ウイスキーと&#
困難に立ち向かい、今を全力で生きる日本人ビジネスパーソン。名刺交換しただけでは見えてこない、彼らの「仕事の流儀」を取材します。
※これまでのビジネスインタビューのアーカイブは、nyjapion.comで読めます。
「まつ毛エクステのない顔は、私にとって、『さび』抜きのおすしみたいなものです」
そう屈託なく笑う佐竹香里さんは、初めてエクステを付けた約10年前の感動を、昨日のことのように覚えている。久々に帰国した日本で、ちょうどはやり始めていたエクステの存在を教えてもらったのがきっかけ。たった1部位の施術で、化粧なしの顔がパッと華やいだのは衝撃だった。
エクステの世界にのめり込んだ佐竹さんは、いくつもの専門学校で講習を受け、「どうせなら商売にしよう」と一念発起。2011年に、ウェストチェスター郡スカースデールで「サロン・ド・ラッシュ」と「NYアイラッシュ・エクステンション・スクール」を開いた。
「まつ毛エクステって中毒性があるんですよ。体験する側も、施術する側も」
必要なのは、ワクワクする心
まつ毛エクステの世界は少々特殊だ。ニューヨーク州発行の美容ライセンス取得が必須だが、そのライセンスの勉強内容には、まつ毛エクステは含まれていない。自分で勉強をして経験を積み、技術を磨くのみ。そこで、良いと思ったことを人と共有するのが好きだという佐竹さんは、自分でスクールを始めることにしたのだ。
スクールでは、自身が所属する日本まつ毛エクステ協会のノウハウを教える。衛生管理や細かな技術を、最大5週間かけてみっちりたたき込む。
「収入目的にサロンを始めるのは歓迎ですが、とりあえず1回でも自分でエクステを試して、その感動を知ってもらうことが入学条件。自分がワクワクする施術でないと!」
その代わり、一度「エクステ愛」に目覚めた生徒へのバックアップ体制は完璧。必要ならば夜中の電話質問でも大歓迎だという。
マルチタスクの先にある大切なもの
日系企業で働きながら、サロンとスクールを運営する日々を送っていた佐竹さん。しかし新型コロナのパンデミックでは、サロンとスクールが臨時休業に。そこでふと「走り続けた自分」に目を向け、考えるようになったという。
「自分は何をしているのかを考え直すと、無駄な時間がたくさん見つかり、時間は作れるのだと気付いたんです」
いつか始めたいと思いながら自宅でほこりをかぶっていた、パン調理のレシピ本を引っ張り出して、あんパン作りをスタート。これが好評ではまってしまい、気が付けば19歳の息子と共に生地をこねる日々。16歳の娘と愛犬を入れて、家族で過ごす時間も増えた。「走り続けてしまう」自分が、家族のあり方を見つめ直した2020年だったという。
サロンの顧客には、経済面で諦めたり、外出が減少したことで利用を中断した人も少なくない。これまで地元のセレブ主婦をターゲットにして来たが、異なる層のターゲット獲得に向けても動き出してみたいと、佐竹さんは話す。
「もう少し安い価格設定で、少なめの本数のプランを打ち出してみようかと。そういった動きを嫌う既存のお客さまもいるかもしれませんが、何か新しく始めてみるしかない」
さて、次はどんな人が、佐竹さんの「エクステ愛」を受け取るのだろうか。
佐竹香里さん
「The Salon de Lash」代表
来米年: 1996年
出身地: 千葉県松戸市
好きなもの・こと: 料理
特技: マルチタスク
結婚を機に来米。日系企業で働く傍ら、ニューヨーク州美容ライセンスを取得し、2011年にスカースデールで、まつ毛エクステ専門サロン「The Salond de Lash」とスクール「NY Eyelash Extension School」をスタート。予約はオンラインから。
thesalondelash.com