今年9月にアラ&
「子どもが20歳になった時、どうなっていてもらいたいですか?」
教育相談に来た両親に質問すると「自分の好きなこと、やりたいことを見つけてもらいたい」「自分の夢に向かって突き進んでいる人になってもらいたい」「自分で考え、行動できる人になってもらいたい」など、我が子に「自分らしい生き方」をしてもらいたいと願っていることがよく分かります。
「では、ご相談内容は何でしょうか?」
そう私が尋ねると「中学受験を考えているのですがどうしたらいいでしょうか?」「まだ子どもは小学生なのですが、将来◯◯大学に合格させるために、今、何をさせたらいいですか?」など「受験」に関する相談がほとんどなのです。
受験をゴールにしてはいけない
どの親も子どもには「やりたいことを見つけて、自分らしい人生を歩んでほしい」という願望を持っています。でも現実に目を向けると、「良い大学に入って、良い企業に就職して、安定した人生を歩んでほしい」という気持ちが見え隠れするのです。
学力と生きる力、IQとEQ、ハードスキルとソフトスキル、呼び方はさまざまですが、知育面の教育(知識、技能の習得)と精神面(性格、やる気の育成)の教育をバランス良く育てることが現代社会では求められます。学歴は人生の保険のようなものですから、親であれば子どもに与えておきたいと願うのは当然です。しかし「答えのない時代」を生きる子どもにとって学力以上に必要となるスキルが、「やる気」「チャレンジ精神」「粘り強さ」というメンタルタフネスです。
受験の先に必要なスキルとは
机にかじりついて受験勉強をしているだけでは、子どもが自分らしい人生を突き進むための原動力である「チャレンジ精神」や「やり抜く力」が十分に育ちません。その結果「自分のやりたいこと」の答えを見つけられず、周りに合わせてなんとなく生きる人になってしまうのです。
子どもが自分の特性を知り、本気でやりたいことを見つけるにはスポーツや音楽に真剣に取り組んだり、アートに触れたり、多様な人と関わり合ったり、異文化に親しんだり、失敗したり、成功したり、うまくいったり、うまくいかなかったり、泣いたり、笑ったり、試行錯誤を繰り返す経験が必要です。
ゴールはアイデンティティーを確立させること
机から離れ学校の外で多くの人と関わることで、世の中には多様な価値観(生き方)があることを子どもは理解できます。スポーツや音楽などで競争を経験することで自分の「強み」を知ることができます。負けや失敗から立ち上がる経験を積むことで、メンタルタフネスが身に付くのです。
終身雇用や年功序列という日本的経営が消滅しつつある現在、「良い大学に入り、良い企業に就職すれば人生安泰」という「答え」は通用しない可能性が大きいのです。21世紀の子育てのゴールは受験ではありません。子どもが自分のやりたいことを見つけて、突き進んでいく原動力となる「生きる力」を育てることです。
船津徹 (ふなつ・とおる)
TLC for Kids代表 教育コンサルタント
1990年明治大学経営学部卒業。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。
しちだ式教材制作に従事。2001年ハワイ州ホノルルにてグローバル教育を行う学習塾TLC for Kidsを開設。
2015年にTLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校開設。2017年上海校開設。
アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上のバイリンガルの子どもの教育に携わる。
イエール大学、ペンシルバニア大学など米国のトップ大学への合格者を多数輩出。
著書に「すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。」(ダイヤモンド社)、「世界で活躍する子の〈英語力〉の育て方」(大和書房)。