ニューヨーク仕事人名鑑 #11 釣島健太郎さん

困難に立ち向かい、今を全力で生きる日本人ビジネスパーソン。名刺交換しただけでは見えてこない、彼らの「仕事の流儀」を取材します。

※これまでのビジネスインタビューのアーカイブは、nyjapion.comで読めます。


釣島健太郎さんがニューヨークに赴任してきた2000年中頃。ラーメン、おまかせ、居酒屋という言葉を知るニューヨーカーはほとんどいなかった。

「『おまかせ』メニューについて、飲食業関係者向けのセミナーをしたとき、『なんでそんな(どの店もやっていないようなことを)セミナーにするのですか』と聞かれました」と釣島さん。「今では『Omakase』という言葉に、『高級』というイメージが定着するまでになりましたよね。本来の日本語の意味とは異なりますが」

育ってきた環境に逆らわず歩んできた

1〜4歳と中学・高校時代をニューヨークで過ごした釣島さん。2カ国のバックグラウンドを背負って育ったこともあり、日米の文化の架け橋となる仕事がしたいと思っていた。共同貿易社に入社し、ニューヨークが赴任先になったのは偶然だ。

当地の現場責任者ともいえる上級副社長を経て、かねてより夢だった起業のため、おととしに退職したが、その決断も半年遅れていたら新型コロナの感染被害が直撃し、今とは異なる生活を送っていたことだろう。大企業から独立して、「ビジネスに対する見方」が変わったという。

「これまでは先代が築き上げたビジネスモデルに乗って、さまざまな戦略を立ててきましたが、一から1人で始めると、『どういうビジネスモデルなら出資してもらえるか』と考える必要があります。いくら社会的意義が強い企画でも、クライアントに刺さらない内容だと意味がない」

それでも、共同貿易時代に培った知識やスキルは底がない。ラーメンの米国進出の歴史や日本酒醸造の知識、すしが秘めるビジネスとしての可能性—。ニューヨークにおける日本食ブームを間近で見てきたこともあり、アメリカ人への「刺さり方」は心得ている。

食文化は進化するもの

新たな文化を取り入れることにおいて、アジア人は敏感だ。現在、市内の日本食レストランは、非日本人のオーナーの比率が非常に高い。「世界無形文化財にも登録された日本食文化の普及と当地でのブームは、やはり日本人が生み出せれば。私は、日本にいる人々と当地の人々を引き合わせる役を担っています」と釣島さんは静かに情熱を燃やす。

釣島さんは食の進化を「否定」しない。日本ではありえない食材が入った巻きずしだって、この国では立派なすしだ。ただ、だしを取らずにみそだけ溶いたものを「みそ汁」と称し、満足して食べるのはもったいない。

「人間は発展していくものを求めますから、食の進化は誰にも止められないでしょうね。1人でも多くの人に、よりおいしくなる調理方法や食べ方を提案して、理解してもらい、彼らの認識を変えてあげること。その先端に日本人が居続ける為には、努力、創造力をもって取り組み続けることです」

次に来るかもしれない日本食を尋ねると、「そうですね…日本のカレー、そして麹(こうじ)文化。5年後、ニューヨーカーが『Where can I get koji?』と言ってるかも」と笑う。わが子の成長を楽しみにする親のように見えた。

 

 

 

釣島健太郎さん
「Canvas Creative Group」代表取締役社長

来米年: 2005年
出身地: 大阪府
好きなもの・こと: スポーツ全般(特にアメフト)、読書、歴史
特技: スポーツ、書道
慶應義塾大学総合政策学部卒業後、日本アイ・ビー・エム入社。
2004年に共同貿易グループの東京共同貿易に転職、05年に赴任で来米。
同社副社長兼支配人を経て、20年に「Canvas Creative Group」を設立。
canvas-cg.com

 

 

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