【連載】ナースが見たコロナの月日・第2回「回復までの道のり」

月間集中連載・ナースが見た コロナの月日


 

多くの医療従事者は家族との距離を取るため、ホテルに滞在していました。これは感染拡大防止のためでもあります。

その中には、まだ小さいお子さんを持つ人もいらっしゃいました。同僚が、「仕事を終えて家に帰った時に、2歳になる子供が駆け寄って来るのだけど、すぐに抱きしめてあげることもできない。コロナウイルスが付着しているかも知れない身で、ハグすることで子供を危険にさらしたくない。ハグしてもらえなかった子供の悲しそうな顔を見ると、胸が苦しくなる」と心境を語ってくれました。

この新型コロナウイルスパンデミックは感染者のみならず、医療従事者にも多大なダメージを与えているのが分かります。

数字に現れる回復

今回の騒動で多くの人が亡くなりました。メディアではそのほとんどが高齢者に多いといわれていますが、実際私が受け持った患者さんには10代から40代の人もいました。若い年代でも、コロナ感染により半身不随になってしまった人や、命を落とされた人もいます。

通常、インフルエンザなどでICUに入院される人は、1、2週間ほどの治療期間を経て一般病棟に移送されますが、今回のコロナ感染者で重症化した人たちは1〜2カ月以上をICUで過ごされていました。しかし、6月下旬にはコロナ感染者数は著しく減少し、多くの患者さんは一般病棟に移送され、退院もされました。

現在はICUでも1〜2人程度で、院内にもようやく明るいきざしが見えてきたようです。ニューヨーク市民の皆さまが、3月からの自宅待機、外出時のマスク装着などの徹底した予防対策に協力してくださったおかげで、ニューヨークが回復に向かったと言っても過言ではありません。

また、コロナウイルスに対する不十分な情報の中、命をかけて働いていた医療従事者の仲間には感謝の意を表します。

街中でマスクを装着する光景は、ニューヨークの新たな日常となった

 

引き続き「守る」ことが
今は何よりも重要

新型コロナウイルスの第2波を予防するためにも、回復した今、私たち医療従事者が伝えたい事は、「自分の身は自分で守り、それは他者をも守ることができるという事を忘れてはいけない」という事実です。

徐々にビジネスが再開してきていますが、一部では気の緩みからかマスクを装着せず外出し、レストラン外で密接に食事をされている人も見かけます。

長期自宅待機からの解放は、ニューヨーク市民にとって精神的な安らぎやストレスの軽減につながっていることと思います。しかし、国民一人一人の命を守るため、また亡くなった人々のためにも、引き続きコロナ感染予防を実施して行くことが必要となります。

近い将来、コロナウイルスが完全に消息し、世の中の人々がまた笑顔で生活が出来ることを祈って(次週に続く)。

 

 

〈おことわり〉

このコラムは、筆者の体験を元に構成・執筆しており、勤務病院の見解を示すものではありません。

 

 

柿沼香折さん

ニューヨーク州認定看護師。14年間で、州内の複数の病院で医療に従事。
今年3月1日からは、マンハッタンのNew York-Presbyterian/Weill Cornell Medical Centerにて勤務している。
その傍ら、個人カウンセラーとしても活動中。

 

               

バックナンバー

Vol. 1304

車で行けて、今からでも予約可能! NY近郊で夏の小旅行!!

学校も長ーい休みに突入、大人も夏の一時帰国や旅行に浮き足立つ今日この頃。一方、日々に忙殺され、予約に出遅れた! すでに航空券高すぎ! なんて方もきっといるはず…。そんな方に、今からでも予約可能で家計にも優しいNY近郊の夏休みスポットをご紹介します。

Vol. 1303

ニューヨークの今を映し出す 多彩なインフルエンサーたち

世界中から人と情報が集まるニューヨーク。多彩なインフルエンサーたちが日々、ファッション、美容、グルメ、ライフスタイル、カルチャーなど、ありとあらゆるジャンルの情報をSNSを通して届けている。その発信からは都市の空気やリズムがにじみ出る。NYの今を映し出すレンズとしての彼/彼女らに注目してみたい。

Vol. 1302

私たち、こんなことやってます!気になるビジネスを深掘りする連載企画。今回は、海外邦人歯科クリニックのロバート・ウェバー

さんと、医学博士・鍼灸師であり、神経科学者でもある周震宇さんに話を伺った。

Vol. 1301

高級化の勢いが止まらない ウィリアムズバーグ地区

かつて製造業が盛んだった名残が見えるインダストリアルなウエアハウスとトレンディーなホテルやショップなどが混在するウィリアムズバーグ地区。そんな同地区がここ何年かで急激にジェントリフィケーション化が進み、完全に「富裕層が住む街」と化している。今号ではそんな同地区で話題の高級ショップ&最新レストランを紹介。