街がクリスマスイルミネーションで彩られ、ホリデーシーズンを実感するこの頃。本号ではニューヨークで美味しく食べられるクリスマスケーキにフォーカス。日本人ならクリスマスの食卓にケーキは欠かせないはず !
街がクリスマスイルミネーションで彩られ、ホリデーシーズンを実感するこの頃。本号ではニューヨークで美味
異なるジャンルで活躍する当地の日本人が、不定期交代で等身大の思いをつづる連載。
現在オンラインで落語のお稽古をするクラスが5つあるのですが、2月5日にZoomで発表会をすることになり、これまでのEメールに加えて、グループLINEでも連絡や質問ができるようにしました。
そして、そこで問題は発生しました。金曜日に開いている大人のクラスのグループLINEを作り、クラスの皆さんを招待しました。しかし、普段から個人での返信はきちんと早めに返してくださるメーン州の方がグループでは何の反応もありません。どうしたんだろうと思っていると、「私、落語のグループに入ってるけど大丈夫?」と20年前に別れた元彼女からLINEが来ました。そう、メーン州のお弟子さんと元彼女は同じ名前で、アルファベットでHIROMIと登録されているので、僕は勘違いしてグループに元彼女を招待していたのです。それでは反応はないはずです。
彼女との出会い、別れ
その彼女とは大学の入学式で出会って、一緒にサークルを回っているうちに親しくなり、付き合うようになりました。僕にとっても彼女にとっても交際は初めてで、その関係は僕が噺(はなし)家になって3年、2ツ目になる直前まで5年以上続きました。お互いの両親や兄弟も十分に知り、周囲からはいつか結婚するのだろうと言われていましたが、2002年のバレンタインデーに別れました。その後も数年はお互いに恋人が出来ても年に数回は二人で会い、食事をしたり映画を見たりと親しい友人としての交流はありましたが、いつしか一緒に所属していた大学の野球部の集まり以外では会わなくなっていきました。
数年前のある日でした。突然彼女が落語会に現れて終演後の楽屋口で「話があるの」と真剣な眼差しで僕を見ます。ああ、これは結婚の報告だなと思いましたが、そのある報告に、どうにも答えられずに、それ以来彼女には会っていませんでした。こんなに長い期間その彼女に会わないことはなかったのですが、移住やらなんやらでそんなことは気にも留めず、彼女のLINEアカウントを知っていることすら忘れていました。
そして、このたびのグループLINE、僕は「ごめん、間違った」とだけ送ってそのままでしたが、彼女からは「新年おめでとう」のメッセージがスタンプで来ました。それにも返信していません。しかし。なんだかどうにも彼女が気になります。彼女はその後どうなったんだろうか、そして、独身のままなのだろうか。
自分勝手なずるい感情
その彼女はSNSの類は一切していません。僕が知らないだけかもしれませんが、僕は彼女の情報を得る術はありません。彼女はきっと僕の状況は知っているでしょう。そのアンバランスの中で、こういう場合はどのように探ったら良いか浮かびません。それは若い頃に抱いた恋愛感情でもないし、当たり前のように友達に近況を聞くニュアンスとも違うからです。特に下心はありませんが、心のどこかに「彼女は独身でいてほしい」という気持ちがあるような気がして、自分の気持ちと向き合いたくないのでしょう。不思議でズルい感情です。20年前に彼女が結婚したいと言った時に修業中だからと断ったのは僕なのに、今、「もしもあの時」という違う靴を履いて想像しています。そして自分が傷つかないように、彼女に返信をしていません。
古典落語の「宮戸川」のように若く清々しかった僕たち。20年たって、今はどのような姿なのでしょうか。少なくとも僕は汚れてしまったように思います。それとも「もしもあの時」彼女と結婚していたら自分が汚れていなかったとでも言うのでしょうか。
自分に優しく、自分に都合の良い自分、それは修業を理由に彼女の気持ちを考えなかったあの頃から変わっていないようです。彼女にどう答えたらいいんだろう、こういう時に効く落語ってなんだっけ。それがいつもワカラナイのです。
【次回予告】
次号は、柳家東三楼さんのエッセー第31回をお届けします。
柳家東三楼
(やなぎや・とうざぶろう)
東京都出身。
1999年に3代目・柳家権太楼に入門。
2014年3月に真打昇進、3代目・東三楼を襲名した。
16年に第71回文化庁芸術祭新人賞を受賞。
19年夏よりクイーンズ在住。演出家、脚本家、俳優、大学教員(東亜大学芸術学部客員准教授)としても活動。
紋は丸に三つのくくり猿。出囃子は「靭(うつぼ)猿」。
現在、オンラインでの全米公演ツアーを敢行中。落語のオンラインレッスンあり、詳細はウェブサイトへ。
zabu.site
お知らせ
子供、学生、大人向け落語レッスン開講中!
東三楼さんは、現在子供たちや学生、大人へ落語のグループ稽古を提供しています。落語と共に、日本語や日本の文化を一緒に学びましょう!
落語レッスンに参加したい人は、tozaburo.rsv@gmail.com宛にメールでご連絡ください。
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