ハートに刺さるニュース解説

トランプ前大統領と中間選挙

中間選挙の行方
トランプ派候補者も

今年は、米大統領選挙の真ん中の年にある中間選挙の年。バイデン大統領の政権が維持されるのか、あるいは、トランプ前大統領の米国第一主義が盛り上がり、共和党が連邦議会を取るのか。

今回の中間選挙は、「反トランプ派対トランプ派」という、国民投票的な意味を帯びているのだ。

トランプ前大統領推薦
J・D・バンス氏とは

「J・D・バンスとは一体何者?」。

11月8日の中間選挙投開票日まで、まだ半年もある5月3日、中西部オハイオ州のある候補者が全米ニュースになった。

若いベンチャーキャピタリスト、バンス氏(37)は、同州の共和党選出上院議員の候補者。候補者を党内で1人に絞る予備選挙で、新人ながらいきなり勝利した。バンス氏はトランプ氏の推薦を取り付けており、トランプ氏のスポークスパーソンは、声明でこう宣言した。

「トランプ氏の影響があったことは否定できない。『アメリカを再び偉大な国にする(メーク・アメリカ・グレート・アゲイン=MAGA)』運動は、この先何年も勝利し続けるだろう」。

バンス氏は、ベストセラーの半生記「ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち」(光文社、2016年)の作家。「ラストベルト(錆びついた工業地帯)」の白人貧困層の家庭に育ち、母親はヘロイン・オピオイド中毒で、家庭内暴力が絶えなかった。

しかし、バンス氏は慧眼(けいがん)あふれる祖母のおかげで、海兵隊からオハイオ州立大学、さらに名門イェール大ロースクールに進んだ。そして、米人口の1%といわれる億万長者の仲間入りを果たす。

同時に、かなり激しいトランプ批判論者だったことでも知られる。ところが、一転してトランプ派となり、過去の批判ツイートなども削除した。トランプ氏もよく出演するFOX5ニュースの番組に頻繁に登場。「フェークニュースのメディア」「バイデン政権は、国境を開放し、犯罪人を入国させている」と、「トランプ劇場」の言葉を繰り返した。

人工中絶を違法化する動きは、リベラル派を選挙に向かわせる

各州予備選挙
極右派の当選も

各州に先駆けて行われたオハイオ州の予備選挙は、陰謀論信奉の極右派Qアノン候補者が勝利した。同州選出の下院議員候補で泡沫(ほうまつ)と思われていた空軍退役軍人、J・R・カジュースキー氏だ。Qアノンは、「トランプ氏が世界を救う」ともしている。

20年の大統領選挙では、1800平方メートルの庭に大量のペンキを使って「トランプ2020」の青い旗を描いた。今回の選挙戦のテレビCMでは、体格のいいカジュースキー氏が対人殺傷銃をカチッと鳴らし、「アメリカを再び支配的な国にする」という音声がかぶる。昨年1月6日、Qアノン派を多数含むトランプ支持者が首都ワシントンの連邦議事会議事堂を襲撃した際も、参加していた。11月の本選挙では彼の選挙区で民主党穏健派候補と一騎打ちとなる。

中間選挙予想
トランプ氏再立候補は

今回の中間選挙では、米上院100議席のうち34議席と、下院435の全議席が改選となる。また、50州のうち36と多くの州で州知事が改選となる。現在、上院では民主党50議席対共和党48、下院で221対209と僅差で民主党が多数派を確保している。

しかし、中間選挙は過去、野党が多数派を獲得したケースが多い。ホワイトハウスは与党、議会は野党支配というねじれが生じ、「レームダック(死に体)」政権となる。今回、バイデン政権は、発足2年で死に体になるかという瀬戸際だ。

政治ニュースサイト「ポリティコ」の予測によると、中間選挙結果で上院において民主党の獲得見込みが11議席、共和党18、激戦で予測が難しい議席が5。下院は、民主党175議席、共和党197、激戦23で、まだ予測していない議席が40ある。上下院いずれも民主党にかなり厳しい見通しだ。

過去の中間選挙と最も異なるのは、過去の人であるべきトランプ氏が推薦する候補者が全米に150人もいる点だ。「MAGA国家」「トランプ劇場」の復活、さらには24年大統領選挙にトランプ氏が再立候補する可能性も取り沙汰されている。

 

 

 

 

津山恵子
ジャーナリスト。
「アエラ」などにニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。
フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOなどにインタビュー。
近書に「現代アメリカ政治とメディア」(東洋経済新報社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

 

 

 

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