ハートに刺さるニュース解説

アフガニスタン政府崩壊

アフガニスタン米軍撤退
勢力復活のタリバン

瓦礫と熱に覆われていたグラウンドゼロは20年後、様変わりしている

 

米国が同時多発テロに見舞われた2001年9月11日から今年は20年を迎える。その直前である8月15日に、アフガニスタンの武装勢力タリバンが同国の首都カブールを制圧。米国と同盟国が支援していたアフガニスタン政府は崩壊し、アシュラフ・ガニー大統領が国外に脱出した。

アフガニスタンに駐留していた米軍とNATO(北大西洋条約機構)軍の撤退が8月31日が期日とされていたため、抑え込んだと思っていたタリバンが急に2000年当時の勢力を取り戻した。これで、時計の針が9・11が起きる前まで戻されてしまったことになる。分かりにくいアフガニスタン情勢だが、9・11との関係として、解説してみよう。

首都制圧のタリバン
アルカイダとの関係

まず理解すべきは、今回アフガニスタンで政権を作るであろうタリバンと、国際テロ組織アルカイダの関係である。ニューヨークの世界貿易センター2棟を崩壊させたアルカイダは、アフガニスタンで生まれた。1979年にアフガニスタンに侵攻したソ連(当時)をジハード(聖戦)として駆逐するため、中東やアジアから集まった義勇兵が母体である。89年にソ連が撤退すると、アルカイダとして発足し、新たなジハードを求め、世界に散った。96年にアルカイダがアフガニスタンに戻った際、国土をほぼ掌握していたのがタリバンで、2つの勢力は協力関係となる。

一方で、アルカイダの指導者オサマ・ビンラディンは、ソ連との戦争で焦土となったアフガニスタンに対する十分な救済を西側諸国がしなかったと考え、米国をジハードの敵として宣戦布告し、これがいくつものテロ事件を経て、9・11につながっていった。

9・11の攻撃の後、米国のブッシュ政権がアフガニスタンを攻撃したのは、タリバンが支配していたアフガニスタンにアルカイダをかくまったというのが大義名分だった。つまり、タリバンは、アフガニスタンという宿にいた客人アルカイダのために、米国・同盟国と20年の長きに渡り、戦うことになった。

タリバンにとっては、迷惑な話だが、2016年から進められていたタリバン、アフガニスタン政府、米国の3者の和平交渉では、タリバンがアルカイダと縁を切るという項目が常に焦点となってきた。

今後正式な関係を
打ち出す可能性も

今回の米軍撤退の根拠となったのは、20年2月、トランプ政権下でマイク・ポンペオ前国務長官とタリバンの間で交わされた和平合意である。「米国や同盟国の安全保障上の脅威となるグループ・個人と協力しない」という文言が合意に含まれている。

そして過去数週間にわたり、私たちが目撃した混乱は、米国と同盟国の情報機関が知りえなかった加速度で、タリバンはアフガニスタンを掌握したために起きた。

米軍の撤退は、20年の和平合意に基づくものであったとすれば、タリバンはアルカイダと絶縁したのだろうか。日本エネルギー経済研究所理事・中東研究センター長の保坂修司氏が日経ビジネスに寄稿した記事によると、それはかなり微妙だという。アフリカや中東、インド亜大陸のアルカイダの支部が相次いで、タリバンのアフガニスタン掌握に祝辞を送っているためだ。アルカイダの広報組織は、私たちの感覚とは異なり、かなりの時間差で声明を出すのはよく知られている。今後、タリバンとの正式な関係を打ち出してくる可能性もあるだろう。

テロの可能性
諸外国への影響は

9・11から20年を迎えるにあたり、アフガニスタンにおけるタリバン、アルカイダ、そして米国・同盟国の関係をきちんと抑えておくことが必要だ。今後、タリバン政権下で、アフガニスタン市民の生活や国家経済が改善されていくのか、見守らなくてはならない。万が一、アルカイダが再び米国や西側諸国に宣戦布告をした場合、日本を含めた米国同盟・友好の国や地域がテロの対象になる可能性があるからだ。

英BBCニュースによると、英野党・労働党のリサ・ナンディー影の外相は、アフガニスタン情勢の影響で英国の治安がかつてより脅かされる可能性が高いと述べた。こうした危機感を私たちも再び、持たなければならない時が20年を経て訪れている。

 

 

 

 

 

津山恵子
ジャーナリスト。
「アエラ」などに、ニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。
フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに単独インタビュー。
近書に「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

 

 

 

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