Akoの真っすぐ俳優道inニューヨーク

Akoの真っすぐ俳優道inニューヨーク 第4回

異なるジャンルで活躍する当地の日本人が、不定期交代で等身大の思いをつづる連載。


2回にわたって、在ニューヨーク日本国総領事館の山野内勘二大使との対談をお届けしましたが、今号から第1回目のエッセーの続きをお送りします。

宝塚受験準備

小学校高学年になり、中学受験準備で吉祥寺まで通う時間がなくなり、家の隣の花柳流の先生に付き日本舞踊のお稽古を始めた。小学校5年生の頃には将来私は女優になると決めて、宝塚に入ればいろいろな事が学べると思い、受験を決意した。

中学に入ると同時に、宝塚の東京の受験場だった東宝芸能学校の週末クラスに入り、同時にピアノと声楽の個人レッスンを受け始めた。母は私のレッスン費を捻出するため、一応軌道に乗ったYシャツの注文販売を父に任せ、不動産の仕事を始めた。

その頃に森光子さんの少女時代の役でTVデビュー。中学校の図書室の本もほとんど網羅、と同時に近視がますます進んだ。一日中本が読めるから本屋になるのもありかななどと考えたこともあった。その頃宝塚のプログラムに上演脚本が載っていた。家に帰るとしぐさなどほとんど覚えていて、初めから終わりまで自分一人で演じた。あの素晴らしい記憶能力は一体どこへ行ってしまったのか……。嗚呼。

 

宝塚音楽学校入学式の母と私

 

宝塚は今や世界の宝塚

宝塚音楽学校の入試発表と東京女学館の高校の入学式が同じ日で、私は父と入学式に、母が宝塚の発表を見に行き、母からの電話で宝塚音楽学校への合格を知った。両親は即合格するとは思っていなかったらしく、当時東京女学館小学校の校長だった大多和顯先生に相談に行った。先生いわく「東京女学館は日本では良く知られた名門校だが、宝塚は今や世界の宝塚だ。まして、芸術芸能は若い時に始める方が伸びる。せっかく合格したのだから行かせなさい」。まさに鶴の一声!

歌劇団の寮に住む予科生に許された柳行李(こうり)1つに荷物を詰めて送り出し、母と共にやはり東京から入学した他の3人の同期生とお母さまたちと宝塚ホテルに到着。歌劇団寮に集合して寮の規定を伺い、これから過ごす部屋を見せていただき、寮長先生にご挨拶をする。

「今日からでも寮に住んでもいいですよ」と言われ、私は即座に手をあげた。「入学式の翌日からはすぐに音楽学校のカリキュラムが始まるので、少しでも早く慣れておきたい」と言って、あきれる母をホテルに置いて、その晩から一人で寮暮らしを始めた。この時母は、初めて「ああ、私の手から巣立った」と感じたそうだ。

ピアノ争奪戦

歌劇団の寮には、ほとんど壊れかけた古いピアノがあるだけで、ほとんどピアノの練習には使えなかった。それで朝早く起きて寮の朝食ができるのを待たず、音楽学校の近くのパン屋さんでパンと牛乳を買い音楽学校の校門が開くのを待った。いくつかあるピアノの1つを確保してピアノと歌の練習を始める。でも本科生が来られると、すぐ譲らなければならないからそれまでの短い時間に集中して練習した。中には「ええよ、続けて」と言ってくださる優しい本科生もいらした。

歌劇寮の生活 

寮のお風呂は、1つの大きな風呂場で、下級生は排水口に近い所で体を洗う。私は体の発達が遅かったので、後で上級生に、「あんたがお風呂に入ってきた時な、子供が入ってきたと思ったんよ」と言われた。他の同期生は皆4人部屋だったが、私は他の同期生と2人部屋だった。音楽学校の1学期目の試験が終わると、全員荷物を実家へ送り返し、寮をいったん引き上げなければならない。というのは落第になり寮へ戻れない生徒が出るからである。東京の家での夏休み中に成績表が送られて来て、私は首席になった。

2学期前に寮へ戻ると、部屋は変わっていたがまたなぜか同じ同期生と2人部屋だった。2学期が始まると、学校の席順が新しい成績順に変更になっている。期末試験後ごとに成績順に並び直すのは、卒業するまでどころか歌劇団に入っても続いた。

首席になるとその学期は同期生全体の責任者になる。上級生からの注意も代表で受けそれを同期生に伝え、規則に反する人には注意をしなければならない。最年少で入学した当時まだ14歳だった小娘に20歳近くの同期生が注意を受けること自体面白いはずがなく、針のむしろであった。(続く)

【次回予告】

次号は、柳家東三楼さんのエッセー第13回をお届けします。

 

 

 

 

 

 

Ako (あこ)

宝塚音楽学校在籍中に毎日音楽コンクール声楽部門4位入賞。
同校を主席卒業後、歌劇団月組(芸名=夏海陽子)で新人賞、歌唱賞など受賞。
退団後は、NHK歌唱コンクールに入賞。
藤間流紫派師範名執「藤間公紫」となる。
TV・舞台に出演後、ニューヨークに渡る。
2019年にはPrimary Stagesの「GOD SAID THIS」のまさこ役で、ルシル・ローテル主演女優賞にアジア人で初ノミネート。
18年に日米両語の非営利劇団「AMATERASU ZA」を立ち上げ、芸術監督を務める。
ako-actress.com

 

 

お知らせ
新作公演、準備中!

Akoさん率いる非営利劇団「AMATERASU ZA」は、2021年12月に新作舞台「忠臣蔵 四十七士」を上演予定です。現在、絶賛稽古中! 続報はウェブサイト(amaterasuza.org)を参照ください。また、同劇団はウェブサイトで寄付も受け付けています。

 

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