お洒落を楽しむ秋 ニューヨークのメンズファッション
秋の気配が漂ってきた今日この頃、ワードローブも夏物から秋物へと入れ替える時期。本号ではニューヨークのメンズファッション情報を紹介。季節の変わり目のお買い物に役に立つトレンドや最旬メンズブランドをチェックしよう。
異なるジャンルで活躍する当地の日本人が、不定期交代で等身大の思いをつづる連載。
旅先でふと立ち寄った峠の茶屋。主人の出してくれた麦湯を飲みながら世間話をしている古物商の男。今回の旅ではいい掘り出し物が見つからなかった。残念な思いで江戸へ帰ろうと愚痴っている、その目線が猫の食べているおまんまの皿へ。なんとそれは絵高麗(えごうらい)の見事な茶碗。いい物見いつけた、と店主に猫をもらう話を持ちかけて、猫を出しに皿を手に入れ大もうけ、となれば落語にはなりませんで、その結びは、ぜひ皆さん聞いてみてください。
安く買って高く売る
ちょくちょくさまざまな大学からオープン講座や日本語の授業の一環で公演をご依頼いただいております。日本語の教科書に紹介されていることもあり「猫の皿」をパワーポイントで英字幕を出しつつ演じます。古物商は、噺(はなし)の中では端師と呼ばれていますが、地方で掘り出し物を見つけては江戸に持ち帰り、高く売り払うという商売です。これは足を使って良い品を探し、さまざまな独自情報を得て、交渉に挑む、なかなか面白い商売ですね。商売の基本、安く買って高く売る、お金儲けの原型が見られます。
今はネットでの情報が溢れ、オークションやECも進んでいますので、掘り出し物は以前よりは見つけにくいかもしれませんが、ビンテージの車やレコード、ギターなどの楽器など、アメリカのそこかしこにお宝が眠っているようにも感じ、ついつい他人の所有物をジロジロと見てしまいます。
日本で出会ったバックパッカーのドイツ人青年は、世界一周の旅の途中でした。その彼が資金を捻出した方法がなんと、猫の皿方式でした。というのも、彼がネットサーフィンをしていた時のこと、彼は南米で古いモデルでドイツではビンテージで高値で取引されているフォルクスワーゲンを発見します。そして彼はすぐさま飛行機で現地に飛び車体を見つけ出し、安く交渉し、ドイツで売り、500万円近い利益を得て世界一周の旅に出ているとのことでした。夢というか希望のある話ですし、彼の行動力に脱帽です。ニューヨークで時々見かけるボロボロの車もひょっとしたら、と思ってしまいます。
掘り出し物を見つける楽しみ
僕がアメリカに住んで楽しいな、と感じるのは散歩をしている時に大きな家の前に置いてあるフリースタッフを見るときです。ガレージの前に大きな籠やらに本やら服やら、椅子やらテーブルといった家具や電気機器が無料で置いてありますね。先日もついつい立ち止まり見ていると、なんと素敵なシャンデリア風の卓上ライトがありました。電球が三つあり、これは三つのうち一つか二つはつかないから出してあるんだろうな、でも二つついたら明るくてリビングに良いかも、と持ち帰りました。
白昼、シャンデリアを持って歩く不思議な気持ちも抱えながら帰宅し、コードをさしてみると案の定二つしかつきません。そこで電球を入れ替えてみると全部のソケットは機能しているのがわかりました。そこで近所の雑貨で同じ大きさの電球を三つ買い付け替えて、雑巾と綿棒で隅々まで掃除しました。
終わってみるとどうでしょう。見違えるようにキラキラと光を放ち、アンティークなライトに変身したではありませんか。ところどころビーズが欠けているのはご愛嬌で、暗い部屋でぼんやりと雰囲気を楽しむ分には問題ありません。ソファのそばで読書灯としてもいけます。「これはひょっとしたら売れるのでは」という馬鹿な考えは捨てて、毎日灯りを楽しんでいますが、リサイクル業者や古物商の気持ちが少しわかった気がしました。
時々飯を食わせてガソリンやりゃ、落語やるだろ、という感じのノーギャラオファーが来ますが、落語の元手は僕のご飯代だけではありません。その芸をやるまでに肥やしとして遊んだ多大なる費用が。落語はこう見えて、高く買って安く売っているように思えなくもない今日この頃です。
【次回予告】
次号は、柳家東三楼さんのエッセー第5回をお届けします。
柳家東三楼
(やなぎや・とうざぶろう)
東京都出身。
1999年に三代目・柳家権太楼に入門。
2014年3月に真打昇進、三代目・東三楼を襲名した。
16年に第71回文化庁芸術祭新人賞を受賞。
19年夏よりクイーンズ在住。
演出家、脚本家、俳優、大学教員(東亜大学芸術学部客員准教授)としても活動。
紋は丸に三つのくくり猿。
出囃子は「靭(うつぼ)猿」。
現在、オンラインでの全米公演ツアーを敢行中。
落語の無料オンラインレッスンあり、詳細はウェブサイトへ。
zabu.site
お知らせ
全米落語協会、発足!
日本の落語を、世界の「RAKUGO」へ! 東三楼さんの取り組みがいよいよスタートします。
4月1日より、クラウドファンディングも開始。支援に興味がある人は、メール(us.rakugo@gmail.com)で東三楼さんにご連絡ください。
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紅茶をめぐる冒険
初秋の訪れとともに飲みたくなるのがポットで淹れた紅茶。茶葉やブレンドによって異なる香りと味は、私たちをくつろぎと恍惚の世界に誘い、またある時は懐かしい記憶を辿る道標にもなってくれる。極上の一杯を求めて、ニューヨーク紅茶めぐりの旅、はじまりはじまり。
進化し続けるトイレの世界
日本が世界に誇る「おもてなし」文化の象徴といえるトイレ。高品質なだけでなく、利便性の面でも多種多様な機能を備え進化し続ける日本のトイレ製品。日米のトイレ事情の違いなど、今号ではさまざまな角度からトイレについて学んでみよう。
今気になるヘアサロン&大人の男が通う新・バーバー
コロナ禍で指名のスタイリストが帰国したり、お店がクローズしたりと何かとアップデートが必要になるヘアサロン事情。髪質やニュアンスの違いを理解してくれるのはやっぱり日系のサロンという人も多いだろう。髪の悩みやイメージチェンジなど、顧客のさまざまなリクエストに応えてくれるヘアサロンを特集。