グローバル時代の子育て

その73 子育てのゴールは何か?

「子どもが20歳になった時、どうなっていてもらいたいですか?」

教育相談に来た両親に質問すると「自分の好きなこと、やりたいことを見つけてもらいたい」「自分の夢に向かって突き進んでいる人になってもらいたい」「自分で考え、行動できる人になってもらいたい」など、我が子に「自分らしい生き方」をしてもらいたいと願っていることがよく分かります。

「では、ご相談内容は何でしょうか?」

そう私が尋ねると「中学受験を考えているのですがどうしたらいいでしょうか?」「まだ子どもは小学生なのですが、将来◯◯大学に合格させるために、今、何をさせたらいいですか?」など「受験」に関する相談がほとんどなのです。

受験をゴールにしてはいけない

どの親も子どもには「やりたいことを見つけて、自分らしい人生を歩んでほしい」という願望を持っています。でも現実に目を向けると、「良い大学に入って、良い企業に就職して、安定した人生を歩んでほしい」という気持ちが見え隠れするのです。

学力と生きる力、IQとEQ、ハードスキルとソフトスキル、呼び方はさまざまですが、知育面の教育(知識、技能の習得)と精神面(性格、やる気の育成)の教育をバランス良く育てることが現代社会では求められます。学歴は人生の保険のようなものですから、親であれば子どもに与えておきたいと願うのは当然です。しかし「答えのない時代」を生きる子どもにとって学力以上に必要となるスキルが、「やる気」「チャレンジ精神」「粘り強さ」というメンタルタフネスです。

 

 

受験の先に必要なスキルとは

机にかじりついて受験勉強をしているだけでは、子どもが自分らしい人生を突き進むための原動力である「チャレンジ精神」や「やり抜く力」が十分に育ちません。その結果「自分のやりたいこと」の答えを見つけられず、周りに合わせてなんとなく生きる人になってしまうのです。

子どもが自分の特性を知り、本気でやりたいことを見つけるにはスポーツや音楽に真剣に取り組んだり、アートに触れたり、多様な人と関わり合ったり、異文化に親しんだり、失敗したり、成功したり、うまくいったり、うまくいかなかったり、泣いたり、笑ったり、試行錯誤を繰り返す経験が必要です。

ゴールはアイデンティティーを確立させること

机から離れ学校の外で多くの人と関わることで、世の中には多様な価値観(生き方)があることを子どもは理解できます。スポーツや音楽などで競争を経験することで自分の「強み」を知ることができます。負けや失敗から立ち上がる経験を積むことで、メンタルタフネスが身に付くのです。

終身雇用や年功序列という日本的経営が消滅しつつある現在、「良い大学に入り、良い企業に就職すれば人生安泰」という「答え」は通用しない可能性が大きいのです。21世紀の子育てのゴールは受験ではありません。子どもが自分のやりたいことを見つけて、突き進んでいく原動力となる「生きる力」を育てることです。

 

 

船津徹 (ふなつ・とおる)

TLC for Kids代表 教育コンサルタント

1990年明治大学経営学部卒業。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。
しちだ式教材制作に従事。2001年ハワイ州ホノルルにてグローバル教育を行う学習塾
TLC for Kidsを開設。
2015年に
TLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校開設。2017年上海校開設。
アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上のバイリンガルの子どもの教育に携わる。
イエール大学、ペンシルバニア大学など米国のトップ大学への合格者を多数輩出。
著書に「すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。」(ダイヤモンド社)、「世界で活躍する子の〈英語力〉の育て方」(大和書房)。

 

 

NYジャピオン 最新号

Vol. 1273

トランプ大統領による新政権 第2章が遂に動き出す

米大統領選挙は今月5日投開票され、米東部時間6日午前5時30分過ぎに共和党候補のドナルド・トランプ前大統領(78)の勝利が確実となった。一方、民主党候補だったカマラ・ハリス副大統領は6日午後、首都ワシントンで演説し敗北を認めた。支持者らに向け、理想のために戦うことを「決してあきらめない」よう訴え、「この選挙結果は私たちが望んだものではない」としながらも、平和的な政権移譲が必要だと強調した。1期目とは全く異なると言われるトランプ政権2期目の行方はいかに。

Vol. 1272

リトルポルトガル味めぐり

ニュージャージー州ニューアークはポルトガルからの移民とその子孫が多く暮らしていることで有名だ。今週は日本人の舌にも合うポルトガルの味を探訪、併せてリトルポルトガルの成り立ちにも迫る。

Vol. 1271

冬に飲みたくなる、贈りたくなる ウイスキー魅力再発見

ウイスキーといえば、近年ジャパニーズウイスキーが世界で注目を集め、希少価値も上がっているようだ。ウイスキーには、シングルモルトや、ブレンデッド、グレーンなど種類によって味が異なり、銘柄ごとの個性を楽しめるのも魅力だ。そこで今回は、ニューヨークでウイスキーの魅力を再発見してみよう。