プロスポーツから見る経営学

選手のコンディション

隔離と制限の環境下
チームで越える強さ

東京2020オリンピックが無事に終了し、次はパラリンピックです。私自身東京に行くことはできなかったのですが、代わりに宮崎に行ってきました。アメリカサッカー女子代表、ボクシング代表6カ国(アメリカ、ドイツ、フランス、オランダ、オーストラリア、アイルランド)の事前キャンプのマネジメントをさせていただきました。

コロナ禍でいろいろな制限が存在します。もちろんアメリカから来た私は最初に2週間の隔離を実施し、晴れて公共移動手段を利用できるようになってから宮崎入りをしました。

上記7つのチームはホテルにて外界との接触をシャットダウンされた中での事前キャンプとなり、選手たちは文字通り自分の部屋、食堂、そしてトレーニング以外は移動が許されていませんでした。

外に散歩に行くこともジョギングに行くことも事前の申請なくしてできません。気軽に海岸に行くこともコンビニに行くこともままなりませんでした。ホテルの中でも一般客との接触を回避するために厳戒な導線が敷かれ、その中でしか歩くことが許されていませんでした。恐らく今回ほどコンディションを維持、もしくは上昇させるのが困難なオリンピックはなかったと思います。

 

過酷なコロナ禍の環境の中で練習に励んだUSサッカー女子代表選手たち過酷なコロナ禍の環境の中で練習に励んだUSサッカー女子代表選手たち

 

選手のコンディションを支えるスタッフたち

そのような過酷な環境下においても選手たちが黙々とコンディション作りに励む姿は印象的でした。コンディションを一言で「体調が良い」などで片付けられないと改めて現場で感じました。特に窓の外を見ればゴルフ場やビーチが広がるホテルの広大な敷地や、十何時間もかけて遥々訪れた日本の風景を観ることもできない中で、メンタル面も維持していけないといけません。

食事も毎日多少の変化があるものの大きな差はなく、スタッフの皆さんがいかに選手たちに気分転換をさせてあげるか、いかにリフレッシュさせてあげたり、余計な負担がかからないようにと試行錯誤する姿が素晴らしく、そこにいる全員にメダルを獲得して欲しいと思いました。

われわれもホテル、地元行政と話し合い、宮崎神宮に選手たちが滞在しているホテルにまで来ていただくことで少しでも日本の文化に触れてもらう催し物を行ったり、地元名産を使った屋外バーベキューなどを実施したりしました。

このように試合に臨むのは選手だけではなく、「チーム」として行うものだと改めて3週間私たちも宮崎で隔離されながら痛感しました。

異国での孤独な戦いに見たスポーツの強さ

国際試合は時差や気候の変化への対応だけではなく、文字通り異国での孤独な戦いを強いられることになり、自分の慣れ親しんだホームと同様の実力を発揮することは容易なことではありません。特に今回のオリンピックは追い討ちをかけるように無観客での開催であり、スポーツにおける最も大きな力となるファンの後押しもありません。

ファン、フロント、そして選手が一緒になって勝利を得るスポーツにおいて、今回ほど「隔離」された海外から来ている選手たちを見て、改めてスポーツにおける「強さ」というものを感じた次第です。

 

 

中村武彦

マサチューセッツ大学アマースト校スポーツマネジメント修士取得、2004年、MLS国際部入社。08年パンパシフィック選手権設立。09年FCバルセロナ国際部ディレクター就任。ISDE法科大学院国際スポーツ法修了。現東京大学社会戦略工学研究室共同研究員。FIFAマッチエージェント。リードオフ・スポーツ・マーケティングGMを経て、15年ブルー・ユナイテッド社創設。

 

 

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