ハートに刺さるニュース解説

トランプ支持者の反乱 米国の価値問われる

「トランプが、暴徒をあおった」。1月7日のニューヨーク・タイムズの見出しだ。有力紙が、自国の首脳が暴動をあおったと書く異常な事態が起きた。

1月6日(米東部時間)、首都ワシントンでデモ行進をしていたトランプ大統領の支持者らが、連邦議会議事堂(キャピトル・ヒル)に次々に侵入した。開かれていた上下院合同本会議は即座に中断され、議員らは避難するか執務室に立てこもり、議事堂は閉鎖に追い込まれた。「前代未聞」の出来事だ。

「こんな事態は、イラク戦争に配備されたとき以来、見たことがない。ここは議事堂だ。世界の国が笑って見ているだろう」

避難した場所からPBSに出演した元海兵隊員のマイク・ギャラガー下院議員(共和党、ウィスコンシン州)は、緊張の面持ちだ。

「悲劇」がテレビ画面から次々に飛び込んでくる。トランプ支持者の女性一人が、警察官に胸を銃で撃たれて死亡。8日までに死亡者は警察官1人を含め、5人に上った。米議会政治の象徴であるキャピトル・ヒルが、「クーデター」を計画したのかと思われる武装した一般市民に占拠されたことは、米国中をショックに陥れた。

 

国会議事堂前に集まったトランプ支持者たち

 

数千人の支持者の
異常な盛り上がり

議事堂西側のバルコニーは、見た目で数千人のトランプ支持者と、トランプ陣営が選挙戦で支持者に売った青い旗、星条旗、そして黒人差別に反対した南部軍の赤字に青の旗が翻る。処刑台の模型が、議事堂敷地内に置かれ、そこに黒人リンチに使った丸い首つり縄が掛けられた。

バルコニーは、1月20日にジョー・バイデン前副大統領が大統領に就任する宣誓式のため、来賓やメディアの席が組み立てられていた。支持者らは、工事中のため張り巡らされていた壁を乗り越えて、バルコニーを占拠した。

歴代大統領が神と国民に宣誓した神聖な場所を埋め尽くす暴徒。「私たちの国の歴史で、今まで見たことがない光景だ。100%、トランプ氏のせいだ」とCNNアンカーのジェイク・タッパー氏が糾弾した。CNNホワイトハウス担当記者、ジム・アコスタ氏も訴える。

そのとき大統領は
ホワイトハウスにいた

「ホワイトハウスの記者会見場は、カメラも照明も記者も全てそろっている。この危機のときに大統領はどこにいるのだ!」

トランプ氏は実は、議事堂への行進が始まった際、ホワイトハウス内に設置したテント内で、家族と共に暴徒の行動がエスカレートするのをスクリーンで見ていた。ツイッターで拡散されたビデオによると、トランプ氏の家族や関係者が「いいぞ」などと叫んでいるのが聞こえる。

議事堂周辺の暴動があったとき、開かれた上下院合同本会議はそもそも、次期大統領が大統領選挙で獲得した選挙人の数の承認を式典的に行い、約2週間後に行われる大統領就任式へのお祭り的気分を盛り上げるためのものだった。

しかし、トランプ氏はバイデン氏の勝利が確定してからも、「選挙で不正が行われ、票が盗まれた」「1月6日にワシントンでビッグなデモをやる」と絶え間なくツイートした。

そして、議事を妨害するためにワシントンへの結集を支持者に繰り返し呼び掛けた。その結果が、議事堂襲撃事件に発展し、死亡者さえ出た。こうした経緯を見れば、トランプ氏のツイートや演説が、事件を引き起こしたというCNNのタッパー氏の見方は外れてはいないだろう。

大統領や抗議者たちの
処分はいかに

一線を超えて、平和的ではなく、火炎瓶や自動小銃まで用意していた暴徒に命令して喜ばせ、民主主義における大きな役割を果たす議会を攻撃させた罪は重い。

ナンシー・ペロシ下院議長は即座に、トランプ氏の解任を求め、大統領を罷免する弾劾手続きの再開もほのめかせた。民主主義の象徴たる議事堂をツイートと演説だけで暴徒に占拠させた罪は、何らかの形で裁かれなければならない。それをしなければ、米国の民主主義は危うい状況に追い込まれるだろう。

与野党幹部などのその歴史的認識は固い。あとはどのような形で、トランプ氏に対する「裁き」が行われるかということだ。

 

 

津山恵子
ジャーナリスト。
「アエラ」などに、ニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。
フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに単独インタビュー。
近書に「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

 

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