大学進学を考える 日本と米国、二つの国で学び暮らす選択
コロナ禍を経験して社会は大きく変わった。日本社会も例外ではない。未来を見据えて、グローバルな大学進学の選択肢の一つとして、米国と日本で自分たちのルーツを生かす学びについて掘り下げる。
異なるジャンルで活躍する当地の日本人が、不定期交代で等身大の思いをつづる連載。
日本に一時帰国して一カ月が経ちました。だいたい30席くらい公演してますから一日一席ペースですが、移動の日やオンライン稽古だけの日もあり、実際は2日で12席のスケジュールだったりと心身共にハードな生活をしています。今週は静岡から東京、山形県の寒河江(さがえ)市、秋田市を回って、東京で柳家権太楼(ごんたろう)一門会、図書館での独演会と目まぐるしく、来週は一週間京都で毎日日替わりのイベントを打っての「京都落語WEEK」で4回の独演会、途中一回東京に戻って高田馬場で独演会をほぼ一カ月休みなしで、思う存分に落語をしています。
「ざぶとん亭」の弟子たち
僕の師匠は三代目柳家権太楼ですが、私を含めて弟子が6人います。5人が真打ちで最後の一人が二ツ目ですが、彼も来年真打ちかというところです。そして僕は自分で作りました「RAKUGO Association of America」で後進の育成をしていますが、こちらはアマチュアですので「柳家」ではなく「ざぶとん亭」です。「ざぶちゃん」が「ざぶとんに座って」やる芸ですので「ざぶとん亭」です。その「ざぶとん亭」ですが、アメリカの他にも日本のクラスがあり、今回の帰国で初めてzoomで会っていた「可愛いお弟子さん」に会いました。
というのも、写真の中で着物を着ている「ざぶとん亭きの子っぺぱん」ちゃんが僕の落語の前座を勤めてくれることになり、オンライン上のクラスのみんなが集まりました。
僕のクラスにはいろいろな名前のお弟子さんがいて、みんなそれぞれに自分で好きな芸名を付けます。中には「ざぶとん亭ジェダイ」と名乗った子もいましたが、ジェダイは2週間でやめちゃいました。暗黒面へ落ちてしまいました。うちの甥っ子は単純で焼肉が好きだから「ざぶとん亭焼肉」です。焼肉には「ざぶとん」という部位がありますので、なんだか焼肉屋さんみたいです。そんな中でも特に個性的なのが「きの子っぺぱん」ちゃんです。きのこは可愛いから、コッペパンは美味しいからという理由で造語された「きの子っぺぱん」。会場のスタッフさんが短く「こっぺぱん」さんと略していましたが、僕は絶対に略さない。僕は「ざぶ」さんと言われてますがね、なんとなく「きの子っぺぱん」は「きの子っぺぱん」なんです。そんな彼女は名前の由来から会場を笑わせにかかり、無事に「味噌豆」という演目で前座を勤めてくれました。
アメリカで落語界の「究極の横社会宣言」
私たちの落語界は究極の縦社会です。400年の間、師弟関係を中心に口伝で芸が継承されて来ました。その伝統のもとで僕は師匠、柳家権太楼に育てていただき、真打ちになり、楽屋や世間では師匠と呼ばれています。しかし、僕が選んだ住処(すみか)は自由の国アメリカです。そしてリベラルな街、ニューヨークです。僕はこの土壌に合う後進の育成を考えた時に、アメリカでの落語界、落語を教えるメソッドにイノベーションを起こそうと思いました。それが「究極の横社会宣言」です。僕は落語を教える師匠でありますが、あくまで落語の上手な同志です。僕たちはアメリカや世界で落語やRAKUGOをする仲間、友達なのです。その究極の横社会の中から生まれたメソッドが「らくごdeあそぼ」です。みんなで役を振り分けて、5歳から70歳までのざぶとん亭一門で「らくごdeあそんで」います。
先日は初級クラスでざぶとん亭すいかちゃん5歳と僕で初天神をやりました。役は、すいかちゃんがお父さん、僕が子供の金坊です。すいか「おめえは子供のくせに、言うことだけは一人前だな」。ざぶ「おとっつあん、飴玉買って」。すいか「飴玉ほおばって喋るんじゃねえ」。
楽しい世界です。
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この連載は今回で一旦お休みになります。この連載で文章を書く楽しみをたくさん味わいました。今後、「らくごdeあそぼ」の落語教則本やこの連載をまとめた本が出る予定です。読者の皆さまにおかれましては、今後も私や「ざぶとん亭一門」の活動を見守っていただきたくお願い申し上げます。
またいつかこちらの連載に帰って来るのを楽しみにしています。
柳家東三楼
柳家東三楼
(やなぎや・とうざぶろう)
東京都出身。
1999年に3代目・柳家権太楼に入門。
2014年3月に真打昇進、3代目・東三楼を襲名した。
16年に第71回文化庁芸術祭新人賞を受賞。
19年夏よりクイーンズ在住。演出家、脚本家、俳優、大学教員(東亜大学芸術学部客員准教授)としても活動。
紋は丸に三つのくくり猿。出囃子は「靭(うつぼ)猿」。
現在、オンラインでの全米公演ツアーを敢行中。落語のオンラインレッスンあり、詳細はウェブサイトへ。
zabu.site
お知らせ
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東三楼さんは、現在子供たちや学生、大人へ落語のグループ稽古を提供しています。落語と共に、日本語や日本の文化を一緒に学びましょう!
落語レッスンに参加したい人は、tozaburo.rsv@gmail.com宛にメールでご連絡ください。
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