プロスポーツから見る経営学

NFLスーパーボウル

多くの観戦を促す
試合外の仕掛け作り

2月13日に行われた第56回NFLスーパーボウルは、ロサンゼルスラムズがフランチャイズ史上初めて優勝したことで幕を閉じました。

私はアメリカに長いこと住んでいますが、正直いまだにアメリカンフットボールのルールをきちんと理解することができていません。20年ほど前にアメリカの大学院に留学で来た時、クラスメートたちがテレビゲームでアメリカンフットボールを楽しんでいるのに交ぜてもらうためにルールを丁寧に教えてもらったものの、あまり理解できなかった思い出もあります。

とはいえ、スポーツビジネスに携わり、そして自身の会社でハワイの国際サッカー大会「パシフィックリムカップ」を運営しているからには、ハーフタイムショーや、試合の合間に流れるテレビCMは楽しみにして見ています。

普段はアメリカンフットボールに興味がなく、ほとんど観ないくせにスーパーボウルとなると知人の家に集まって観戦することには違和感があるので、いつも自宅で静かに観戦するようにしています。

スーパーボウル2022の視聴率は5年ぶりに高水準を記録した

観戦への動機作りがスポーツビジネスの基本

ハーフタイムショーやテレビCMの話をしましたが、逆に言うとスポーツそのものに興味がなくとも観たいと思わせる仕掛けや、試合を見ることを誘導することは、スポーツビジネスの基本と言えます。本コラムで何度も述べていますが、スポーツビジネスではスポーツそのものだけを売るわけにはいかないものなのです。

その話は他の回でも解説しておりますので今回は省略しますが、私が興味を持ったのは今回流れたテレビCMでした。従来であればソフトドリンクや、ビール、お菓子、車のCMなどが大半を占めるのですが、今回は、「近未来を想像するもの」が特に多く目に付いたのです。

暗号通貨、5Gサービス、食品廃棄物、メタバース、アレクサなど。ここで指摘したいのは、アメリカ人にとってどのCMが面白かったか、といったことではなく、これら近未来的なものが実現するのだ、というメッセージとして捉えることができる点でした。

伝えたいメッセージを入念に検討する

ハーフタイムショーでもいろいろなメッセージがあったと話題になりましたが、それだけ多くの人が注目して同じものを見ているということにはいつも感心しています。

特にアメリカは人種のるつぼであり、数え切れないほどのメディア媒体数と広大な国土がありますので、アメリカ全土に同時にメッセージを伝えることは容易ではありません。ですが、そんなアメリカでも以下のトピックに関しては、皆が同じく興味を持ち、多くの人が見るものだと考えます。

一つは戦争やテロに関するニュース。二つ目は大統領選挙に関するニュース。そして三つ目がスポーツのニュース。それゆえ、多くのアメリカ企業が超高額といわれるCM枠を購入し、そこで伝えるメッセージを入念に検討しています。

スタティスタ社調べによりますと、世界のスポーツマーケティング予算のうち約35%は北米から来ているといいます。それだけアメリカにおいてマーケティング戦略を立てる際にはスポーツマーケティングを活用することが重要であるということです。そんなことを考えながら、私は来年もスーパーボウルを静かに自宅で観戦するつもりです。

 

 

 

中村武彦

マサチューセッツ大学アマースト校スポーツマネジメント修士取得、2004年、MLS国際部入社。08年パンパシフィック選手権設立。09年FCバルセロナ国際部ディレクター就任。ISDE法科大学院国際スポーツ法修了。現東京大学社会戦略工学研究室共同研究員。FIFAマッチエージェント。リードオフ・スポーツ・マーケティングGMを経て、15年ブルー・ユナイテッド社創設。


スポーツマーケティング
ひとくち入門コラム⑫

スーパーボウルが開催され、テレビ観戦された方も多いと思いますが、会場で観戦するとやはり迫力が違います。友達や家族、あるいは仕事仲間と観戦できたらさらに楽しいものになりますし、そのチケットが入手困難なものであればあるほど、チケットを用意できたらヒーローになれるでしょう。

また、スポーツ観戦しながら商談をしたり、お得意さまを接待することもあります。その時も普通では手に入らないチケットや特別な座席を準備する方がお客さまに喜ばれる可能性が高まります。実はここが大切で、スポーツチームのパートナーになることで、このような特別なチケットや座席を入手することを「ホスピタリティー権を獲得する」と言います。これがスポーツマーケティングを実施する目的の9つ目となります。

もちろん、レストランや会社の会議室で商談をしたり接待したりするのも良いですが、特別な場所で一緒にスポーツ観戦することで話も盛り上がりますし、試合時間が長ければそれだけ親密感も増すため、商談や接待の場面でぜひ活用してみることをおすすめします。

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