今年9月にアラ&
メガグループと連携
eスポーツ事業強化へ
弊社はこのたび、eスポーツ事業において、英プレミアリーグ王者のマンチェスターシティーFCを保有・運営するシティー・フットボール・グループ(CFG)と提携することになりました。
2017年に初めてこの分野に進出しようと話した時のスタッフたちの反応は、今でも忘れられません。「eスポーツって何ですか?」と。テレビゲームで対戦してどちらが強いかを競うもの、といった程度の理解しかない状態でした。さらに「そもそもゲームをeスポーツと表現しているが、本当にこれはスポーツなのか?」という議論をしたほどです。
この議論への正解はまだなく、いろいろな意見があります。ですが当時私は「海外で大きな盛り上がりを見せているこのeスポーツというものがいずれ日本にも入ってくるはずだ」と仮説を立て、それだけの無謀な状態からeスポーツ事業を立ち上げることにしたのです。私もまだよく理解していないのに、スタッフたちの困惑はさらに深く明らかに半信半疑で本腰を入れて取り組んでいるとは言えないものでした。
全てが手探りで進む中で、プロサッカー同様に国際大会に出場するためにはチームとしての参加が必要ということを初めて知り、とりあえず体裁だけのチームを創立したのが18年でした。ただ、幸運だったのは日本で最強と言える選手たちと契約するご縁に恵まれたことで、競技上での結果を早い段階で出せたことです。
プロチームのノウハウを自社のチーム経営に
一方で、本連載で繰り返し述べてきていることですが、スポーツビジネスは「勝敗」に依存するものではなく、ビジネスというからには安定した経営が求められます。勝ったら人気が出て、負けたら人気がなくなる、という賭けをしているのではありません。チーム経営をしたことはないものの、弊社の本業はまさにスポーツビジネスであり、数え切れないほどのプロチームの経営を見たり、プロチームの中で働いたりしてきたことで、そのノウハウをわが社のチーム経営に注入しようとしました。
とはいえ、一朝一夕にビジネスの成果は出ず、赤字が続き、このまま続けても良いのかな、と私が弱気になったこともありました。しかし、選手たちやスタッフたちの成長や奮闘により、アジア王者に輝き、FIFA eClub World Cup Zone2で日本チームとして初優勝できるまでになったのです。これと並行し、パートナー企業として元日本代表の鈴木啓太氏が代表を務めるオーブ社さまや、ゲーミングPC「ガレリア」などで有名な大手企業、サードウェーブ社さまなどが参加してくださるなど、ビジネス面でも大きく飛躍することとなりました。
eスポーツ業界の
先駆者を目指していく
また、日本でのリーディングチームであり続けるために新しい取り組みも必要です。eスポーツチームでは初めてゼネラルマネジャーという役職を設置し、サッカー元日本代表選手として活躍し、引退後にはナイキジャパンにてマーケティングの経験も積んだ、山田卓也氏に就任してもらいました。
正直4年前にここまで来れるとは誰も思っていませんでした。ただ自分たちがeスポーツ業界の先駆者になるんだ、というビジョンに向けて試行錯誤を繰り返してきたことが国際的に認められたのは素直にうれしいですし、これを自信としてさらにこのチームを魅力あるものにしていきたいと考えておりますので、ぜひご声援のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
中村武彦
マサチューセッツ大学アマースト校スポーツマネジメント修士取得、2004年、MLS国際部入社。08年パンパシフィック選手権設立。09年FCバルセロナ国際部ディレクター就任。ISDE法科大学院国際スポーツ法修了。現東京大学社会戦略工学研究室共同研究員。FIFAマッチエージェント。リードオフ・スポーツ・マーケティングGMを経て、15年ブルー・ユナイテッド社創設。
スポーツマーケティング
ひとくち入門コラム⑪
スポーツマーケティングを活用する目 的の8つ目は、「独占契約による競合 他社との差別化」です。
好きなスポーツ試合を見ている時、 頻繁に登場するブランドのロゴや商品 があると思います。例えば日本代表とい えば「キリン」がメインスポンサーですの で、決して「アサヒ」や「バドワイザー」の 広告が試合中や日本代表関連のイベ ントに登場することはありません。これは 企業がスポンサーをする際に「独占排 他権」というものを付与されるからです。
言い換えるとスポンサーになる際に は企業をカテゴリー分けし、スポンサー の競合他社はスポンサーになれないよ うにすることで、そのスポンサーの価値 を高めることになります。そのため日本 代表はキリンのロゴしか身に着けないで すし、日本代表のファンもそれによって キリンへの印象が増します。このように スポンサードを考える企業は自社のイメ ージにそのスポーツチームが合致してい るかを検討し、スポンサーになった際に は競合他社はスポンサーになれないよ うに「独占排他権」をきちんと要求する ようにすることが大切です。