや映像音楽などを手掛ける。日本では作曲家として2度のレコード大賞金賞、またグラミー賞は本年度2度目のノミネートを受けている。

畑亮次

NY在住のマスタリングエンジニア。90年代中盤よりThe Looking Glass Studioにてエンジニアとして活動。Philip GlassやDavid Bowie、その他様々なアーティストの製作に関わり、2010年頃からマスタリングにも従事。2016年から宅見将典のマスタリングに参加。

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