サミュエル・&#
困難に立ち向かい、今を全力で生きる日本人ビジネスパーソン。名刺交換しただけでは見えてこない、彼らの「仕事の流儀」を取材します。
47都道府県と海外に76の拠点を持ち、行政活動の実務を行う日本貿易振興機構(ジェトロ)でディレクターを務める堀田基(もとい)さん。昨年11月にニューヨーク事務所に赴任してきたばかりだが、それ以前は東京本部をはじめ、ジョージア州アトランタや岡山事務所、内閣府へ出向し、さまざまな場所でキャリアを積んできたという。
「数年単位で国内外の異なる職場に所属していたため、毎回気持ちを新たに幅広い仕事ができたことはとても貴重な経験でしたね」と堀田さん。
デジタル技術で改革に挑んできた
堀田さんは、入構当初は社内のIT環境整備やデジタル技術推進事業に携わってきた。コロナ直前には内閣府への出向を任命され、数々の規制の見直しを図る規制改革推進室に所属。河野太郎規制改革担当大臣(当時)と共にハンコ改革の事務方の中枢として活躍してきた。
「以前から“脱ハンコ”が議論されていた中で、在宅勤務を強いられたコロナ禍は追い風となりました」。ハンコ文化に対する日本人の固定観念を丁寧に解きほぐし、米国ではすでに浸透している電子契約・電子署名の普及にも励んだ。こうした尽力もあり、今では行政や企業の手続きのデジタル化が進んでいることは記憶にも新しいだろう。
そして日本の企業の海外進出のみならず海外企業の日本進出も支援するジェトロにとって、「双方向でのビジネスをより円滑にする環境整備は重要です」と堀田さんは言う。「シームレスにグローバルビジネスを展開するためにも、デジタル技術の活用は欠かせません」。
そんなグローバルな視点はもちろんだが、デニムの名産地である岡山にも赴任した経験を持つ堀田さんは、地方ならではの目線を持つことも忘れていない。
「過疎化や少子高齢化によるマーケット縮小に頭を悩ませたり、コロナ禍で売り上げを落としてしまった町工場も多い。日本国内に向けた展開だけでは限界もあります。これまで地域を支えてきた産業や伝統産品が海外に販路を見つけられるよう、精一杯ご支援させていただきます」。
日米をつなぐ架け橋として
個別企業の海外戦略立案、市場調査、販路開拓から展示会や商談会まで、米北東部に進出を目指す日系企業の支援を幅広くサポートする中で、現在は日用品やアパレル等の相談を多く受けているという堀田さん。当地ではギフトショーの「NYNOW」やオンライン展示会「Shoppe Online」への出展支援を行うが、たわしなどアメリカ人の生活になじみのない商材も多い。そんな商材は、おしゃれなビジュアルを使って使い方を“通訳”することが堀田さん流だ。また、コロナ禍でオンライン商談が主流となる中、日用品やアパレルなどは実物を見て触ってもらうことが大切という考えから、今後はオンラインとフィジカル両面でのアプローチを強化していくともいう。
現在、再来米から4カ月。当地の店舗の探索にも足を伸ばし、多い時には3万歩を歩くことも。「日々勉強です。ニューヨークにはアートや食が溢れていて、街歩きが楽しいです」とほほ笑む堀田さんは、日米を太くつなぐ架け橋として、これから当地でも大活躍を見せてくれるに違いない。
堀田基さん
「ジェトロ」ディレクター
来米年: 2017年、2021年(再来米)
出身地: 東京都
好きなもの・こと: スポーツ全般(特に野球)、旅行
特技: たくさん歩くこと
慶応義塾大学卒業後、日本貿易振興機構(ジェトロ)入構。
2016年よりアトランタ事務所へ海外実習生として勤務。その後、岡山事務所、内閣府への出向を経て、21年にニューヨーク事務所へ赴任。
日本の逸品を発信するプロジェクト「ショーケースジャパン」のディレクターを務める。
Instagram: @showcasejapan