アメリカに落語の花を咲かせましょう

〜第31回〜 たいらばやしか、ひらりんか

異なるジャンルで活躍する当地の日本人が、不定期交代で等身大の思いをつづる連載。


2月5日にRAA(RAKUGO Association of America)主催のオンラインでの落語発表会がありました。これは僕がオンラインで稽古している「ざぶとん亭」の一門会で、4歳からあと数日で69歳の方まで総勢31名が出演して、落語、朗読をしました。ニューヨークからは4歳のざぶとん亭さくらちゃんとどんぐり君が小噺(こばなし)を発表しました。

4歳が演じる中級演目

始まりは去年の春でした。その時に流行っていたクラブハウスで僕の全米ツアーの話をしていると子供向けの落語はないかとのお問い合わせを頂きました。そこで、では試験的にオンラインでクラスを作ってみようということで1クラスでき、今では5クラス、2人の個人レッスンで30人を超える一門になりました。アメリカの子供のクラスは中級、初級、大人のクラスは朗読中心のクラスとシリコンバレークラス、そして日本の子供のクラスです。

それぞれのクラスでお稽古している噺の難易度は違いますが、皆さんそれぞれに難しい演目に挑む中、ダラスの4歳のざぶとん亭すいかちゃんが中級や小学高学年、中学生が発表する「平林(ひらばやし)」に挑戦しました。この「平林」は10分あり、中学生くらいが演じるのも大変な演目で、登場人物は6人もいます。

すいかちゃんは去年の夏頃からお稽古を始めたのですが、一緒のクラスの子が休みがちになってやめてしまい、一人になってしまいました。僕と画面越しに二人っきり、たくさん稽古やお喋りをしました。すいかちゃんの初めての習い事が落語になったわけですが、彼女は落語をすぐに好きになりました。

僕とのレッスン以外でも子供向けの落語を聞くようになり、憧れのお姉さん、お兄さんのようになりたいと中級クラスも毎週見学するようになりました。最初はお母さんにしがみついて恥ずかしがっていた子が、「寿限無(じゅげむ)」だけでなく少しずつ落ちのある小噺を覚え、堂々と中級クラスのお兄さんお姉さんの前でも発表できるようになってきました。

そんなある日でした、すいかちゃんに出演依頼が来たのです。このコラムや、さくらラジオの僕の番組「三代目柳家東三楼のアメリカよもやま噺」でたまにすいかちゃんの話をしていたのですが、読者さん、リスナーさんであった僕の落語の主催者さんから「前座はぜひ、ざぶとん亭すいかちゃんで」と指名が入ったのです。その模様はこちらに書きましたが、その後順調に腕を上げて、今回の発表会に至りました。

まだ見ぬ楽しみな将来

オンラインでのクラスであるため、ほとんどのお弟子さんにインパーソンで会ったことがありませんが、すいかちゃんとはテキサス州のヒューストンで会いました。ダラスからわざわざ会いに来てくれたのです。ご家族の借りている一軒家に僕も泊めさせていただき、たくさん遊びました。始めは伏し目で僕を見て人見知りしていましたが、しばらくして僕の声がいつもの声だとわかったのでしょうか、突然、「ざぶちゃん!」と僕の部屋から離れなくなりました。やはり4歳のかわいい子供です。そして妹の赤ちゃんがいるので、立派なお姉さんぶりも見せてくれました。

そして妹ちゃんの枕元で落語を語って聞かせます。ダラスに住む4歳の子が、江戸弁の僕から落語を教わって、日本語を学んでいます。もう平仮名の読み書きも相当できます。そして定吉やらお店の旦那やらおじいさんを演じ分けて、朗々とそして元気よく「平林」を演じます。まだ意味の分かっていない部分も多いと思うので、数年してすっかり意味が分かった時、どういう反応をするでしょうか。アメリカで生まれ、日常は英語と落語混じりの日本語で育つ彼女たちがどんな大人になるか、今から楽しみです。アメリカに移住しなかったらこのようなレッスンや発表会などの活動はしていなかったので、いよいよ僕のアメリカ生活は楽しく充実してきました。

【次回予告】

次号は、柳家東三楼さんのエッセー第32回をお届けします。

 

 

 

柳家東三楼
(やなぎや・とうざぶろう)

東京都出身。
1999年に3代目・柳家権太楼に入門。
2014年3月に真打昇進、3代目・東三楼を襲名した。
16年に第71回文化庁芸術祭新人賞を受賞。
19年夏よりクイーンズ在住。演出家、脚本家、俳優、大学教員(東亜大学芸術学部客員准教授)としても活動。
紋は丸に三つのくくり猿。出囃子は「靭(うつぼ)猿」。
現在、オンラインでの全米公演ツアーを敢行中。落語のオンラインレッスンあり、詳細はウェブサイトへ。
zabu.site

 

 

 

お知らせ
子供、学生、大人向け落語レッスン開講中!
東三楼さんは、現在子供たちや学生、大人へ落語のグループ稽古を提供しています。落語と共に、日本語や日本の文化を一緒に学びましょう!
落語レッスンに参加したい人は、tozaburo.rsv@gmail.com宛にメールでご連絡ください。

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