今年9月にアラ&
話題性ある抜てき
就任自体がエンタメに
新庄剛志氏が日本ハムの監督に就任してからいろいろと話題になっており、私も思わず注視しております。
まずは記者会見が話題を呼びました。監督就任会見が生中継されることが異例ですし、今までとは異なる媒体も登場し、既存のファン以外の層も取り込めるきっかけになったのではないかと感じました。
また、意図されてなのか、されずになのかはわかりませんが、彼のスター性と監督への抜てきの意外性そのものがコンテンツ化されており、新庄氏の考えなのか、日本ハム球団の考えなのか、はたまた誰かがこの台本を考案しているのかと思ってしまうほどに面白いと感じます。
試合以外の側面でも
注目されることが鍵
新型コロナウイルスでスポーツ団体は、試合以外に自分たちにある価値が何なのか、コンテンツ化できるものとして何があるのかを真剣に考えさせられました。その結果、今まではそれほどスポーツとは縁深くなかったプラットフォーム上に、試合以外のコンテンツが多く生まれました。
例えばアマゾンプライムにサッカーチームのマンチェスターシティーや、リーズユナイテッド、トッテナムホットスパーズのドキュメンタリー番組などができ、大人気を得たことは以前に本コラムでも紹介しました。
今回、新庄剛志氏自身が、注目を浴びるコンテンツとして再び登場し、日本ハムというチーム、そして今後、選手たちもそれによって注目を浴びることになるのではないかと期待しています。
実際マンチェスターシティーのことを今まで知らなかったアマゾンプライムユーザーが、ドキュメンタリーを見たことでファンになることが多かったのと同様に、いかに試合以外においてもチームと既存ファン・新規ファンとのタッチポイントを創生していくかが、肝要となります。
これは元イングランド代表で世界的なスターであったデビッド・ベッカム氏がメジャーリーグサッカー(MLS)のロサンゼルスギャラクシーに移籍をしてきた時も、同様の現象が起きました。彼がMLSに移籍してきた功績は、決してギャラクシーが試合で勝てるようになったということではありません(実際成績はさほど変化しませんでした)。むしろ今までMLSやギャラクシーのことを認知していなかった層が、ベッカム氏のおかげで関心を持つようになり、ファンになった人も多かったという点にあります。実際チケットの売り上げ、放映権の売り上げ、スポンサーの売り上げは如実に上昇したのです。
スポーツの真髄は
勝敗以外のエンタメ性
新庄氏が記者会見で話していたことですが、「優勝は狙いません」と断言したことには多くの人々が違和感を感じたようです。
ですが本コラムで何度も解説してきたように、「勝利」は狙って得られるものではなく、時の運が大きく左右するものであり、だからこそ楽しいものなのです。ベッカム氏も勝利を保証するために移籍してきたわけではないですし、それを保証することは誰にもできません。
スポーツビジネスのキーは勝敗以外のところで、どれだけファンの皆さんに楽しんでもらえるかがポイントなので、新庄氏が記者会見で話していたことは非常に的を得ているな、とビジネスの観点からスポーツに従事する者としては、非常に気持ちが良いものでした。そのような意味でも、日本ハムは最強の「補強」「人材獲得」をしたと思いますし、今季日本ハムに注目してみようかな、と私自身思わされました。
中村武彦
マサチューセッツ大学アマースト校スポーツマネジメント修士取得、2004年、MLS国際部入社。08年パンパシフィック選手権設立。09年FCバルセロナ国際部ディレクター就任。ISDE法科大学院国際スポーツ法修了。現東京大学社会戦略工学研究室共同研究員。FIFAマッチエージェント。リードオフ・スポーツ・マーケティングGMを経て、15年ブルー・ユナイテッド社創設。
スポーツマーケティング
ひとくち入門コラム⑨
アメリカではスポーツを利用したスポ ーツマーケティングが主流であり、マー ケティング予算の65%がスポーツマー ケティングに投下されています。そのス ポーツマーケティングを活用する方法が 10個あると言われる中で、今回は6個 目の「メディアバリューの創生」をご紹介 します。
マーケティングというと、基準に「視聴 率」や新聞や雑誌の「発行部数」など が用いられることが多いと思います。し かし、非常に曖昧なことが多いことも事 実です。例えば視聴率が高いとしても、 実際にどれほどの人がCMまできちんと 見ているのかなどは不明と言われます。
その中で、スポーツマーケティングは ファンが目を離さない状況が多く、広告 とは思われないように自然とCMを登場 させることが可能であり、より正確な「メ ディアバリュー」をスポーツチームと共に 創生することが可能です。
そのことから、一般の新聞や雑誌より もスポーツマーケティングを活用する企 業は多く存在しています。