共感マーケティング

第237回 シンプルな経営指標を

〝共感〟をキーワードに独自のマーケティング理論を展開するブランディングコンサルタント・阪本啓一の「マーケティング力アップ講座」。


経営は、早い話「現金を増やすゲーム」です。モトになるお金を投資して、リターンがどれだけ増えるか。経営がうまくいっているかダメかを、数字で示してくれるのが経営指標です。

私の会社のそれは、「現金残高」です。月末と月初を比較して増えたか、減ったか、シンプルです。小学生でも分かります。あなたのお店、会社でも、シンプルな指標を決めましょう。

指標のないまま経営するのは地図なしに歩くようなもので、エネルギーと時間を無駄にしています。年度目標も「現金残高を2倍にする」という、間違えようのないシンプルなもの。マルかバツか、年度末には瞬間で分かります。

指標を持とう

飲食店を例に取ります。家賃、減価償却費、正社員の給料、水道光熱費などは、寝てても毎月かかります。水道光熱費は会計的には変動費とされますが、店舗規模と営業時間でほぼ決まります。ガス代さえ多少は変動するものの、営業時間中はフライヤーやガス式オーブンの電源をつけっぱなしにしているので、比例というより固定です。

営業利益は売上|経費(変動費+固定費)ですが、この中の変動費は原材料費だけといってよく、他はすべて固定費です。人件費も固定費として考えます。「サトーくん、お客様少ないから5時間店にいてくれたけど、3時間にまけて」という話にはならない。つまり、営業利益額は、店を作った時点でほぼ決まっているのです。

ストアマネジメントで最も重要なことは、営業利益額を目標数値化し、それを守ること。しかし、利益は計算後に出てくるもので分かりづらい。売上は見えるが、利益は見えない。だからこそ、日々誰でもチェックできる指標にしたいのです。

可視化する

売上はP(客単価)×Q(客数)。目で見えるものは、来店しているお客様の数です。「水面=損益分岐点売上高」を超える来客数なのかどうか、毎日チェックします。ネットショッピングのコンサルティングで利益を上げるために私がアドバイスしたのは、「在庫の指標を目で見えるようにする」こと。その店の利益を圧迫しているのは、過剰在庫でした。

そこで、床に赤いテープで四角く区切りを描き、壁にも床から垂直に線を引きました。この範囲内に商品在庫を置いて、幅と高さを超えるようなら要対策です。来客数も、適正在庫も、可視(見える)化が鍵です。可視化したら毎日記録し、みんなの目に入る場所に貼ります。朝礼ではそれを元に、「今日何を重点的にするか」を共有するのです。精神論ではなく、事実を元にした行動指針になります。

実は、これは経営脳を鍛える研修になります。経営脳とは経営者マインド。各自「今日何をしなければならないか」を、まず自分で考える。そして全員でシェアする。行動が経営、経営は行動です。そして、結果どうなったか。行動は「来客を増やす」「お客様の満足を高める」「客単価を上げる」など、具体的な目標にひも付けるようにします。「来客数」は、損益分岐点の来客数を元に決めます。

例えば、「笑顔の接客」が出たとします。却下です。当たり前なので。「これまでやってないこと」にトライする。毎日この繰り返しをすることで、みんなの「経営脳」が鍛えられます。

今週の教訓

シンプルが一番

阪本啓一
ブランディングコンサルタント。
大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。
2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。
06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役社長。
地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。
「ブランド・ジーン〜繁盛をもたらす遺伝子」(日経BP社)などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp



読めばわかるこの一冊

その仕事、利益に
結びついてますか?
金児昭

「一円の利益にこだわるべし」(本文より引用)

 

著者は信越化学工業で38年間、経理・財務部門で実務一筋にやってこられました。その経験から、「現場で使える会計心得」についてやさしい語り口で講義してくれます。半年に一回は読み返し、経営の礎となる心得について見直すきっかけとして使っています。

▼すべてを数字に換算してみる

▼常に効果を数字で把握する

▼一円でも多くの利益を、と考える

▼現金だけで収益(売上)と費用を考える

▼コストとは外からお金をもらうための『犠牲』である

▼人をコストとして考えてはならない

▼販売がいちばん大事

▼がんばるだけではもうからない・・・

私の経営指標のモトになっています。

 

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