プロスポーツから見る経営学

プロeスポーツ国際大会

国際大会に出場
eスポーツの可能性

少し期間が空きましたが、ロンドンにて開催されましたプロeスポーツの国際大会に出場してきました。ゲームの種類はEAスポーツ社のサッカーゲーム「EA FIFA」です。もちろん私がゲームをするわけではなく、弊社ブルー・ユナイテッドがオーナーを務めるプロのeスポーツチーム「ブルー・ユナイテッドeFC」としての出場でした。チームオーナーをしつつも、実は国際大会の遠征に帯同するのは初めてのことで、いろいろと自分の目で見て確かめることが楽しみでした。

そもそもプロのeスポーツチームを立ち上げたのが2018年。そこから選手たちの頑張りもあってアジア王者になり、21年にはFIFA(国際サッカー連盟)が主催するeクラブワールドカップにも出場させていただき、ゾーン2で優勝を果たしたのでした。それらの活躍があり、現在ではEA FIFAのゲームの中にブルー・ユナイテッドeFCのユニホームが登場するまでになりました。

このチームを立ち上げる前の17年より、弊社では海外で人気上昇中のeスポーツに注目し始めました。なぜeスポーツなのか? というところから研究を開始し、これには諸説があるのですが反射神経や視神経の動きを用いたスポーツだ、という意見。そして身体的な話とは別にこのeスポーツを取り巻くビジネスモデルが他のスポーツビジネスと一緒だから、ゲーマーと言わずにeスポーツといわれるようになったというものがあります。スポーツビジネスをなりわいとしている弊社は、後者の考え方に注目したのでした。スポーツビジネスのノウハウをゲームに当てはめれば良いのではないか、と。

eスポーツを取り巻くビジネスモデルは他のスポーツビジネスに通ずるという

新規顧客開拓につながる選手選び

チームをひとまず立ち上げたところから今度は、eスポーツチームを保有する上で選手との契約をする際に、選手を選ぶ観点が大きく二つに分けられることに気がつきました。一つ目は純粋に大会に出場して勝ち、賞金を獲得しにいくこと。もう一つの理由はインフルエンサーやストリーマーとしてゲーム動画を自身のYouTubeチャンネルで流して有名になっている人と契約することで、自分たちも有名になること。いわゆる新規顧客開拓のためになります。そのため弊社がeスポーツに参入をした17年頃には、プロのサッカーチームの多くも自分たちのeスポーツチームを立ち上げた時期で、どちらの目的に重きを置くかによってチームごとの特徴が出ています。

世界大会の結果は

ロンドンではプロサッカーチームのプロeスポーツチームから弊社みたいに自分たちでプロeスポーツチームを立ち上げたところまで、16チームがEAに招待され、16チームが地域予選を勝ち上がってきた総勢32チームが集い、3日間にわたり大会が繰り広げられました。結果としては弊社は世界で17位という結果になったものの、ここまでの4年間でこのような成果を出せたことは素直にうれしいものでした。元サッカー日本代表の山田卓也氏にブルー・ユナイテッドeFCのゼネラルマネジャーに就任をしてもらったり、元サッカー日本代表の鈴木啓太氏が代表を務めるAuB社と提携をしてeスポーツ選手用の体調管理に取り組んだりと、選手そしてスタッフ両方でもっとこのスポーツのことを勉強していきたいと思っています。ブルー・ユナイテッドeFC公式YouTubeチャンネルではロンドンの国際大会のドキュメンタリー映像も公開していますので、もしよろしければぜひともご覧ください。

 

 

 

 

 

中村武彦

マサチューセッツ大学アマースト校スポーツマネジメント修士取得、2004年、MLS国際部入社。08年パンパシフィック選手権設立。09年FCバルセロナ国際部ディレクター就任。ISDE法科大学院国際スポーツ法修了。現東京大学社会戦略工学研究室共同研究員。FIFAマッチエージェント。リードオフ・スポーツ・マーケティングGMを経て、15年ブルー・ユナイテッド社創設。


スポーツマーケティング
ひとくち入門コラム⑬

施設やイベントの名前に企業名が入っていることがよくあります。「ソニーオープン」とか、「トヨタカップ」とか、「レッドブルアリーナ」のように。これはスポーツマーケティングにおける「ネーミングライツ」というもので、パートナー企業の名前を施設やイベントに冠するものです。これにより、その施設やイベントの話をしたり、ニュースで取り上げられるたびにテレビや紙面、ネット上に企業名が登場したりします。

また、施設であれば駅名になったり地図上に企業名が登場したりするので、非常にインパクトのあるスポーツマーケティングの権利の一つになります。パートナー企業がパートナーでなくなった後も印象が強いので、根強く皆の脳裏に焼き付けられますし、子供の時からその施設に通っていると一生忘れないものです。

弊社ではハワイで日米のプロサッカーリーグが対決をするパシフィックリムカップという大会を主催しており、2023年には「ネーミングライツ」を販売してパートナー企業のお名前を冠する大会にできたらと考えています。

               

バックナンバー

Vol. 1292

デザイナー・Sayaka Tokimoto-Davisさんが案内! 最新おしゃれ「ダンボ」

ニューヨークを拠点に「SAYAKA DAVIS」を立ち上げ、日本と米国でデザイナーとして活躍するSayakaさん。洋服だけに限らず、ジュエリーやアートなど、止まることを知らない物作りへの情熱と、アーティストを応援する地元コミュニティーへの愛…。そんなSayakaさんに、ご自身のブランドとブルックリン区ダンボ地区への思い、そしてお気に入りスポットを語っていただきました。

Vol. 1291

4月22日国際アースデー 今こそ立ち上がろう環境保護サポート

4月22日はアースデー。それは、地球が直面する深刻な環境問題に注目を集め、行動を起こすことを目的とした日。気候変動や海面上昇、異常気象などがますます深刻化する今、この日に合わせて世界各地でさまざまな団体や企業がその危機に歯止めをかけるためのアクションを起こしている。この機会に改めて、今向き合うべき環境問題について考えてみよう。

Vol. 1290

私たち、なことてま

気になる企業を深掘りする連載企画。今回はパークサイド・デンタル&インプラント・センター のフィリップ・カン先生とグローバル・ファティリティ・アンド・ジェネティクスの不妊治療コーディネーター 岡本朋子さんにインタビュー。

Vol. 1289

春のアップステートおでかけ企画 シャロンスプリングスってどんなところ?

昨年の秋、日本国内外に温泉旅館やホテルなど72の宿泊施設を運営する星野リゾートが北米本土進出を発表した。そこで選ばれたのがマンハッタン区から車で約3.5時間の場所にあるシャロンスプリングス。同社の初となる米国での温泉旅館開業に注目が集まるということもあり、今回は星野リゾートのインタビューと現地の魅力をお届けする。