プロスポーツから見る経営学

コロナ禍を追い風に「サッカー×テクノロジー」デジタルアライアンス

新しい潮流に乗る
コロナ禍を追い風に

コロナ禍の影響で、スポーツ界にはあらゆるところで大きな影響が表出し、今までの常識が通用しなくなってきました。

一方で悲観的に物事を見るだけではいけないし、このおかげでスポーツビジネスも随分と良い方向に進んだ点もあります。その最たる例がデジタルの進出ではないでしょうか。「コロナはスポーツ界にデジタルの追い風を吹いた」とまでいわれるほどです。

自分のモバイルでチケットから飲食まで購入できるようになったりしたのは身近な例ですが、いろいろなスポーツチームが、自前の試合映像とは異なる、さまざまなデジタルコンテンツを制作したり、新しいデジタルの会社とコラボを開始したりしています。日本では「投げ銭(※)」などが、最近よく耳にした好例ではないでしょうか。

昔の方法が通用しないのであれば新しい方策を見出すのみであり、これはコロナ禍に限ったことではないはずです。

世界のサッカークラブ同士が助け合い、デジタル化を加速させていく試みが行われている

 

鹿島アントラーズが
最新のアライアンスへ

この潮流に乗って、世界では国境を越えた、デジタルを通してのコラボレーションも登場しました。最近注目を浴びているのは「スポーツ・イノベーション・アライアンス(SIA)」と呼ばれるものです。スペインのラ・リーガに所属するレアル・ソシエダを中心に、世界中から総勢22クラブが集まる、デジタルを介したアライアンスです。

このたび、鹿島アントラーズのニューヨーク拠点担当として、そして同クラブのグローバル・ストラテジー・オフィサーとして、同クラブが東アジアから初めてこのアライアンスに加盟するお手伝いをしました。

基本的に加盟は一つの国から1クラブとなっており、英プレミアリーグのウルヴァーハンプトン・ワンダラーズや、スコットランドのセルティックFC、メジャーリーグ・サッカーからはロサンゼルスFCなど、そうそうたるメンバーが参加しています。

同アライアンスは毎月数回、Zoom会議を開催し、その都度新しいテクノロジーを持つ会社が参加クラブに対してプレゼンを実施します。

興味深いものがあった時には、そこでグループ単位で商談をしたり、シンプルに参加クラブ同士でベストプラクティスを共有し合ったりしています。

元々サッカーというスポーツはグローバルなものであり、国境を越えてみんなをつなぐものです。テクノロジーのおかげでそれをより一層緊密化させたり、コロナ禍のせいで新しい価値観を創出しないといけない中で、「サッカー×テクノロジー」という面白いアライアンスができたものだと感じました。

今後ここでアントラーズがどう参画していけるものか、私もいろいろと試行錯誤をしています。

先駆けだからできる
とらわれないアイデア

このアライアンスの中核にいるレアル・ソシエダの人間も、チーフ・イノベーション・オフィサーという新設された役職で、サッカーというスポーツの概念にとらわれないアイデアを出して、この団体を立ち上げました。

そもそも鹿島アントラーズはJリーグの中でも、デジタルへの取り組みの先駆けであり、常に先進的なことに取り組んでいく鹿島アントラーズのスタイルは、海外から見ていても頼もしいものでしょう。

同時に、海外におけるこのような最新の動きに対して、もっとニューヨーク拠点としてこれからもアンテナを高く張り続けて行きたいと考えます。

もちろんコロナ禍は世界中に大きな打撃を与えました。そのような中でこれからどのように新しいものを取り入れていけるものか、ポジティブに役に立てるようにしていきたいと思います。

※ネット上の配信者に対して、視聴者が任意金額を送るシステムのこと。

 

<今週の用語解説>

レアル・ソシエダ

スペインのサン・セバスティアンを拠点とするサッカークラブで、ラ・リーガ・エスパニョーラ1部に所属。今年で創設111年。現在、勝数24を記録しており、リーグ首位に立っている。スペイン出身の若手選手が多く所属していることが特徴。2018年には、本拠地エスタディオ・アノエタを「スマートスタジアム」化する、ベンチャー企業との事業を発表。スタジアムは19年に改修され、現在の最大収容人数は4万人にまで増大した。

 

中村武彦

マサチューセッツ大学アマースト校スポーツマネジメント修士取得、2004年、MLS国際部入社。08年パンパシフィック選手権設立。09年FCバルセロナ国際部ディレクター就任。ISDE法科大学院国際スポーツ法修了。現東京大学社会戦略工学研究室共同研究員。FIFAマッチエージェント。リードオフ・スポーツ・マーケティングGMを経て、15年ブルー・ユナイテッド社創設。

 

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