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異なるジャンルで活躍する当地の日本人が、不定期交代で等身大の思いをつづる連載。
ビザの更新ができました。僕の労働ビザはアーティストに発行されるO─1Bというビザで、アートにまつわる仕事全般に許可が出ています。僕の場合は落語しかできませんが、おそらく映画を撮ったり、絵を描いたり、歌を歌ったりすることでアメリカの会社と契約できます。
僕が落語の世界に入って見習い前座として修業を始めたのが1999年5月3日でした。早いもので23年も噺(はなし)家として食べてきて、24年目に入りました。
7月11日から前座となり、新宿末廣亭で初高座を迎えました。約3年半の修業を終え、二ツ目に昇進したのが2002年11月1日。この日から芸名を「柳家ごん白(ぱく)」から「柳家小権太」に変えての活動です。前座のうちは着られない紋付羽織袴を身に着け、帯も真打ちや歌舞伎役者同様に「帯源」というブランドを使えるようになり、見た目だけは一人前です。
そして何より毎日の師匠宅へ行っての修業、大晦日以外公演している都内の寄席での仕事、修業から解放され、心からうれしかった。そして都内4軒の寄席で10日ずつ、40日の披露興行をしてくれ、演目も前座噺からもう少し難しい噺ができるようになります。思えば僕のアメリカ生活もこの噺家の修業にのっとっていたように思えます。
アメリカ修業1年目
19年にビザを取得し、サンノゼに伺った折、在米の御住職から言われた言葉がありました。「ざぶさんは日本では真打ちで経歴が素晴らしいですが、アメリカでは1年生ですよ」。
これ以外にもさすがお坊さん、いろいろと説教をされ、何だかまだ何もしていないのにごちゃごちゃ言われて、とても不快でじんましんが出ました。何かして叱られるならまだしも、僕はどこかへ行って師匠ヅラしたわけでも威張ったわけでもなく、ただアメリカに渡っただけなのに。しかし、柳家の家訓は「万事素直」と大師匠の五代目柳家小さんは言っていました。僕は襟を正して、アメリカ修業1年目を始めました。つまり、ビザ取得前の見習いを終え、前座になったわけです。
生活は2度目の青春でした。コニーアイランドという、ミッドタウンが都心だとすると大船のような海沿いの半地下のアパートを550ドルで借り、シェアハウス。前座さんが基礎を身に付けるために「道灌(どうかん)」という噺を何度も何度も繰り返して演じますが、僕は「The Zoo」を繰り返し演じることで、英語を使って落語で笑わせることを身に染み込ませていきました。
同じ噺を繰り返して、間や表情、長さを自由自在にお客さまに合わせて変えられるプロの芸に押し上げるための修業、「業を修める」ことに集中しました。その期間にアメリカで表現者として生きていく心構えを、師匠宅や寄席での修業になぞらえて「アメリカでのアーティストの了見」だと思い、さまざまな仲間や仕事先での経験を栄養にしてきました。何十の大学で行った質疑応答を通しての学生との対話も、アメリカという国、噺家がアメリカで活動する事を深く考える機会になりました。
真打ちを再び目指して
さて、噺家前座修業が3年半であったように、アメリカ噺家修業も3年半以上が経ち、ビザも3年更新しました。いよいよアメリカ二ツ目生活に入ろうと思っています。前座時分も二ツ目に昇進後のために噺の稽古をしていました。
アメリカ生活では英語でオリジナルの落語を作ったり、いくつかの落語の翻訳、翻案をしてきました。またコロナが明けてこれから行う予定の「アメリカ50州ツアー」では全編英語の独演会を中心に、落語を「RAKUGO」として広げるために動き回ります。
20年前に昇進したうれしさが、今またアメリカでよみがえっています。活動が10年を超えるとアメリカ真打ち(グリーンカード)ってことになりますかね。その辺は頑張って、すぐにでもグリーンカードに昇進したいですが(今年も抽選は外れました)。
【次回予告】
次号は、柳家東三楼さんのエッセー第39回をお届けします。
柳家東三楼
(やなぎや・とうざぶろう)
東京都出身。
1999年に3代目・柳家権太楼に入門。
2014年3月に真打昇進、3代目・東三楼を襲名した。
16年に第71回文化庁芸術祭新人賞を受賞。
19年夏よりクイーンズ在住。演出家、脚本家、俳優、大学教員(東亜大学芸術学部客員准教授)としても活動。
紋は丸に三つのくくり猿。出囃子は「靭(うつぼ)猿」。
現在、オンラインでの全米公演ツアーを敢行中。落語のオンラインレッスンあり、詳細はウェブサイトへ。
zabu.site
お知らせ
子供、学生、大人向け落語レッスン開講中!
東三楼さんは、現在子供たちや学生、大人へ落語のグループ稽古を提供しています。落語と共に、日本語や日本の文化を一緒に学びましょう!
落語レッスンに参加したい人は、tozaburo.rsv@gmail.com宛にメールでご連絡ください。
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3月17日(土)のセントパトリックデー(Saint Patrick’s Day。以下:聖パトリックデー)が近づくとニューヨークの街中が緑色の装飾で活気づく。一足先に春の芽吹きを感じさせるこの記念日は、アイルランドの血を引く人にとっては「盆暮れ」と同じくらい大事。大人も子供も大はしゃぎでパレード見物やアイリッシュパブに出かける。聖パトリックデーとアイルランド魂の真髄を紹介する。
今年のノミネート作品の傾向、出演俳優の話などを含め、授賞式の見どころを紹介していく。
ニューヨークも少しずつ春めいてきた。そろそろ夏休みの計画が気になり始める。特にお子さんのいる家庭では「サマーキャンプ、どうする?」といった会話が食卓でも上るのではないだろうか? 大自然の中で思いっきり身体を使うお泊まりキャンプから、ニューヨーク特有のリソースを利用する市内のデイキャンプまで選択肢は山ほどある。どうやったら2カ月を超える長い夏休みを子どもが退屈せず、かつ、親のストレスなく過ごせるか? サマーキャンプ選びのヒントを集めてみた。