アメリカに落語の花を咲かせましょう

〜第7回〜 佐々木政談

異なるジャンルで活躍する当地の日本人が、不定期交代で等身大の思いをつづる連載。


このたび、RAKUGO Association of America(落語をRAKUGOへ事務局)という団体を結成いたしました。日本の伝統文化である落語をRAKUGOとして広める、また落語を通して日本の文化を広げていくことを目的としています。

第一回目のイベントとして、6月5日午後7時より、世界の子供たちを中心に、世界の皆さまに無料のオンラインにて英語、日本語で落語をお届けします。

僕がアメリカ、ニューヨークに移住した理由は二つあります。表現者としてさまざまなアーティストとの関わりの中で自分の芸を磨くこと、そしてRAKUGOを楽しむお客様、または演じる後継者を増やしていくこと、この二つを目指して移り住みました。

僕の芸名の一部を取って「ざぶとん亭一門」として、落語を教えさせていただいております。ニューヨークの役者さんやアメリカ、フランスに住む子供たち、そしてハーバード大学にはオチケン、落語研究会もあり現在25人くらい門下生がいます。落語の修業をする本当のお弟子さんとは違いますが、「かわいいお弟子さん」として日本語で教えています。現在アメリカ各地よりアメリカ人の方からも問い合わせをいただき、英語クラスも検討中です。「目指せカーネギーホール」の合言葉で、日々お稽古をしております。

 

 

海外の子供たちに
日本に触れてもらう

「佐々木政談」という古典落語があります。子供がお奉行様に意見を申し上げ、取り立てられ出世をするというのがごく簡単な筋です。栴檀(せんだん)は双葉より芳しという「子ほめ」という噺(はなし)に出るセリフもありますが、私たちの団体が子供の無料オンラインクラスを作り力を入れているのは、海外に住む子供に早いうちから日本語を母国語の一つとして楽しんでもらう、文化を深く知ってもらうことを目的にしています。

ハーバード大学の落研の部長だった「ざぶとん亭お空」さんは数カ国語を使い、お母さまが関西出身ですので標準語と関西弁まで使い分けます。フロリダ州で育った彼女は子供の頃からお母さんの好きだった落語に触れ、日本の大学の落研のように大学に落語のクラブを作りたいとずっと思っていたようで、僕に話が来ました。彼女は今日本で建築家として働いていますが、日本の文化に触れて育ったので、就職はアメリカではなく、日本を選んだのかもしれません。

小学生の弟子も
世界デビュー

子供たちのクラスでは月に1回くらいの頻度で発表会をしていますが、短い時間でどんどん落語を覚えて演じています。中には僕が教えていない演目も自分で覚えて稽古して発表する子もいますし、自分で小噺を作ったりアレンジしたりして挑戦する子もいます。普段の稽古もネタの選定も親子の会話の一部になっているようで、僕の狙いそのものが実現できていてうれしいです。

その成果は今回のイベントで皆さまにご披露できるかと思います。と言いますのも、「ざぶとん亭奏歌」ちゃんという小学生のかわいいお弟子さんが5日の会で僕の前座として世界デビューします! 演目は寿限無(じゅげむ)。第1回の発表会で見事に寿限無を演じ、笑いの間も表情もしっかり落語で、僕はとても驚きました。素直に邪念なく、台本通りにやって面白い、僕は柳家で学んだ「素直」という五代目柳家小さんの信念を改めて考え直すことになりました。末恐ろしいとはまさにその通りで、このままいくと数年後に僕は抜かされてしまうのではないか、と思うくらいに頑張っています。

他のかわいいお弟子さんも負けていません。彼女に触発されるように2回目の発表会ではみんな「時そば」という大人、プロがやっても難しいネタに挑戦しました。小学生未満の子たちもしっかりと小噺に挑んでいく。落語は一対一の稽古が基本ですが、いまアメリカで、フランスで、子供同士の落語の火花が散っています。

いつか本当に大きな会場で落語コンテストができる、そう思って僕たちの団体は進んでいきます。

【次回予告】

次号は、柳家東三楼さんのエッセー第8回をお届けします。

 

柳家東三楼
(やなぎや・とうざぶろう)

東京都出身。
1999年に三代目・柳家権太楼に入門。
2014年3月に真打昇進、三代目・東三楼を襲名した。
16年に第71回文化庁芸術祭新人賞を受賞。
19年夏よりクイーンズ在住。
演出家、脚本家、俳優、大学教員(東亜大学芸術学部客員准教授)としても活動。
紋は丸に三つのくくり猿。
出囃子は「靭(うつぼ)猿」。
現在、オンラインでの全米公演ツアーを敢行中。
落語の無料オンラインレッスンあり、詳細はウェブサイトへ。
zabu.site

 

 

お知らせ
全米落語協会、発足!

日本の落語を、世界の「RAKUGO」へ! 東三楼さんの取り組みがいよいよスタートします。

4月1日より、クラウドファンディングも開始。支援に興味がある人は、メール(us.rakugo@gmail.com)で東三楼さんにご連絡ください。

 

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