今年9月にアラ&
〝共感〟をキーワードに独自のマーケティング理論を展開するブランディングコンサルタント・阪本啓一の「マーケティング力アップ講座」。
もう10年くらい、「購買動機は企業サイドがつくるのではなく、顧客一人一人の小さなインタレスト(興味関心)が生み出す。つまり、人は購買するとき『自分』を買っている。だから、その小さなマイクロインタレストにフォーカスしよう」という、「フォーカス・マーケティング」を提唱しています。
SNSが当たり前になった新しい価値観では、ますますこの傾向が強まると思っています。つまり、「自分が一番大事」であり、「みんなと同じもの、すでに出来上がったものを与えられるのでは満足しない」のです。
「想像力と自分でつくる楽しみ」を売る
たとえばイベントの場合、テーマパークのプロが完璧に仕上げたものも、もちろん楽しいのだけど、自分たちであれこれ企画し、ミスはあるものの、「そのミスすらも楽しいよね」というBBQタイプのものが支持されています。
津田工務店社長の津田直樹さんが仕掛けた「TCCO CRAFT FACTORY(トコ・クラフト・ファクトリー=大阪市東淀川区大道南。以下TCCO)」は、まさにこの新しい購買動機にフォーカスしています。
工務店が建築現場で使う材料は、どうしても残ってしまいます。床材、タイル、ペンキなどの塗料…。これらの余材は、プロとしては使えない、中途半端なサイズ、数量となる。しかし、DIYで個人が楽しむには十分です。津田社長はここに目をつけました。
余材を処分するにも、費用がかかります。月にかかる50万円は誰も喜ばない費用です。ならば、個人のDIYで楽しんでもらえばいい。サスティナブルなビジネスモデルが生まれた瞬間です。レゴが長く人気なのも、「想像力と自分でつくる楽しみ」を売っているから。
TCCOも同様に、売っているのは「想像力と自分でつくる楽しみ」。月額1480円の会員になれば、利用料・レンタル料の割引に始まり、材料・塗料が無料(一部有料)になったり、カット注文ができたり、材料の取り寄せできたりと、特典があります。
プロが使う工具を存分に使えるし、アドバイスももらえる。使い方のレッスン? もちろん! 「津田工務店ちゃんねる」(youtube.com/channel/UCUzHxUer-xLFonoJyEjxPig)を、チェックしてみてください。
余白をつくる
津田工務店の事例から学びたいことは、「余白をつくる」点です。完璧な完成品ではなく、最後の仕上げは「自分で手掛ける」ということ。たとえば、ラーメンのトッピングを自分でやるだけでも楽しい。
私のロック本は箱入りなのですが、オリジナルステッカーを用意して、自分で好きなように貼り付けてつくる余白を残しました。世界に一つだけの自分の本が生まれるわけです。
また、「国民的」「全米」というのもが成立しない社会です。顧客のインタレストがマイクロ化し、「こんなもの誰が買うの?」が売れます。ディアゴスティーニのウェブサイトを見ると分かります。あの成功は、マイクロインタレストに焦点を当てたからです。ビジネスチャンスは、無限に広がっています!
まずは、自分の中にあるインタレストを見つめてみましょう。ヒントになるはずです。「イエス」、自分が欲しいものを、商売にしてみましょう。
今週の教訓
自分が欲しいものを売ってみよう
阪本啓一
ブランディングコンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。
2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。
06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役社長。
地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。
「ブランド・ジーン〜繁盛をもたらす遺伝子」(日経BP社)などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
読めばわかるこの一冊
失敗図鑑
すごい人ほどダメだった!
大野正人
偉人たちの「アチャー!」な失敗を紹介し、それを子どもたちが日常(学校や家庭、ともだち関係)で使えるような教訓として昇華する、画期的な試み。
▽ライト兄弟(成功にしがみつく失敗)
▽二宮尊徳(逃げ出す)
▽ココ・シャネル(「イケてない」といわれる)
▽ダリ(天才ゆえに死にかける)
▽ベーブ・ルース(グレる)
▽夏目漱石(引きこもる)
▽フロイト(人の意見が聞けない)
▽与謝野晶子(正直すぎて炎上)
もう、面白いのなんの。尊敬する手塚治虫は「悪口を言う」って(笑)、何やってまんねん巨匠と思わずツッコミました。
子どもたち向けに書かれていますが、大人にもじんわり染みる名作です。