NY話題のビジネスパーソン
1年の中で2月は
困難に立ち向かい、今を全力で生きる日本人ビジネスパーソン。名刺交換しただけでは見えてこない、彼らの「仕事の流儀」を取材します。
※これまでのビジネスインタビューのアーカイブは、nyjapion.comで読めます。
「鈴木ファーム」といえば、ニューヨーク近郊で手に入る日本野菜として聞き覚えがある人も多いだろう。御年74歳になる鈴木清信さんは、東京ドーム5個分にもなる58エーカーの広大な野菜農園「鈴木ファーム」を今年2月に「フーズスタイルUSA」に事業譲渡するまで、38年もの間一人で切り盛りしてきた。
東海岸では唯一、また全米では最大規模となる日本野菜農園の農家として、作付けから事務作業まで全てをこなしてきたが、本人は「農業高校時代は、将来絶対やりたくない仕事だと思っていました」と言うほどに、野菜を育てるのは農業でも最も重労働な仕事なのだそう。
日本人としての意地を支えに
鈴木さんがひよこの鑑別士として来米した1974年当時、米国には野菜が豊富になかった。ケールやタマネギ、ジャガイモなど数種しかなく、そこで鈴木さんは「ないのであれば自分で作ろう」と一念発起。農業高校で実習した経験から、「どうせ苦労するのであればおいしい野菜を育てよう」と、日本の野菜に目を付けたのが始まりだった。
しかし、試行錯誤しながら独自に農業を手掛けていく中で、厳しい困難が鈴木さんを襲ったそう。米国政府による農業政策により、それまで貸借していた農地から突然撤収しなくてはならなくなってしまった。多くの農地が政府に没収される中、現在の場所を探し出し、2003年に移転。3、4年かけて栽培していた農作物を一人で全て移動させたという。「他に土地もなく、ここを購入せざるを得なかったんです。借金を抱えるのは大変でしたが、でも日本人としての意地もあり、諦めたくなかった」と鈴木さん。もし鈴木さんがそこで諦めていたら、今こうしてわれわれは新鮮な日本野菜をニューヨークで口にすることはできていないかもしれない。
また、気候の異なるアメリカの土地で日本野菜を育てることは容易ではなく、何度も失敗を重ねながら長年の経験をもとに上質な野菜の栽培方法を習得していった。効率や手間暇を考えれば、機械を導入する方が断然合理的だが、肉厚で味の良い野菜を育てるためにはやはり人の手で育てることが欠かせないという。「収穫のその日のために数年かけて準備する。そういう意味ではオリンピック選手と同じ感覚かもしれませんね」とほほ笑む鈴木さん。
野菜を食べてもらえるよう思いを込めて
コロナ禍ではグロッサリーストアに行けない顧客からの直販オーダーも増えたそう。「どうしても野菜は肉や魚の味には負けてしまう。でもそこで少しでも野菜をおいしく食べてもらいたい。その一心でここまでやってこれました」。安心安全をモットーにした無農薬へのこだわりや、これまで培ってきた技術は次の世代へ継承していきたいという。
事業譲渡したことによって、ようやく自分の時間を持てるようになった鈴木さん。38年間休みなしで働いてきたからこそ初めは戸惑いつつも、今はこれまで手を掛けられなかった家のDIYを楽しんでいるそう。「一度走り始めたら最後まで走り抜く。私は猪年ですから。まだまだ現役で頑張らないといけないですね」と語る姿は、まさに忍耐強い古き良き日本人のあるべき姿のようにも感じられた。
鈴木清信さん
「鈴木ファーム」品質・技術責任者
来米年: 1974年
出身地: 愛知県
好きなもの・こと: DIY
特技: スペイン語
愛知県出身。
ひよこの鑑別士の資格を取得し、1974年に来米。
83年、デラウェア州に日本野菜の農園「鈴木ファーム」を設立。
年間30種以上の日本野菜を栽培し、ニューヨークやニュージャージー州、ワシントンDCなどへ供給。
2021年に同園を「フーズスタイルUSA」に事業譲渡。
suzukifarm-usa.com
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ジョシュ・M・&
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