プロスポーツから見る経営学

第49回 コロナ禍のスポーツビジネス

コロナ禍で気付き
新たな視点と価値

世界中のプロスポーツリーグが再開し始めたというニュースが、日々舞い込んでくるようになりました。メジャー・リーグ・サッカー(MLS)では、選手の間で感染が新たに発見され延期になってしまったり、逆にナショナル・ウィメンズ・サッカーリーグ(NWSL)は、コロラドにて1カ所集中開催のトーナメント方式で試合の開催を再び始めるなど、手探り状態が続いています。

四つの収入源

スポーツビジネスにおいて主な四つの収入源は、「チケット収入」「スポンサー収入」「放映権収入」そして「スタジアム収入」ですが、コロナウイルスの影響で四つのうち、「チケット収入」と「スタジアム収入」の二つを失うことになりました。

一方で、スポーツを欲しているファンは多く、NWSLの先月27日に行われた、ノースカロライナ対ポートランドの試合では、中継の観戦者数が57万人に達するという、リーグ新記録を樹立。これは、NWSLのそれまでの記録であった19万人をはるかに上回るもので、英プレミアリーグの試合視聴者数記録である、チェルシー対マンチェスターシティーの51万人をも超える数字でした。スペインのラ・リーガでも海外における視聴者数が48%も増加し、「密」になれない中でも、スポーツを求める皆の気持ちはより強くなっていることが分かります。

 

FIFA eClub World Cupに日本代表として出場した「Blue United eFC」

これからの手法
消費傾向の変化

今後は、スポーツの消費傾向が変化します。このコラムの主題でもある、「スポーツビジネス」というものは、スポーツの魅力を消費者に届けるための「手法」でしかなく、今回のコロナのように、社会に変化があるたびに変化していくものです。逆に言い換えると、今までのやり方はすぐに古くなり、常に柔軟に対応する力、そして新しい発想を生み出す力が求められます。

では、これはどういうことかというと、「いつの時代も変化しないスポーツの魅力は何なのか?」を、突き詰めて理解をすることが大切になってくるのではないかと考えています。

その答えを得るべく、再び私も学校に入学をしたのですが、「eスポーツもその研究対象の一つになると見ています。

eスポーツとリアルスポーツの共通点は?

スポーツは、そもそも鍛えるためにするものではなく、楽しむために始めるものだと思います。「もっと速く走りたい」とか、「負けたくない」という中で、鍛えられ、それが結果へとつながります。逆に、途中で鍛えられなくてやめてしまう場合もあり、ハードルは低くはありません。

その中で、eスポーツはそのハードルが低いのではないか。コロナのような外的要因によって楽しむ人たちも増えてきました。このeスポーツとリアルスポーツの間の共通点は何か。スポーツの「消費者」とは、試合を楽しみながら観る人なのか、実際にお金を投資してプレーを楽しむ人なのか。この研究は、面白いと思います。

弊社のプロeスポーツチームも創設してまだ2年程度の駆け出しですが、選手、スタッフの頑張りで、アジアを代表して「FIFA eClub World Cupに出場するまでになりました。今後どのようにこの業界が伸びていくのか、非常に興味があります。

あの有名な「マディソン・スクエア・ガーデン・カンパニー」でさえ、NABのニューヨーク・ニックス、NHLのニューヨーク・レンジャーズに次ぐ三つ目のプロチームとして、eスポーツの「カウンター・ロジック・ゲーミング(GLC)」を買収したのです。

今までは私もコラムで「スポーツビジネスとは何か」を書かせていただいてきましたが、今回のコロナの影響で、スポーツビジネスは手法でしかないことに気付きました。手法をとめどなく追い続けるよりも、「スポーツの普遍的な価値」「客が何にお金を払っているのか」という視点を、きちんと持っていきたいと考えています。

 

 

<今週の用語解説>

MSG

ニューヨーク市に拠点を置くマディソン・スクエア・ガーデン・カンパニー(Madison Square Garden Company)は、2010年から実業家として知られる、ジェームス・L・ドラン氏によって設立された会社。15年からは、二つに事業部を分けて運営している。スポーツ事業全般を担う「MSGスポーツ」は、NBANHLなど、年間400以上のスポーツ興行を行う。一方、エンターテイメント事業を担う「MSGエンターテインメント」は、米国内に四つの劇場を所有し、コンサートライブやミュージカルなどの公演を行っている。

 

 

中村武彦

マサチューセッツ大学アマースト校スポーツマネジメント修士取得、2004年、MLS国際部入社。
08年アジア市場総責任者就任、パンパシフィック選手権設立。
09年FCバルセロナ国際部ディレクター就任。
ISDE法科大学院国際スポーツ法修了。FIFAマッチエージェント。
リードオフ・スポーツ・マーケティングGMを経て、15年ブルー・ユナイテッド社創設。

 

関連記事

NYジャピオン 最新号

Vol. 1125

出張者にも! 一時帰国者にも!  NYのお土産・手土産は何がおすすめ?

コロナ禍でも一時帰国をする在米日本人は多く、また10月1日からワクチン接種証明書による日本帰国後の隔離期間が短縮されたこともあり、出張者も徐々に戻って来る見込みだ。そんな帰国の際、知っておくと便利なニューヨークならではのお土産、手土産についてチェックしよう!

Vol. 1124

ロシア人街でフクースナ(おいし〜い)!

ブルックリン区最南端のブライトンビーチは、ロシアと黒海沿岸地域からの移民が多く暮らすエリア。地下鉄高架下や周辺には、郷土史色豊かな食べ物を売る店やレストランが軒を並べている。

Vol. 1123

ニューノーマルのバーバー事情

いよいよ経済の復興期に突入したニューヨーク。対面ビジネスも次々に再開され、男性の身だしなみが気になり始めた。新しいノーマルに向けて活況を呈する理容の世界をのぞいてみよう。

Vol. 1122

コロナに負けず NYファッションシーンが再開!

まだまだデジタルでの新作発表を行うブランドが多いものの、パンデミック以降、初めてゲストを招いてのニューヨーク・ファッション・ウィークが再開した。今回のショーの動向、ニューヨークのファッションシーンを盛り上げるべく奮闘する、日本人デザイナーやモデルにもフォーカスする。