今週からプロ&#
人、モノ、金、情報の国境を越えた移動が加速しています。
これまで国際化とは無縁と思っていた日本人の多くが、押し寄せるグローバル化の波を身近に感じていることでしょう。
グローバル化は、世界中の人が国際競争に巻き込まれることを意味します。衣食住・娯楽・教育・医療、日常生活のあらゆる場面で国際的な競争原理が働く、そんな社会が目前に迫っています。
社会が転換期を迎えている今、日本で求められているのが、異文化の人たちと対等な信頼関係を築くことができる「グローバル人材」。海外で奮闘するバイリンガルキッズは、日本と世界を結ぶ架け橋として、将来あらゆる分野で活躍する可能性を秘めています。
国際人=英語力
ではない!
「うちの子はバイリンガルだから国際人」と思っていませんか? 確かに英語が話せれば活躍の場は広がります。しかし、英語ができる=国際人というわけではありません。アメリカ人はみんな英語を話しますが、誰もが国際感覚を持っているわけではありません。
国際社会で活躍できる人にとって、最も重要な資質は、異なる文化や価値観を理解し、受け入れる適応力です。島国日本で育った私たちは、無意識のうちに「違い」を拒否する傾向があります。日本にいる時は外国人との間に一線を引き、外国にいる時は現地の人たちとの交流を避けてしまう。子どもの価値観形成に最も影響があるのは両親です。まずは両親が日本文化の殻に閉じこもらず、多様な人たちと交流してみてください。子ども時代に異文化との接触を多く経験するほど、多様性への理解が深まり、「人間や文化に上下優劣はない」という偏りのない価値観を身に付けることができます。
日本文化に誇りを持たせる
多様性に触れさせると同時に、家庭では日本語教育にも力を入れてください。日本語を子どもに継承するプロセスは、日本人としてのアイデンティティを伝えることでもあります。読み書きはもちろん、日本の昔話、わらべ歌、言葉遊びなどを通して日本文化を教えてあげましょう。
海外で子育てをしていると、子どものしつけや礼儀作法を、日本流にすべきか欧米流にすべきか迷うことがあると思います。両親は自信を持って日本流を通してください。海外で育つ子どもにとって、親から継承される言葉と文化は、「アイデンティティ」の土台となる大切なものです。
国際人としてのアイデンティティ
子どもの国際性を育てる上で英語は大切ですが、それ以上に調和のとれた人間形成に目を向けてください。文化や価値観が異なる人たちとの間で、お互いの違いを理解し、尊敬し、受け入れ、信頼関係を築いていける、そんな多文化感覚と世界的な視野を持ち合わせた人材が、国際社会で尊敬を集めます。
まずは、両親が勇気を持って異文化の人と交流しましょう。言葉や文化背景が違っても、人間に大きな差などないことにすぐ気付くことができます。
船津徹 (ふなつ・とおる)
TLC for Kids代表 教育コンサルタント
1990年明治大学経営学部卒業。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。
しちだ式教材制作に従事。2001年ハワイ州ホノルルにてグローバル教育を行う学習塾TLC for Kidsを開設。
2015年にTLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校開設。2017年上海校開設。
アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上のバイリンガルの子どもの教育に携わる。
イエール大学、ペンシルバニア大学など米国のトップ大学への合格者を多数輩出。
著書に「すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。」(ダイヤモンド社)、「世界で活躍する子の〈英語力〉の育て方」(大和書房)。