プロスポーツから見る経営学

UEFA欧州女子選手権

過去最多動員を記録
注目度高まる女子戦

UEFA欧州女子選手権が7月31日、イングランド代表の優勝で幕を閉じました。決勝点を挙げたイングランド代表のクロエ・ケリー選手がユニホームを脱ぎ去り、歓喜の走りをした姿をライブで、もしくはニュースで観た方は多いのではないでしょうか。

スポーツブラを着用していることは現代では当たり前ですが、1999年FIFA女子ワールドカップ決勝戦で、アメリカ女子代表がPK戦の末にブラジル女子代表を破った際、PKを最後に蹴って優勝を決めたアメリカ女子代表のブランディー・チャスティン選手が同様に、歓喜のあまりユニホームを脱ぎ去ったことで、下に着用していたスポーツブラの存在も大きく認知されました。

女子サッカーも注目が高まっている

当時あまりにも大きくその写真が取り上げられたため、「ナイキが自社のスポーツブラの宣伝広告のために仕込んだマーケティングだったのではないか」とやゆされたほどです。

今回の優勝はイングランド女子代表にとっては史上初であり、悲願といえます。サッカー発祥の地といわれるイングランドが大型の国際舞台で優勝を飾ったのは、66年のワールドカップでのイングランド男子代表が最初で最後となっていました。今回の大会の前からイングランドサポーターたちの間で盛んに歌われた「Football’s Coming Home」がかなった形となったのです。

賃金格差の平等化へ

女子のサッカーは特にここ最近大きな人気を得ており、存在感も確かなものとなっています。今回の欧州選手権の決勝戦も史上最大といわれる8万7192人もの来場者数を記録し、大会の総観客動員数は57万4875人で、前回大会の倍以上の記録となりました。

日本でも女子のプロサッカーリーグ・WEリーグが2021年に開幕したり、今年4月の欧州チャンピオンズリーグ準決勝、FCバルセロナの女子の試合では9万1648人もの驚異的な動員数を残しました。

他にも最近では、アメリカサッカー協会は今春に、男女の代表チームの同一賃金の支払いに同意し、それぞれのチームを同様の契約条件の下に統合。これまでアメリカ女子代表は、長年に渡って男女代表の賃金格差について不満を示し、19年3月から格差是正を求めて訴訟を行っていましたが、アメリカサッカー協会と女子代表は和解に合意し、2400万ドル(約30億8000万円)を選手サイドに支払うことになりました。その和解の際に、今後の男女代表チームの同一賃金支払いが約束されたのです。

男子とは異なるプレー

特に日本の女子サッカーは国際的にも高評価を得ております。男子のJリーグはプロリーグができてから約30年が経過しますが、そのおかげで選手も関係者も、みんな国際的に活躍するまでになってきました。同様に、WEリーグがさらに日本の女子サッカーを推し進めていくことを私も楽しみにしています。

女子のサッカーをよく見る機会がありますが、非常に面白く、白熱したもので、皆さまにも機会があればぜひとも観戦をおすすめしたいと思います。

特に男子サッカーとは異なり、フィジカルで何とかしてしまう場面で、女子サッカーは華麗にスピーディーに技術や連携で打破していくプレースタイルは見応えがあるもので、同じサッカーであってもプレースタイルにそれぞれの良さを見いだすことができます。

ニューヨークにもプロ女子サッカーリーグ(National Women’s’ Soccer League)に所属するゴッサムFCがあり、世界王者に輝いたアメリカ女子代表所属の選手も多くプレーしていますし、元日本代表の川澄奈穂美選手や横山久美選手も活躍していますので、ぜひ足を運んでみてください。

 

 

 

 

中村武彦

マサチューセッツ大学アマースト校スポーツマネジメント修士取得、2004年、MLS国際部入社。08年パンパシフィック選手権設立。09年FCバルセロナ国際部ディレクター就任。ISDE法科大学院国際スポーツ法修了。現東京大学社会戦略工学研究室共同研究員。FIFAマッチエージェント。リードオフ・スポーツ・マーケティングGMを経て、15年ブルー・ユナイテッド社創設。


スポーツマーケティング
ひとくち入門コラム⑯

このコーナーではスポーツマーケティングにおける10個の目的、そしてそれに伴う「アクティベーション」の概念に関して解説してまいりましたが、今回が最終回となります。

いろいろとここで解説してきたものの、こうあるべきだということはなく、企業によってスポーツマーケティングを実施する目的や背景は異なりますし、パートナーとなるスポーツ団体も地域も異なります。看板などはほんの一例でしかありませんが、ものすごい大勢の人が注目するイベントの看板とそうではないイベントであればその効果も異なってくることと同様です。あくまでも看板は例の一つであり、何のためにパートナーになるのかが肝要になってきます。

スポーツマーケティングとは何か。どうしてスポンサーをするのか、どう測定するのか、という原理原則に関して理解していただくことはできましたでしょうか?

スポーツマーケティングの本場ともいえるこのニューヨーク。読者の皆さまに少しでも親しみを感じていただき、実際にそれを試してみようというきっかけになっていたら本望です。

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