Akoの真っすぐ俳優道inニューヨーク

Akoの真っすぐ俳優道inニューヨーク 第10回

異なるジャンルで活躍する当地の日本人が、不定期交代で等身大の思いをつづる連載。


〜いつか夢に見し、麗しのパラダイス
今、その夢を思いぬ、ここに来て
宝塚、我が心の故郷
なにゆえ人は、かくは呼べる
美し園はあまたあれど、
なにゆえ人は、なれにのみ憧がる〜

これは「宝塚我が心の故郷」という宝塚の代表的な歌である。作詞は白井鐵造(てつぞう)で原曲はビンセント・スコットの「O Corse, Ile D’amour(おお、コルシカよ愛の島)」で、ティノ・ロッシが歌っている。宝塚の曲の中での私の大好きな曲の一つである。

宝塚中堅時代

初舞台から3年も経ち、研究科4年生と呼ばれる頃になると、月組の中での位置関係や、この先の自分が進んでいくであろう場所など、立ち位置が見えてくるようになる。

私は初舞台の頃から上級生、同期生から「タネはきっと組長になるね」と言われるほど、周りからは宝塚の外での私は想像もできなかったようだが、前々回でも少し触れた通り、ある演出家の先生の一言がきっかけで、宝塚の外の世界で自分がどのくらい通用するのか、どうせ苦労するのなら広い世界で自分を試したいとの思いが募り、母に話をした。

母は当時月組の美山しぐれ組長に相談し、組長から「せめてあと1、2年辛抱したらどうや」と説得された。それから約2年間、「人魚姫」の新人公演での加茂さくらさんの王女の役や、他にもやりがいのある役を頂いた。

音楽学校を含めて9年間の青春真っただ中、歌劇団では深緑夏代、水島早苗、藤間勘寿朗、朱里みさを、アキコ・カンダなど第一級の講師の方々に師事できて、たくさんの勉強をさせていただき、本当にありがたかった。

宝塚退団に向けて

研七(研究科7年生、歌劇団に入って7年目)になっても結局私の意思は変わらず、退団を決めた。最後の公演になった「さらばマドレーヌ」では作・演出の柴田侑宏(ゆきひろ)先生が芝居のしどころのある素敵な役を書いてくださった。

東京宝塚劇場での千秋楽に紋付はかまで大階段のセンターで、先出の大好きな「いつか夢に見し」を歌い、月組の上級生、下級生の皆さま、満員のお客さまの前で、「今まで宝塚には本当にお世話になり、感謝でいっぱいです。明日からは、新しい道を歩んでいきます。本当に今日までありがとうございました」と笑顔であいさつした。

美山しぐれ組長いわく、「あんたという子は…。他の子たちは涙で退団のあいさつをするのに、笑ってさよならをしたのはあんただけや」と。

もちろん今まで一緒に青春を共に過ごした上級生・下級生と別れるのは寂しかったし宝塚の外に出るのは怖かったけれど、ここでやるべきことはやったという爽やかさと、未知の世界に挑む高揚感があった。

テレビや舞台、ショーの仕事を始める

宝塚での青春時代は、守られた環境で過ごすため、ある意味で世間知らずになる。宝塚を辞める前にその先の生活の準備をしなかったので、宝塚退団後にいろいろな仕事を始めた。宝塚で大スターだったわけではなく、宝塚のファンの方以外には私は全くの無名である。

そんな時に多かったのが歌の仕事。赤坂にあったナイトクラブの「ミカド」をはじめ、地方のホテルやナイトクラブでのディナーショー、新宿のジャズクラブやジャズのフルバンドの専属歌手もした。

フルバンドの譜面を、自分で譜面用のペンで書いて移調もした。譜面と衣装を持って日本全国いわゆる営業と呼ばれる仕事をした。NHKの軽音楽コンクールに入賞して審査員の淡谷のり子さんに褒めていただき、「昼のメロディー」にも出演した。

そのうちに少しずつテレビや舞台の仕事が入り、「天まであがれ」で田中邦衛さんと園佳也子(その・かやこ)さんのご夫婦が経営するラーメン屋の女の子や、坂上二郎さんの「たぬき先生」のシリーズ、「江戸を斬る Ⅱ」「別れて生きるときも」「ぬかるみの女」などのレギュラー、「水戸黄門」「江戸を斬る Ⅰ」「破れ奉行」「破れ傘刀舟 悪人狩り」などのゲスト出演、大衆演劇以外のクリエーティブな作品を通して新しい経験もした。

そして、藤間紫先生との出会いがあった。(次回へ続く)

【次回予告】

次号は、柳家東三楼さんのエッセー第33回をお届けします。

 

 

 

 

 

Ako (あこ)

宝塚音楽学校在籍中に毎日音楽コンクール声楽部門4位入賞。
同校を主席卒業後、歌劇団月組(芸名=夏海陽子)で新人賞、歌唱賞など受賞。
退団後は、NHK歌唱コンクールに入賞。
TV・舞台に出演後、ニューヨークに渡る。
2019年にはPrimary Stagesの「GOD SAID THIS」のまさこ役で、ルシル・ローテル主演女優賞にアジア人で初ノミネート。
18年に日米両語の非営利劇団「AMATERASU ZA」を立ち上げ、芸術監督を務める。今年放映予定のFXのTVシリーズ「SHOGUN」への出演も決定。

ako-actress.com

 

 

お知らせ
新作公演、準備中!

Akoさん率いる非営利劇団「AMATERASU ZA」は、2022年後半に新作舞台「忠臣蔵 四十七士」を上演予定です。現在、絶賛稽古中! 続報はウェブサイト(amaterasuza.org)を参照ください。また、同劇団はウェブサイトで寄付も受け付けています。

 

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