スタンドアップコメディーを見に行こう!
マイク1本で客を笑わせるスタンドアップコメディー。その内容は時事ネタや政治・経済、人種、宗教からジョークや下ネタまで幅広い。今回は、ニューヨークで奮闘する日本のお笑い芸人・村本大輔さんや、コメディーショーのプロデューサーとして活躍するドリュー・ビークラーさんらに、ニューヨークのスタンドアップコメディーについて話を聞いた。
異なるジャンルで活躍する当地の日本人が、不定期交代で等身大の思いをつづる連載。
私の好きな匂いに金木犀の花の香りがある。宝塚時代に夜遅く稽古で疲れきってトコトコと下宿に帰る道すがら、ふっと香ってくる金木犀にとても癒された。今でも金木犀の香りを嗅ぐと宝塚で頑張っていた頃の自分を思い出す。
ウェストサイド・ストーリー
「ウェストサイド・ストーリー」の公演のために、ブロードウェーからサミー・ベイス氏が演出に来られた。人種間の問題がテーマなのでプエルトリカンのシャーク団を演じる人は体中に赤茶色のとの粉を塗った。一年ほど前に「シャンゴ」の公演で体中を赤茶色に塗った雪組の人たちから「毛穴に入ったとの粉はお風呂に入っても落ちない。シーツや着る物も赤茶になる」と言われたがその通りだった。
私は体育館のダンス場面ではジェット団役、屋上のアメリカのシーンからはシャーク団役で、体育館のシーンが終わると楽屋でとの粉を全身に塗ってアメリカのシーンに出る。終演後はもちろんお風呂へ直行。2回公演では2回終演後お風呂に入ってとの粉を洗い流す。先輩たちから言われたように、どんなにしっかり体を洗ってもシーツや服に薄い赤茶色が付いた。でも私たちはこの「ウェストサイド・ストーリー」で芸術祭賞を頂くことができた。賞は今もニューヨークのAmaterasu Zaのスタジオに掲げてある。
私は宝塚に入ることが最終目標ではなく、良い女優になるためには宝塚でさまざまな勉強をするのが一番だと思って入学試験を受けた。初舞台での鬼のストーンさんの振り付けや、ブロードウェーミュージカル「オクラホマ」と、2年後の「ウェストサイド・ストーリー」との出会いが、私のその後の道筋を付けてくれたように思える。
「オクラホマ」のデ・ラップさん、「ウェストサイド・ストーリー」のサミー・ベイスさん、お二人とももちろん通訳を通して演出された。私は宝塚に入るまで英語がそんなに得意ではなかったが、通訳の方が訳される前に、演出家が私たちにどう演じてほしいとおっしゃっているのかを理解して演じることができたので、「VERY GOOD!」と言ってもらえることがよくあった。この二人の演出家との体験が、今思えば私の渡米へのキッカケの一つになったのかも知れない。
春日野先生の影歌
春日野八千代先生と南悠子先生が月組に客演された柴田侑宏先生の作・演出の「纏(まとい)おけさ」という作品で、春日野先生が一人で恋人をしのんで踊る「佐渡おけさ」のソロの影歌(かげうた)を頂いた。影歌というのは舞台上で歌うのではなく、舞台下手の花道の横にあるコーラスボックスで舞台を見ながら歌うもの。幕開き前と終演後には、幹部部屋へ毎日挨拶に伺った。子供の頃から舞台を拝見して憧れた、神さまのような方の影歌を務めさせていただくだけで光栄の極みで毎回緊張した。
ある演出の先生から
劇団に入って3年目に、そのまま残るかどうかの話し合いを劇団とする。歌劇団から「そろそろご結婚を考えたらどうですか」と言われた人がいたとかいないとか(笑)。その頃からどんどん良い役も付きだし、やりがいが出てきた。
確か4年目のいつだったか、劇団の廊下ですれ違った理事の一人でもある演出の先生から、「タネ(私のニックネーム)、ゴメンな、わかってんねんけどな、堪忍してや!」と突然言われた。その時には何のことかわからなかったけど、私に来るはずの役が何かの事情で他の人に回ってしまっただろうくらいの想像はできた。
「演出家の先生の意見すら通らない何かがあるんだ」と、先生から優しい言葉を掛けていただいたことで、かえって今まで必死に頑張ってきた気持ちの壁が崩れた。自分でも訳のわからない涙がドーッと出た。
それからしばらくして、新人の歌唱力が問われる公演の主役が他の人に決まり、「アー、この事か!」と納得した。これがキッカケという訳ではないが、どうせ一生懸命やるのならこの狭い池の中だけでなく、もう少し広い海に出てみようかと思い始めたのがこの頃だった。今思い返してみると、努力が簡単に報われなかったことが私の負けず嫌いの血を沸き立たせ、歌、踊り、演技の稽古にますます精進するようになり、腕を磨くことができたと思う。
【次回予告】
次号は、柳家東三楼さんのエッセー第25回をお届けします。
Ako (あこ)
宝塚音楽学校在籍中に毎日音楽コンクール声楽部門4位入賞。
同校を主席卒業後、歌劇団月組(芸名=夏海陽子)で新人賞、歌唱賞など受賞。
退団後は、NHK歌唱コンクールに入賞。
藤間流紫派師範名執「藤間公紫」となる。
TV・舞台に出演後、ニューヨークに渡る。
2019年にはPrimary Stagesの「GOD SAID THIS」のまさこ役で、ルシル・ローテル主演女優賞にアジア人で初ノミネート。
18年に日米両語の非営利劇団「AMATERASU ZA」を立ち上げ、芸術監督を務める。来年放映予定のFXのTVシリーズ「SHOGUN」への出演も決定。
お知らせ
新作公演、準備中!
Akoさん率いる非営利劇団「AMATERASU ZA」は、2022年後半に新作舞台「忠臣蔵 四十七士」を上演予定です。現在、絶賛稽古中! 続報はウェブサイト(amaterasuza.org)を参照ください。また、同劇団はウェブサイトで寄付も受け付けています。
*こちらは記事&
マイク1本で客&
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