ニューヨーク仕事人名鑑

ニューヨーク仕事人名鑑 #28 初島美香さん

困難に立ち向かい、今を全力で生きる日本人ビジネスパーソン。名刺交換しただけでは見えてこない、彼らの「仕事の流儀」を取材します。

※これまでのビジネスインタビューのアーカイブは、nyjapion.comで読めます。


ブルックリン区ボーラムヒルでローカルに話題のおにぎり屋、その名も「ライス&ミソ」のオーナーを務めるのが初島美香さんだ。その端正な容姿でもともとはモデルとして活動し、ロンドンやパリのファッションショー、「VOGUEイタリア」にも出演する中、ニューヨークのエージェントからスカウトされたことを機に1999年に来米したそう。

華やかなファッションモデルから飲食店オーナーに転身したのは、シングルマザーになったことがきっかけだった。2012年に初の飲食業を自営でスタートした当時を、「生活を支えるために本当に死に物狂いでしたね」と初島さん。

子供を思いやる親心に満ちた母の味

初島さんによれば、当時ニューヨークの街には子供に安心して食べさせたいと思える日本の家庭の味がなかった。「それであれば自分でビジネスにしよう」とひらめいたのが同店の始まりだ。当初は、ブルックリンの屋外フードマーケット「スモーガスバーグ」などに出店する移動型フードベンダーとして運営。固定客がついてきたことで2017年に常設店を開店すると、リピーターが増え、今ではランチ時は店の前に行列ができるほどの人気店に成長した。

おにぎりと味噌汁に加え、サーモンの西京焼き、季節の野菜を取り入れたけんちん汁など、日本人になじみ深いメニューをそろえる同店は、「地元に根付いた、いわゆる日本の『ほか弁』がコンセプトです」と言うが、材料にはオーガニック玄米やグルテンフリーの調味料など上質な無添加素材にこだわり抜き、他とは一線を画している。

素材に妥協がないのは、幼少期から有機野菜など食材にこだわってくれた自身の「母の味」が初島さんの体の基盤となっているからだろう。手間暇かかる玄米を提供するのも、初島さん自身が玄米のおかげで体調や母乳の質が改善されたという経験に基づいている。

そんな店の要となるキッチンを開店当初から任されているのは、日本人のお母さんたちだ。日本人同士だからこそ、ちょうど良いおにぎりの塩加減や煮物の味付けを言葉で伝えずとも知っている。それは初島さんにとって最も大切で、「子供にご飯を作るときに、塩分が多くなりすぎないように気を付けますよね。そんな思いでお客さまの体も気遣うのが私たちのポリシーです」とほほ笑む。

「日本語学園」がつなぐコミュニティー

5月にはローワーマンハッタンに2店舗目をオープンし、ますます忙しさが増す初島さんだが、事業立ち上げから10年が経ち、ようやく一呼吸置けるようになったともいう。

「起業当初は娘とあまり過ごしてあげられなかった。だから今は仕事のペースをスローダウンして、4歳になる次女となるべく一緒に過ごすようにしています」。

ニューヨークで生まれ育った子供が日本人のアイデンティティーを保ち続けるのは容易でないが、地元の「ブルックリン日本語学園」のおかげで子供の日本語教育はもちろん、日本人ママや先生との輪も広がったと初島さんは感謝する。学園にはおにぎりや味噌汁を寄付するなどサポートし合う形で交流しているといい、母の強さと信念で未来を切り開いてきた初島さんのおいしいご飯は、今後もますます地元の絆を深める存在になっていくのだろう。

 

 

 

 

初島美香さん
「RICE & MISO」オーナー

来米年: 1999年
出身地: 東京都
好きなもの・こと: サーフィン
特技:寝ること

大学在籍中からモデルとして活躍。
卒業後、1996年に渡英しコレクションや雑誌などで活躍。
その後活動の拠点をニューヨークに移し、1999年に来米。
2017年にブルックリンに有機玄米を使ったおにぎり専門店「RICE & MISO」をオープン。
11歳長女と4歳次女の2児の母。
Instagram: @riceandmisoeveryday

 

 

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