プロスポーツから見る経営学

第45回 二つのクラブ誕生

東京に二つのクラブ
ブランド力で立ち上げ

東京(TOKYO)というブランド力は、世界的に見て非常に大きいと聞いたことがあります。その東京で、今年はオリンピックも開催されますし、さらに世界的な認知度がより向上すると思っています。

そのような中、「東京」を本拠地とする、Jリーグを目指すサッカークラブで、話題性を呼ぶクラブが今年に入って二つも発表され、非常に注目しています。

一つ目は、堀江貴文氏が発表した「Tokyo2020FC」です。そしてもう一つが、最近ブラジルの「ボタフォゴ」に移籍を発表した、元日本代表の本田圭佑選手が立ち上げた「One Tokyo」です。どちらも、東京都リーグの下位リーグから勝ち上がり、昇格を繰り返して、Jリーグ入りを果たさないといけないので時間はかかります。

ただし、ここで私が非常に面白いと感じているのが、両クラブ共にスポーツのメインの売り物である「強さ」や「スター選手」はまだいないものの、すでに多くのムーブメントを起こし、話題を喚起してサッカーファンを引きつけている点です。

ブラジルに移籍した本田選手は、「One Tokyo」をツイッターで突然報告し、世間を驚かせた

スター選手の不在
ビジネス戦略は?

このコラムで今までにも解説させていただいておりますが、スポーツビジネスにおいて、確約できない「勝利」や「スター選手」の他に、確約できるものも考案して売らないといけない。

今回の2チームは、このことを体現しているところが非常に面白いなと思います。今までのスポーツ界にはなかった発想がどんどん出てきて、何よりもスピード感が抜群に速いと感じています。

また、冒頭でも書きました通り、「東京」にクラブを保有することの効果です。東京にはすでに、Jリーグで活躍する、「FC東京」「東京ヴェルディ1969」「FC町田ゼルビア」と、3クラブがひしめき合っています。

そこに加えて、すでに昔から戦っている、J3の「東京武蔵野シティフットボールクラブ」や、さらに別リーグには、「東京ユナイテッドFC」、そしい「TOKYO CITY F.C.」など、非常に多くのクラブが存在します。これはもちろん、東京という大都市の規模だからこそ、可能なことです。

同時に海外目線で言うと、「東京」というブランドが強く、それに加え、プロサッカークラブのオーナーをしているということで出会える人も増えますし、オーナーが他のビジネスも展開しているのであれば、そちらでメリットを享受することができる可能性も高まります。

PR力が鍵
新しい日本流とは?

プロスポーツクラブのオーナーとしてのメリットに関しては、またの機会に詳しくお話しさせていただければと思いますが、今回注目しております堀江氏、そして本田選手のクラブは、オーナーの存在感ですでに多くの人が知るサッカークラブとなりつつあります。

まだクラブにはスター選手もいない、試合もしてもいないというのに、他の話題性のあるセレブの人々を、そしてオンラインサイトを開設して一般の人も巻き込んだりと、PR力が抜群に上手です。立ち上がったばかりにもかかわらず、ブランド力が出来ていることは、今までになかなかなかったことだなと感じています。

プロスポーツ、そしてスポーツビジネスにおいては、「勝たないと!」という気持ちが優先されるのは分かるのですが、それが実現できないフェーズや確約できないこともある中で、「今後、ビジネスをどう展開していくのだろうか?」と気になるところです。

海外でもあまり見たことも聞いたこともない、日本流の新しいスポーツビジネスが見え始めているのではないかと感じており、この先の展開を楽しみにしています。

 

 

<今週の用語解説>

日本サッカーリーグ

1965年に誕生した日本サッカーリーグに代わり、93年に日本初のプロサッカーリーグ(以下、Jリーグ)が発足した。99年からは、ディビジョン1とディビジョ2の2部制に移行。2014年にはJリーグを3部制にしたことで、J3リーグが発足し、現在のリーグ構成が形成された。制度上、J3はアマチュア最高峰の「日本フットボールリーグ(JFL)」と同格と位置付けられ、J1、J2と違いリーグエンブレムや参加要件など、さまざまな点で差別化を図っている。

19年のシーズン開始時では、国内に本拠地を置く、55クラブがリーグに参入している。

 

中村武彦

マサチューセッツ大学アマースト校スポーツマネジメント修士取得、2004年、MLS国際部入社。
08年アジア市場総責任者就任、パンパシフィック選手権設立。
09年FCバルセロナ国際部ディレクター就任。
ISDE法科大学院国際スポーツ法修了。FIFAマッチエージェント。
リードオフ・スポーツ・マーケティングGMを経て、15年ブルー・ユナイテッド社創設。

 

 

 

関連記事

NYジャピオン 最新号

Vol. 1158

今が旬のフルーツ狩りに行こう!

ニューヨークでもさまざまなフルーツが旬を迎えている今日この頃。自然に囲まれながら、甘くておいしいフルーツを思う存分堪能できる楽しいフルーツ狩りに、家族や友人と出掛けてみては?

Vol. 1157

魅力満載のグリーンポイントを解剖!

川を挟んでクイーンズのロングアイランドシティーと面するブルックリン最北端のグリーンポイントは、昔ながらの街並みと店を残しながらもトレンディーな店もあり、イーストリバー沿いは開発も進む注目のエリアだ。さらに進化する最近のグリーンポイントを歩いてみよう。

Vol. 1156

フェリーに乗って行く週末のプチお出掛け 〜スタテン島編〜

マンハッタン区南端からフェリーに乗ってわずか25分。通勤圏内にもかかわらず、住民以外で訪れる人が少ないスタテン島。しかし意外にも見どころはたくさんある。今号は「近くて遠い」スタテン島の魅力に迫る。

Vol. 1155

知って得する! NYの物件事情

ポストコロナの今、ニューヨークで生活をしていると、インフレの影響もあって物価の高騰を実感せざる得ないだろう。もちろん不動産の価格も上がり続けている。物件探しのコツをつかんで、いい住まいを早めに押さえよう!