今年9月にアラ&
異なるジャンルで活躍する当地の日本人が、不定期交代で等身大の思いをつづる連載。
今回は、ニューヨークで活躍している方たちとの対談編、第2弾をお送りします。FCI「ニュースキャッチ!」でニュースキャスターを務める久下香織子さんが、女性として働くことについて語ってくれました。
Ako:この度はお忙しい中お時間を取っていただき、ありがとうございます。
久下:こちらこそ、お声を掛けていただきありがとうございます。
Ako:インタビューの達人に無謀にもインタビューを申し込みまして、冷や汗をかいております(笑)。まず、昨年3月にコロナ禍が始まり、私も出演中の「Suicide Forrest」の公演が突如中止になり、何が起こっているのか把握できずにいましたが、FCI「のニュースキャッチ」ですぐに久下さんが米国内の現状を伝えてくださり、とても助かりました。当時は大変なご苦労だったと思います。
久下:私たちにとっても突然のロックダウンでどうしようかと思いましたが、まず在米邦人への情報提供をしなければならないと考えました。有事の際の情報提供は日本語放送の責務です。その一心でスタッフ一同、力を合わせて放送を続けました。ただ、慣れないことで、私も自宅からスマートフォンで収録をしたりして、この体制で続けていけるのか不安を感じた時期もありました。そんなとき視聴者の方々から「放送を続けていただき助かっています」などのコメントをいただいたことが励みになり、半年間全員が自宅からの作業で配信を続けることができました。
Ako:ご自宅からの放送はご家族のご協力もいただいてのことだったと思います。では久下さんが、ニュースキャスターになられた経緯をお話いただけますか?
久下:この仕事を始めた経緯は、私は幼稚園でいじめを受けたのが原因で、父の勧めでインターナショナルスクールへ行くことになり、仕事は予備校の先生、翻訳業、それから女優業の仕事もしていたのですが、他の道を模索していた時、メンターにニュースキャスターを勧められました。NHKやフジテレビで報道の仕事をし、その頃日本で仕事をしていた日系アメリカ人のジャーナリストの主人と結婚して、ニューヨークへ参りました。
Ako:今回インタビューをさせていただくにあたり、あるシンポジウムで妊娠しても会社を退職せずにお仕事を続けられたお話を拝見したのですが。
久下:はい、主人の会社へご挨拶に行った時、彼の上司が女性で双子を妊娠されていたのです。大きなお腹で報道の現場を仕切っている姿に驚きました。私は妊娠しても仕事を続けている女性の姿を初めて目の当たりにし、主人に話したら「どうして妊娠したら退職しなければならないの?」と。産婦人科の先生も「妊娠は病気じゃないから、仕事を辞める必要はないでしょ。私も出産前日まで仕事をしました」と言われました。私もそんな言葉に勇気をもらい、出産ぎりぎりまで仕事を続け、産後3カ月で職場に戻りました。日本の会社ですと、やはり妊娠=退職という観念がまだあるので、勇気のある方たちが、ロールモデルとして妊娠しても仕事を続ける姿を若い後輩たちに見せることが必要だと思います。周りの方の観念も柔軟にしていただき、メディアなども協力して女性が妊娠して子供ができても仕事を続けていくことが普通になると良いですね。
Ako:コロナ禍で子育て中の若いお母さんたちに何か助言をいただけますか?
久下:コロナ禍も大変ですが、外国で子育てをするのは本当に大変です。正直私もボロボロでしたので、「大変なのはあなた一人じゃない。遠慮しないで助けを求めてください」って言ってあげたいですね。私は何でも一人で処理しようとする性格なのですが、もうこれ以上は無理、となった時にママ友に助けを求めたおかげで何とか乗り切ることができました。
Ako:今後の夢、また若い方たちに伝えたいことをお話しください。
久下:ジャーナリズムの仕事はずっと続けて行き、後は自分の心の栄養になることをしたいですね。困難なことがあっても、それがその後の糧に必ずなると信じています。また私たちが後に続く人たちに何を残せるかを考えながら生きていきたいです。
Ako:今日は楽しいお話をありがとうございました。
久下香織子
神奈川県横浜市出身。
FCIの「FCI News Catch!」キャスターで、「Weekly Catch!」を担当。
趣味はブログ執筆。
夫はジャーナリストのフレッド片山氏。
fujisankei.com
【次回予告】
次号は、柳家東三楼さんのエッセー第22回をお届けします。
Ako (あこ)
宝塚音楽学校在籍中に毎日音楽コンクール声楽部門4位入賞。
同校を主席卒業後、歌劇団月組(芸名=夏海陽子)で新人賞、歌唱賞など受賞。
退団後は、NHK歌唱コンクールに入賞。
藤間流紫派師範名執「藤間公紫」となる。
TV・舞台に出演後、ニューヨークに渡る。
2019年にはPrimary Stagesの「GOD SAID THIS」のまさこ役で、ルシル・ローテル主演女優賞にアジア人で初ノミネート。
18年に日米両語の非営利劇団「AMATERASU ZA」を立ち上げ、芸術監督を務める。来年放映予定のFXのTVシリーズ「SHOGUN」への出演も決定。
お知らせ
新作公演、準備中!
Akoさん率いる非営利劇団「AMATERASU ZA」は、2022年後半に新作舞台「忠臣蔵 四十七士」を上演予定です。現在、絶賛稽古中! 続報はウェブサイト(amaterasuza.org)を参照ください。また、同劇団はウェブサイトで寄付も受け付けています。